94.第二階層
「そんな馬鹿みたいな装備で喜ぶのはあんたくらいなもんだろ。ドレスアーマー? 魔窟に遊びでも行くつもりか? そりゃ後ろの騎士達も止めるわけだよ。むしろそいつらに同情するね。護るべき対象の頭がこんなにお粗末なんだからな」
俺の物言いが信じられないのか、魚のようにぱくぱくと口を動かすお嬢様。後ろの騎士達も硬直しており、俺を止めようと動くものは誰もいない。
途中であっと思ったが、もう口が滑ったのものは仕方がない。
なのでこの際全部言ってしまおう。馬鹿馬鹿しい、付き合いきれんわ。
「中は狭い上に薄暗い洞窟だぞ。それなのになんだその装備は。真っ赤っ赤のキンキラキン。まるで狙って下さいとでも言ってるみたいだ。それにその不自然に広がったスカート。何だそりゃあ?」
「パニエですわ、貴方様」
「そう、そのパニエか? 狭い洞窟の中を進むって言うのに、どっかに引っ掛けたらどうする。撤退中だったら? それが怪物との戦闘中だったら? お荷物間違いなしだ! と言うか、それ以前に場所とって邪魔だろうが! 隊列も組めやしねぇ!」
軍にいた頃、こういう目立ちたがり屋で馬鹿みたいな奴が、一握りだが確かにいたのを思い出す。
そういう奴に限って妙に自信家で、自分が痛い目を見ないと改めない性格だったりして、始末に置けないことが多かったように思う。
しかし軍とは個ではなく群だ。一人が馬鹿をやればその被害は他にも波及する。
一人で死んでいれば馬鹿な奴だで済むが、そう言うわけにもいかないのが頭痛のタネだった。
このお嬢様もその馬鹿と同じだ。いくら指摘しても尽きない馬鹿さ加減に昔を思い出し、俺もだんだん腹が立ってきた。
「鎧もなんだ! 胸くらいしか保護して無いだろうが! アーマーなんて言うならもっと全身を保護するようにしろ! 急所丸出しの鎧があるか! 保護する部分を増やせ! 死にてぇのか!?」
俺の激しい突っ込みにお嬢様は真っ赤になりぷるぷる震えているが、そんなことは知ったこっちゃあない。
「あとその槍! 長すぎるんだよ! 魔窟の中で扱えるのか!? せめて短槍にしろ短槍に! それになんだそのアクセサリーは! イヤリングにネックレスだぁ? そんなもん外せ外せ! 遊びに来てるんじゃねぇんだぞ! 紛失でもしたらどうする!? 皆で探すのか? 魔窟の中這いつくばってか? 馬鹿馬鹿しい! 誰がするかそんなもん!」
「で、でもこれは貴族たるもの当然の身だしなみで――」
「身だしなみなんて気にするなら止めちまえ! 何しに来てるんだここに! ええ!? このポンポコピーが!」
「ポ、ポンポコピーですって!?」
「そうだ! このポンポコピーのポンポコナの長久命の長助が!」
「ちょうすけぇぇぇっ!?」
罵倒の羅列にお嬢様が悲鳴のような声を上げた。それで我に帰ったのか、騎士の一人もこちらへ駆け寄ってくる。
「き、貴様! お嬢様に向かって――!」
「お前達もだこのスカタン騎士共が!」
「ぐはっ!?」
近寄ってくるなり俺に噛み付いてくる。だがお前も同罪だこのすっとこどっこいが。
俺はその騎士が腕に抱えていた兜をバッと奪い取り、後ろ前に思いきりかぶせてやった。
「護衛対象にこんな馬鹿みたいな装備させておいて護衛もクソもあるか! 犬の散歩じゃねぇんだぞ! こんなもん装備した時点で突っ込みやがれこのボケナスが! お前らが指摘しなくて誰がするんだよ! このお嬢様を死なせたいのかテメーは!」
