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20.ミッション④ー工務店と打ち合わせー

のどかな、春らしい風から暑さを帯びた風に変わりつつある今日この頃。

あの後すぐにトルティーナとラリアンが実家へ手紙を書いて送ってくれた。


返事は思ったより早かった。

先に返事が来たラリアンが送られてきた手紙を見せながら了承を得られたと言ってくれた。


「従姉妹の旦那さんの実家だと思ってたけど従姉妹の旦那さんのお姉さんの嫁ぎ先だったよ。」

「遠っ。と言うかそれ、もう他人だよね?」

「まあまあ、引き受けてくれたんだしいいじゃん何でも。見積もりをしたいみたいでどんな風にしたいのか聞きたいって。あとは現場を見たいらしいよ。」

「分かった。エイミにも伝えておくよ。ありがとね。」


授業が終わり、寮に帰った後私服に着替えていた私たちは、私の部屋で今届いたという報告を聞いたあと一緒に喜んでくれた。


次の週にはトルティーナから、今は忙しいが1ヵ月ほど後ならば時間がとれると返事があったと報告があった。


そしてシュナイザーにバイトがばれたことで日々冷や冷やしていた私だが、実家から何も言って来られないところを見るに内緒にしてくれているようだ。学校もバイトを禁止にしていないが、それでも貴族が平民街で働くのをよく思っていない人が大半なため、彼が誰かに話せばあっという間に広がるものの、そういった噂を聞かないため内緒にしてくれているんだろう。

周囲の人間が普段と変わりないから、最近はようやく怯えなくなってきた。



「明日はエイミと会う日でしょ?今日は早く休まないとだめだよー。」

「分かってるよ。もう。子供じゃないんだから。」

金曜日、それぞれが家に戻る前にラリアンに引き留められた。何かすごく楽しみなことがある前の日は興奮してなかなか寝付けないのを知っていての発言だ。その横でトルティーナがクスクスと笑っている。

「そういうけどマリ。私の家に泊まりに来ている間も眠るまでに時間かかっているじゃない。」

「・・・知ってたの?」

「ふふっ。あれだけ寝返りを打っていればね。」

トルティーナの家に泊まりに行くと、客間を準備してくれているが、ほとんど3人一緒の部屋で寝ている。広いベッドといえど3人も川の字に並ぶと狭いからちょっと動くだけで起きてしまっていたようだ。そんなことを知らずになんと恥ずかしい。


そのあとすぐに来た子爵家の馬車に乗り込み、手を振って別れた。




早朝に家を出た私はエイミと現地に集合した。この後、ラリアンの遠い遠い親戚(ほぼ他人)の工務店の人が来る予定だ。

しばらくここに来ていなかっただけで前に来た時と風景が変わっていた。出店予定地の庭(予定)の隣には大きなアパートが建設中だった。基礎はすでに終わり、骨組みを組み立てている最中だ。各所で工事をしているため、工事用の車両がひっきりなしに通っていた。噴水のある公園は木が植えられ、奥の方には遊具が見える。内陸地の方には学校や教会が建設中らしい。そんな会話が聞こえてきた。




「こんにちは。エルダー工務店のコージーと申します。お嬢さん方がご依頼のマリさんとエイミさんでしょうか?」

「はい、そうです。」

「お待たせしてすみません。では、早速ですがお話を聞かせてください。」

現れたのは工務店の店主と名乗るコージーさん。背が高く、筋肉質で日焼けした肌をしていた。白髪の混じった髪をしているが笑顔を見るにまだそれなりに若そうだ。

もう1人一緒に来ていた人は店主より10cmくらい小さな人であまり表情の動かない静かな人だった。手にはスケッチブックがある。


改めて互いに名を名乗り、握手を交わす。いまだ開発途中のこの地域はまだどこも店が開かれていないためゆっくりと座って話せる場所がない。仕方なく噴水の周りを円を描くように作られた、白とグレーを混ぜたような色の土台に腰掛ける。

以前2人で話し合った店について話す。それに合わせて表情筋が死んでるルドルクさんがスラスラとスケッチブックにイラストを描いていく。


「いや、そこはそうじゃなくて――。」

「それは角張ってる感じより丸みを帯びたやつを考えてて――。」

あれこれと自由に喋る私たちにさらに詳しく知るためにコージーさんがちょいちょい質問してくる。

ルドルクさんは細い目を下に向けて手だけをひたすらに動かし続ける。うねっている髪が通り過ぎる風でふわふわと揺れて触ったら気持ちよさそうだと一瞬場違いなことを考えてしまった。






「では我々は後残ったことをしてから帰りますので。サンプルなども見ていただきたいので次回はエルダー工務店(うち)に来店していただけますか?」

「分かりました。よろしくお願いします。」

そう言ってメジャーを持って建設予定地に向かって行った。白黒の絵だけでも素敵だったのが実際どれほどになるのか今から楽しみだ。


「なんかお腹すいたね。」

「夜はブオノでバイトするんでしょ?じゃあ一緒に行って食べようかな。マリも食べてからだとちょうどいい時間になるんじゃない?」

「そうだね・・・今から行けばちょうど人も()いてそうだね。」

「最近伯母さんにも会っていなかったしね。さ、そうと決まればすぐ動かないと!」


最近マッケナに行ったり他にもやることが多くて今までのようにバイトが出来ないでいた。半日だけとか、週1回とか、ハゴルさんとチェルシーさんには調整をしてもらっている。さすがに完全に辞めてしまうと金銭的に厳しくなるから行けるときに行かさせてもらっている。

エイミのお母さんのお姉さんであるチェルシーさんとは、小さいころはよくお互いの家を行き来していたらしいが、成長してからはほとんど会っていないと、久しぶりに会えることに嬉しそうだ。



「いらっしゃいま・・・あら!エイミちゃんじゃない。久しぶりね。マリちゃんも一緒なの?どうしたの?」

「お久しぶりです、おばさん。お腹が空いたから食べに来ただけですよ。相変わらずお元気そうですね。」

「そうなの。元気が取り柄だからね。エイミちゃんの元気な顔を見れて良かったわ。ゆっくりしていって。」


ゆっくり話したかったようだが、他のお客さんに呼ばれてそちらへ行ってしまった。




その後、遅い昼食を摂った私たちは、エイミは自宅へ、私はブオノのバイトを始めるのだった――。

今更ですが、教員と寮母さんの休み確保のため土日は自宅に帰る、ということにしています。


学生の頃のバイト先で、来週来れる?→行けます。〇時からなら行けます。なんて店長と話していたことを思い出しました。勤務時間が決まっていないなんて他の店じゃあり得ないですよね。懐かしい思い出です。

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