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21.ミッション④ー初めまして、よろしくー

「初めまして。レックです。」

「アンです。」

私は今、エイミの自宅で彼女に紹介された2人と初対面をしている――。



一緒に働ける人を探していた私たちは、エイミが声をかけて頷いてくれたという2人を連れて来ていた。

アンはエイミの友人でレックはアンのお兄さんの友人だという。2人ともそれぞれがエイミとは違うケーキ屋で仕事をしているらしい。ずっと今のところで働いていても良かったが、せっかくなら自分たちが考えたメニューをお客さんに提供し、喜んでもらいたいとこの話にのってくれた。

「他の人も行ってみたいけど行けそうにない、って残念がってた。家庭を持っているとそう簡単に決められないしね。職場も今より遠いとなるとよけいに。」

「いいよ、ありがとう。助かった。――初めまして、マリです。お2人が来てくださって嬉しいです。店も庭もまだ出来ていないんですが、来年から始めたいと思っています。よろしくお願いします。」

「話は大体伺っています。こちらこそよろしくお願いします。」

「すごく楽しみです。すぐに今の仕事を辞めることはできませんが、空いた時間はお手伝いしたいと思っています。いつでも声をかけてください。」


礼儀正しい2人だ。力仕事だからかレックは二の腕が特に筋肉質だった。優しそうな、穏やかな顔をしており、パッと見イケメンだと思った。

アンは小柄で明るく、人懐っこさが伺える。人見知りもなく、声をかけやすいタイプだろう。

見た感じ、人当たりは良さそうだし、この人たちとなら気兼ねなく一緒に働ける気がする。勘だけど。


エイミとアンは幼馴染でもあり、レックとはアンの家に遊びに行ったときにたまに会っていたそうだ。お祭りがあるとアンの兄と共にレックも一緒に行っていたというからそれなりに仲は良いらしい。


2人とも実家から毎日店まで通うのは大変だから近くのアパートを借りるとのこと。

店の裏手のちょうど建設中だったあのアパートが入居者募集しているからそこに入るか、他にも募集している所があるからそこに入るかまだ考えているようだ。


一応店は2階建てにして、2階の部分はエイミと共同生活を送ろうと話していた。店にかかるお金にアパート代まで出せないと思ったから。

だが、他の人も、となると手狭になるし、そもそも部屋数が足りないため、2人がアパートを借りようと思っているならそうさせてもらおう。


「店の内装や外装は工務店と調整中なの。あとは庭なんだけど、それは友人の知り合いに頼んでいて今度会う予定になっているわ。私は平日は学校があるし、みんなは仕事をしてなかなか時間がとれないと思うけど来年の開店に向けてメニューなども考えていきましょう。といってもメニューはみんなの方が熟知していると思うけどね。」

「じゃあ、試作品とか作ってみないとですね。」

「仕入れ業者も探していきましょう。ところで店や庭はどんな感じにするおつもりですか?」


アンとレックがそれぞれ質問をしてくる。レックの方が年上なのだが、貴族だというのが分かっているのか敬語を崩さない。


「レックさん、私の方が年下ですし、これから共にするのですからもっと砕けていただいていいですよ。そんな敬語を使われなくても・・・。」

「そうですか。ですが私は元々こんな感じですので、お気になさらないでください。身近な人にもどうにもこういう喋りをしてしまうようで・・・。無意識というか癖になっているというか。まあ、そんな感じです。」

照れたように頬をカリカリと人差し指で掻くレックさんは優しい微笑みで、同僚というよりか優しい近所のお兄さんという感じに見える。思わず自分の口が緩んだところで、そういえば彼に店と庭について質問されていたんだったと思い出した。


「えっと、店の方は――」


と話し出した私の声にみんなが耳を傾けてくれていた。所々エイミが補足を混ぜる。

それを聞いた上で彼らからのアドバイスも貰う。

「畑にイチゴを植えるといっても春先だけの活用となってしまいますね。」

「クストダムのカーライズ地方ならスイカとかも植えられるんですけど、ここじゃ土が合わないですしね。まあ、イチゴ以上に手間暇かかるのと、この国じゃまだ食べなれてないのでたとえ作れたとしても買ってくれる人があまりいないかなあ。でも確かに春以外は使い道がないのはもったいないですよねー。」