「なっ! ぐっ! くあっ!」
バシバシと兜越しに往復ビンタを食らわせつつ説教をかまし続ける。
「真面目に仕事しやがれこの給料泥棒が! 真昼間っから寝惚けてんじゃねぇ! 尻にネギ突っ込むぞコラッ!」
仕上げとばかりにもう一つ切り叩くと、騎士はドサリと尻餅をついた。
「悪いが遊びで魔窟に行こうなんて言う奴の護衛なんぞ御免だね」
呆然と立ち尽くす彼らの横を素通りし、魔窟へと足を進める。俺の後に続いて皆も付いて来るが、その間に誰も口を開くことは無かった。
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「なぁ、あれ本当に良かったのか……?」
「まだ言ってるのかそれ」
「いや普通言うだろ! 相手は貴族様だぞ? 伯爵様だぞ? 目ぇつけられたら後で何されるか分からんし……!」
サイラスはまだ魔窟に入る前のことを蒸し返していた。
魔窟に入り、歩き続けて一時間ほど。俺達が今いるのは、少し開け、まるで部屋のようになっている場所だった。
その部屋の奥にはぽっかりと空洞が空いている。覗き込んでみると下へと続く階段がずっと続いていた。どうやらこれが第二階層へと続く道らしい。
なぜこんな場所に階段が、と訝しむも、スティアに言わせればどこもこんなものらしい。サイラス達も当然のように思っているようで、逆に困惑の目を向けられてしまった。
そうなると分が悪いのはこちらだ。腑に落ちないながら頷くより他なかった。
他に聞けば、魔窟では、階層を移動する階段の前には、必ずこうした広い空間があるらしい。
視界も開け比較的安全な場所。なので都合も良いと、休憩場所として利用されるそうだ。
確かに周囲には、火を焚いたような後や何かのゴミのようなものが部屋の隅に転がっている。なのでそれに倣い、今は皆で休憩をしているところであった。
「気にしすぎー。大丈夫でしょ?」
「アンソニーの言う通りだろ。もしそうだとしても、お前達のことはただの顔見知りで、あの場所でたまたま一緒になっただけだって言うから心配すんな」
「それもよぉ、なんか悪い気がするし……」
サイラスの若さを感じるその言葉に、つい頬が緩む。
「サ、サイラス。カーテニアさんの言う通りにしておいたほうが良いよ。僕達、何かあっても力になんてなれっこないし……」
対するウォード君は意外とドライであった。いや、まあこれは現実的と言ったほうが良いかもしれない。
サイラスも頭では分かっているのだろう。だが心情的には受け入れがたいのか、ばつが悪そうに視線を逸らした。
卑怯や臆病だとか言う奴もいるかも知れないが、危険をいち早く察知して逃げようと言う考え方は、俺は全く嫌いじゃない。
山賊をやっていた頃は、その判断が生死を分けることもあった。生きるうえで大切な意識だと俺は思う。
まあただそれは、正念場で立ち向かうことが出来ればこそでもある。常に逃げてばかりいる奴は、いざという時に誰の信頼も得られないのだから。
そう考えたときにウォード君の場合、立ち向かうべきときに立ち向かえるのか? と思わんでもない。だがそこは俺達には関係のない事だ。深く考えるべきことではないな。
「俺はむしろ、なんで伯爵様があんな馬鹿みたいな鎧をわざわざ娘に作ったのかが気になるね」
