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23.ミッション④ー試作品ー

夏休みが終わってもまだまだ暑い日が続く。

夏は半袖となる制服だが、このじりじりとした暑さの前には涼しさを感じることが出来ない。

風が吹いたとて日陰でもない限り暑いものだから中庭に出ている生徒なんて少ないものだ。


だからこそ、秘密の話にはもってこいな環境となる。

久しぶりに顔を合わせたラリアンとトルティーナとで休み中の近況を報告し合った。

誰とどこに行った、あそこのパフェが美味しかった、あの店の雑貨がどれも可愛かったなど、たわいもない話。それはどこにでもある光景だ。


ただ一つ違うこと、それは――

「で、例の件は上手く進んでるの?」

「うん。2人とも紹介してくれてありがとね。今は店を建ててもらっているの。それが終わったら庭をやってもらう予定。」


貴族籍から抜ける準備をしている事。2人の手助けもありなんとかここまでこれていると思っている。

長い夏を抜けたら残りはあと約半年。バイトもして売れそうなものを小分けしにして売って得たお金は全て銀行に預けているが、思ったより溜まっていた。建物など、ローンを組むといえど軍資金がそれなりに溜まったのはありがたい。

店が出来たら調理器具や食器などそろえなければならないものはたくさんある。


「オープンしたら行くつもりだけどその前に呼んで欲しいわ。どんな風なのかゆっくり見たいからね。宣伝は私たちに任せておいて。貴族たちは真新しいものに興味を持つだろうからきっと行くと思うわ。」

「責任重大ね。これで美味しくないものを提供しちゃったらお店が潰れちゃう。リピーターになってくれる人が増えるようにがんばるよ。」


乗り気になっているトルティーナに笑みがこぼれる。プレッシャーを感じるが嫌な感じはしない。むしろ自分を鼓舞するような、といえばいいのだろうか。


頬を伝う汗を拭こうと制服のポケットに入れてあるハンカチを取ろうと手を突っ込んだところで遠くから予鈴の音が聞こえた。もう戻らないと。それぞれが立ち上がりスカートについた草をはたき落とす。

「じゃあ、また放課後ね!」

「「また後でね~。」」


風にはためくスカートをひるがえし、手を振って一時の別れを告げ、それぞれの教室へ向かった。








週末、レックとアン、エイミの4人で会う約束をしていた。このメンバーで会うのはいつだってエイミの家兼宿だ。4人で会うのは久しぶりである。


この日は試作品を持って来てくれる手筈となっていた。


この国の中心地付近のケーキ屋は見た目も綺麗で華やかなものが多い。国の中心に近いほど土地代は高く、また、購入者がほとんど裕福な家庭であるため、ケーキ1個あたりの値段も高く設定されている。

だが、建設中のマッケナは街道が整うといえど田舎町だ。いくつかそういったものがあってもいいだろうが、田舎には田舎にあった値段設定が求められる。それに毎日ケーキは買わないだろう。

そこで、子供がお小遣いでも買えるような、庶民の財布に優しいメニューを話し合っていた。要は、何をこの店の売りとして出すか、だ。


色んなものに代用できるものが良い。

そうして考えたのがカスタードクリームだ。ありきたりではあるが、卵によってはコクが変わってくる。

飽きの来ない、優しい味というのをこの店で提供したいと思っているのだ。


「カスタード作ってきましたよ。値段のことを考えるとあまり卵を選べなかったのでこれだけなんですけど。」


テーブルに並べられた3つの器に入ったカスタードクリームを見る。色の薄いものから濃いものまで順に説明される。

「この一番色の薄いのがレバロの卵で庶民がよく使用している安い卵です。こっちの若干濃いのがピッコロ、こっちはクストダムなんですけどニーチェという所の物です。――値段的にはニーチェが限界だと思われます。同じ値段にしたらレバロの方が利益は上がりますけど・・・まあ味見してみてください。」


レックの説明を聞いて、一口ずつスプーンですくって食べてみる。

「レバロはけっこう淡白な感じだね。ピッコロとニーチェはそこまで差はなさそうだけど、ニーチェの方が色が少し濃い分美味しそうに見えるよね。」

「卵1個当たりの単価もそこまで差はないのでどちらでもいいと思います。ただ、災害とか今後国内外の情勢の変動を考えると、一か所だけに絞るのは危険な気もしますが・・・」

「じゃあ、今度は卵半々で作ってみてもらえますか?あとは・・・シュークリームに入れるならもう少し固めの方が良いと思うんですけど、どうでしょう?」


スプーンですくったときに柔らかすぎることもないが、これだと食べにくい気がする。


「ああ、それね、最後の生クリームの量を調整すればいけるから大丈夫だよ。今回は食べやすいように緩くしてみたの。ね?」

エイミが代表して答えたそれに2人がこくりと頷く。


そしてカスタードクリームを作った際に余った卵白で作ったというお菓子も出してきた。

「マカロンもいいんだけど、どの店も高いじゃん?まあ、手間がかかるからなんだけど。この店だけ安くすることもできないし、もう少し簡単で安くできるラングドシャを作ってみたの。」

「小袋に何枚か入れて販売すれば持ち帰りもしやすいですし、この丸くて端の方だけ少し茶色くなっているのだって可愛いですよね。」

たしかに、小さな袋に可愛らしいリボンでラッピングすればちょっとしたプレゼントにもできそうだ。

サクサクとクッキーみたいな食感で美味しい。クリームやチョコレートを挟んだり、部分的に掛けるだけでも変わってくるだろう。


「これならちょっとしたおやつって感じでいいですね。口当たりも軽いし。でも卵白結構余るんじゃない?全部をラングドシャにしてもさばききれないでしょう。メレンゲのクッキーとかありませんでしたっけ?」

「ああ~あれね。あるにはあるんだけど結構甘いから好きな人は買っていくだろうけどあまり食べたいって言っている人見ないなあ。うちの店で出しているのは結構残ってるよ。 あとは・・・フィナンシェとかかな。シフォンケーキも卵白を多少多めに使ったりするけど入れすぎは良くないしね。」


お菓子を作るとなるとどうしても卵白より卵黄を使う頻度が増してしまうが、なるべく素材を無駄にしたくない。この問題はきっと店を始めた後もずっと付きまとうだろうけどちょっとずつ打開策を練るしかなさそうだ。


庭に果樹も植えるからそれも最大限に活用していこうと思う。


カスタードクリームはもう一度作ってもらうとして、他のメニューも考えるが、あまり手を伸ばしすぎると自分たちの首を絞めてしまいそうだからよくよく話し合った。


体感時間はそんなに経っていなかったのに、現実はかなり時が進んでいたというのを窓から見える空の色で察した。

毎回そうだが、みんなと別れを告げるのは寂しい。例えそれがまた次に会う約束をしていようとも。


それでもその気持ちを振り切り、各々(おのおの)帰路についたのだった――。

雑誌やテレビなんかで見てると都会は美味しそうなものがいっぱいでいいなーと思うけど、結構高いし、行くにしてもどこに行っても駐車料金が取られるから辛いなーって。田舎者からすると買い物に来て駐車料金とられるのとか納得いかない。

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