「あ、じゃあさ、花壇にしてイチゴを植えていない時期は花を植えればいいんじゃない?そしたら店内にも飾れるし、マリがいうガーデンパーティーも周り木ばかりじゃ味気ないじゃん。花があれば華やぐんじゃない?」

「そうなると植えるものも考えないとね。あまり大きい花も小さすぎる花もだめね。」

「そう、ユリとかね。あれ花粉付きやすいんだよね。服についたら汚れ落ちにくいし。」


そうやって4人で話に花を咲かせる。初めましてでここまで話せるなら滑り出しは順調だと言えよう。






そして時は過ぎ、トルティーナから紹介してもらった造園所、カサンドラ造園に行った。ちなみにカサンドラはその造園所がある所の地名だ。エルダー工務店のように創始者の名前を付ける所もあるが、ここはそうじゃないようだ。

それなりに広い造園所で、奥からのこぎりを使っている音が聞こえる。人の話し声にカン、と金属のような高い音も聞こえて来て賑やかな所だった。


「すみません。ベストラン家の紹介できました、マリアーナ・オルトランと言います。」

「ん?あ、ああ。ちょっとお待ちくださいね。社長を呼んできますので。」

近くにいた土の付いた作業着に軍手をはめた従業員と思しき人に声をかけると、初めは戸惑っていたが、話は通っていたようですぐに担当の人を呼びに行ってくれた。



程なくして小走りできた男性。髪には白いものが混じっているが、服から出ている部分の肌は真っ黒に日焼けしていて健康そうだ。

「お待たせしました。カサンドラ造園の社長をしておりますヤイックと申します。」

「こちらこそお忙しい中すみません。お世話になりますマリアーナです。」

「エイミです。」

挨拶をしながらお互い会釈をする。


ここで話はなんだと事務所内の接客スペースに案内された。

事務員と思われる女性がお茶を持って来てくれた。

「粗茶ですが。」

「いいえ、ありがとうございます。」

テーブルにお茶を置きにこりと微笑まれる。そしてすぐに退席していった。


そして早速、どんな風な庭を作って欲しいか説明する。

少し緊張していたのもあって喋り終わる頃には喉が渇いていた。目の前に置かれたコップを手に取り、少し飲み込む。ぬるくなったお茶だが喉を通りやっと一息付けた気がした。


しばらく考えるようにしていた社長が口を開く。

「ちなみに果樹を植えたとして収穫は何年後を考えていますか?」

「店を始める来年からと考えていますが・・・何年後とは?」

聞かれた意味が分からなくて聞き返す。


「どの木もそうですが、大体挿し木で育てているので1年目から花を咲かせ実を付かせることはできるのですが、細い木でそれをさせてしまうと栄養が足りないために十分に育たずその後花や実が付かなくなるのです。なので数年は成長を優先させ蕾を取ってしまった方がいいんです。」

「そうなんですか・・・。ちなみに売られているのは何年ですか?」

「ほとんどが2年生苗ですね。」

それだと間に合わない。店を出してすぐは無理でも遅くてもその次の年には収穫できるようにしたい。


「それなら4年生以上の大苗を準備しないといけませんね。知り合いの苗専門店に声をかけておきます。では次に花壇ですが――。」


その後も話は続き、帰る前に花壇に使うレンガを選んだり芝の種類を選んだりしてあっという間に時間が過ぎ去った。



「はあ~疲れた~。」

「けっこう時間かかったね。もう帰らないと?」

「んー?私はまだ大丈夫だよ。でもそっちが早く帰らないとでしょ?まあ、私も帰ってメニューでも考えようかな。2人も何か考えとくって言ってたし。」

「そっか。ありがとね。」

「いーのいーの。店の出資はほとんどマリが持ってくれているんだから、私もがんばらないとね。じゃあ、また今度!バイバイ!」

「またね~。」


造園所を出てしばらく一緒に歩いていたが途中で手を振り別れた。


さーて、私は今からバイトに行きますか!

ミッション④が思った以上に長くなっていて終わりが見えません・・・まだまだお付き合いください。

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