俺がそう言うと、スティアが可笑しそうにくすくすと笑った。
「ですわね。まさか魔窟で茶会を開こうなどと思ったわけでも無いでしょうし」
「案外その通りだったりしてな。貴族の道楽はどう突き進むか分からん」
戦時中、一人の貴族令息が、王城から何度も飛び降りるという出来事があった。
どうも空を自在に飛ぶ鳥人族の姿を見て、感銘を受けたらしい。色々工夫をして空を飛ぼうと試行錯誤していたが、そのわきでどっかの侯爵が、戦時に何をしているのかと頭を抱えていたのが印象に残っている。
最終的に飛べるようになったのかどうかは知らんが、まあその情熱は大したものだった。
そんな話を談笑している俺達のわきで、サイラスとウォード君はまだ落ち着かない様子を見せている。そんなに気にすることはないと思うがなぁ。
仮に今回のことが伯爵に知られたところで、目くじらを立てるようなことはないだろう。何より彼の娘の命を救ったようなものなのだから、逆に感謝して欲しいくらいだ。
娘を罵倒されたことで激高したらどうするか? それならもうスタコラサッサよ。
「さて、もう休憩も十分だろ。そろそろ行くか?」
「そうですわね」
「うん! 行こう行こう!」
俺が声をかけると皆も頷く。ただ、サイラスとウォード君ははっとこちらを見た後、明らかに表情を固くした。
「い、いよいよだね……」
「……おう。頼むぜウォード」
「う、うん」
なぜだかずいぶん肩に力が入っている二人。大丈夫かとは思いつつ、しかし先に進まない選択肢はない。
俺達は大人二人がやっと肩を並べて歩くことが出来る程度の、狭い階段をゆっくりと降りて行った。
「本当におっさん達が他のオークを相手してくれるんだよな?」
「大丈夫だ、任せておけ」
「し、信じるからな!」
話だとサイラスとウォード君は、一体ずつでしかオークウォリアーと戦えないそうだ。
なのでそれ以外は俺達が受け持つと、事前の話し合いで決まっていた。
「びびりすぎー」
「う、うるせぇなっ!」
ホシがニシシと笑うと、サイラスも負けじと文句を返す。しかしその口調には緊張が強く滲んでいる。ウォード君に至っては、杖を固く握るのみで反応すらない。
彼らの様子を横目で見ていたスティアは、大丈夫かとでも言うように少し肩をすくめていた。
だがまあこれは仕方のない事だ。オークウォリアーはランクC。ランクだけ見れば彼らよりも格上だ。
それに情報によれば、第二階層からオークの生息数がかなり多くなるそうだ。このオーク魔窟の推奨ランク、E程度では、まず生きて帰れないらしい。
思い返せば、俺達がこの魔窟に入ろうとしたときにサイラスが慌てたのは、そう言った冒険者が多いという事情があったからかもしれない。
「そんな調子で大丈夫か? 二階層へは行ったことがあるんだろ?」
「……ねぇよ」
階段を下りながら問いかけると、意外な返事が返ってきた。
彼らはオークウォリアーと戦ったことがあるように言っていたと思ったが、気のせいだったか?
俺が足を止めてしまったせいで、皆も一様に足を止めた。
「俺達が戦ったのははぐれだよ」
サイラスはぽつりと呟く。
「はぐれ?」
「他の階層から移動してきた怪物のことですわね」
オウム返しをした俺にスティアが説明してくれる。つまり、二階層から一階層にオークウォリアーが上がってきたと言うことか?
俺の表情で察したのか、スティアはふるふると首を振った。
「確認されるのは稀ですわ。そんなに頻繁に見られるようでしたら、階層ごとに生息する怪物に特色が無くなってしまいます」
「あー、そりゃそうか」
確かに冒険者ギルドの資料では、何階層では何が出る、と明言に近い形で記録が残っていたな。
なるほどと頷く俺に、ウォード君が珍しく口を挟んだ。
「第二階層に行ってみようって話をして、階段の近くまで行ってみたことがあるんです。でもその時に、さっきまでいた部屋に偶然オークウォリアーが一匹いて……。剣士タイプだったんですけど、凄く強くて……。何とか倒せたんですけど、やっぱり二階層は駄目かなって、それで……」
オークウォリアーには三通りのタイプがいる。剣を使う剣士タイプ、弓を使う射手タイプ、戦斧を使う戦士タイプ。
その剣士タイプを何とか倒せたと、たどたどしく説明するウォード君。それを聞いてサイラスもバツが悪そうな顔をした。
第二階層に行けなかったことを気にしているのだろうが、まあ本当に倒せたのであれば連れて行っても問題ないだろう。
「ま、それなら大丈夫だろ」
ウォード君にそう答えると、俺はまた階段を下りて行く。階段はずっと続いており、まだまだ先は見えそうになかった。
しばらく階段を下りてから、後ろから足音がしないことを不思議に思い振り返る。すると立ち止まっていたサイラスとウォード君がびくりと反応した。
なぜ付いてこないのか。不思議に思い見ていると、二人は顔を見合わせてから、慌てて階段を下りて来るのだった。
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はてさてやってきました第二階層。第一階層とは違い、人が五人並べるくらいには広い空間がずっと目の前に広がっている。天井は四メートルくらいの高さがあり、かなりの開放感がある階層のようだ。
ただ見た目の雰囲気は一階層同様に、むき出しの岩肌が不穏な空気を醸し出している。流石に開放感があるからと言ってリラックスできるような雰囲気ではなかった。
道の所々に迫り出す岩は、身を隠すのにはうってつけだ。怪物からの不意の襲撃も想定される、油断できそうにない階層であることが一目で分かる。
「ふーん」
目の前で、ホシが物珍しそうにきょろきょろと周囲を見渡している。そのすぐ傍にはバドもおり、警戒するように彼女の近くにさりげなく移動していた。
一方スティアは早速仕事を始めたようだ。俯き加減で軽く目を閉じ集中していたが、間もなくその双眸を開きつつ、上げた顔をこちらに向けた。
「近くに三匹程いるようですわね」
「何? 早いな……。フリッター、アンソニー。警戒を頼む」
俺が言うが早いか、ホシは背からメイスを、バドはその腰から剣をすらりと抜き放つ。
後ろに控えるサイラスとウォード君からも緊張した気配を感じられる。俺も確かめるように弓を握る左手に少し力を込めると、背負う屋筒から一本矢を取り出し静かにつがえた。
一番前をバドに任せ、次にホシ、少し離れて俺と並び、残りの三人はその後ろでほぼ一塊となり警戒しながら前へ進む。
周囲を伺いながらゆっくり進むこと一分程。岩の陰からのっそりと、大柄な影が姿を現した。
「ウガァァァッ!」
「オークはっけーんっ!」
ホシが嬉しそうな声でビシッと指を差す。確かにその姿は第一階層で良く目にした、ただのオークだった。
だが、肩透かしかと思ったのも束の間のこと。
『グアァァァァッ!!』
オークの雄叫びに呼応する様に、遠くから魔窟をビリビリと震わせる咆哮が轟く。
目を向ければオークの後方から、こちらへ猛然と走る二つの影が見えた。
「オ、オークウォリアーが、二体!?」
「ひ、ひぁっ……」
その迫力に気圧されてか、サイラスが上ずった声を出す。ウォード君も小さく悲鳴のような声を漏らしていた。
彼らの様子をちらりと伺い、俺はすぐに前を向く。まず一体任せてみようかと思っていたが、これでは彼らに任せるのは無理そうだ。
「ここは俺達で迎え撃つ! アンソニーとフリッターは一体ずつウォリアーを頼む!」
「オークは!?」
「あー……適当!」
「あいあい! ――それっ!」
ホシは襲い掛かるオークを雑に殴り飛ばして仕留めると、その場で構えて後続のウォリアーを迎え撃つ。
バドもホシの左横へと並び、盾を高く掲げたかと思うと、まるで挑発するようにウォリアーに剣を向けた。
『グアァァァァッ!!』
こちらが臨戦態勢を取ったのを察したのか。二匹のオークウォリアーはまた一つ咆哮を上げると、更にスピードを上げて向かってくる。まるで迫る筋肉の壁だ。
「剣士タイプと戦士タイプか」
俺はぽつりと呟く。向かって左は剣士、右が戦士だ。
手には剣と手斧をそれぞれ持ち、ボロボロすぎてはっきり分からないが、革だか金属だかの鎧を着ているのが見える。
その体も、下あごから生え伸びる牙もオークより一回りは大きく、二体は凄まじい威圧感を放っていた。ただのオークのようにはいかなそうだ。
見る見るうちにこちらとの距離を詰めたオーク達。奴らはその足を止めることも無く強く地を蹴ると、勢いそのままにバドとホシへと襲い掛かった。
「グアァァッ!!」
剣士は力任せに剣を振り下ろす。バドの盾とかち合うと、耳が痛くなるほどの金属音が鳴り響く。
勢いを殺され足の止まったウォリアーに、バドはすぐさま反撃の剣を振るう。だがオークも素早く反応し、腕に浅い傷をつけただけに止まる。
「グガァッ!」
さらにオークが反撃に出ようと腕を振り上げた、その瞬間。バドはその懐に素早く飛び込み、盾でオークの体を跳ね飛ばし。
そして後ずさったオークへと、逆に飛びかかって行った。
激しい金属音が打ち鳴らされる中、ホシはと言えば意外にも、冷静な立ち回りを見せていた。
ホシは戦士がブン回す斧を素早いステップで避けながら、その距離を徐々に詰めていく。
そして自分の間合いに入った瞬間、膝にメイスを思い切り叩きつけた。
「そりゃっ!」
「ブガァッ!?」
メシャリと嫌な音が鳴り、足がおかしな方向へ曲がる。
グラリと姿勢を崩すオーク。それを見逃さず、ホシはさらに頭へと追撃を加えた。
「おりゃーっ!」
「ブゴ……ッ」
オークの兜は砕け散り、骨か金属か、メキメキと嫌な音を鳴らす。黒霧が勢いよく頭部から噴き出し、仕留めたかと頭を過ぎる。
だが――
「ブゴォォォッ!」
頭を砕かれながらも叫び声を上げるオーク。奴は最後の力を振り絞り、戦斧をホシの頭へと振り下ろしたのだ。
「危ねぇッ!!」
サイラスの声が魔窟に轟く。凄まじい勢いで振り下ろされたその戦斧は、寸分違わずホシの頭へと吸い込まれていく。
――だが、既にそこにホシはいなかった。
「てやあーっ!」
オークの懐にもぐり込んでいたホシは、たんっと地面を蹴る。そして体を横倒しにするとグルリと回転し、その遠心力を活かしてオークのあごを真下からメイスでかち上げた。
ぶわりとオークウォリアーの巨体が宙を舞い、一拍おいてズンと地へと落ちる。その後ピクリと動くことも無く、オークは霧へ変わり消えていった。
二体の片割れはあっと言う間に倒してしまった。ではもう一体はと言えば、そちらは未だバドと激しくぶつかり合っている最中だった。
ただ様子を見る限り、バドはどうもオークウォリアーと言う怪物の実力を測っているらしく、オークが体のあちこちから黒い霧を噴出させている一方で、バドは涼しい顔でその剣を受け流し続けていた。
何合か打ち合った後、バドは再び盾でオークを弾き飛ばす。オークは後方へと押し戻されると忌々しそうに口を歪めた。
だが、その次のことだ。オークの体から青白い靄のようなものがふわりと立ち上り始める。その淡い靄は剣にまとわり、仄かな光を放つ。
オークは先ほどとは違い、今度は嬉しそうににやりと口を歪めた。
「や、やばい! フリッターさん、そいつを受けちゃ駄目だッ!」
オークは力強く地を蹴ると、その淡く光る剣を振り上げる。それを見たバドは再び盾を構え、攻撃に備えるが――
「そいつは”練精剣”だッ! 盾ごとやられるぞッ!」
サイラスの声がまたも魔窟に轟く。
刹那、金属と金属が打ち合う甲高い音が一帯に鳴り響いた。