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19.ミッション④ー図書室は知識の宝庫ー

「良かったね。」

「まさかこんなに早く土地を買うなんて思ってなかったよ。大胆にいったね。」

学校に行ってすぐ報告したかったが、どうせなら2人揃っている時にしたいと思って夕食まで待っていた。


食堂で夕飯を摂りながらエイミとマッケナに行ったこと、土地を買ったこと、店の大まかな案を話し合ったことなどを報告した。

ラリアンには驚かれたが2人とも私が自ら動き出したことに喜んでいた。


「それでね、2人にお願いがあるんだけど・・・いい造園所とか大工とか知らない?あまり高くなくて。」

初め首をかしげていたが、それなら、と先にトルティーナが発する。


「うちに昔庭師として働いていたっていう人が、独立して造園所の社長をしているって言ってたと思う。庭師で働いていた時に指導していた人が今もうちにいて、たまにそっちに顔を出してるみたいだから聞いてみようかしら?」

「大工か・・・たしか従姉妹の旦那さんの実家が工務店だった気がするんだけど・・・違ったかな?ちょっと確認してみるよ。」


それぞれに伝手があるみたいで助かった。一から探さないといけないとなると時間もかかるし。

引き受けてくれる保証はないと念を押されたがそれでもいいと返事した。実家が頼れるならそれに越したことはないんだろうけど・・・。


「でも、木を植えるっていってもよく考えないとだめだよ。ミモザだって下手したらバカでかくなる種類もあるんだから。ブルーベリーも種類とか考えないといけないし。専門の人に聞くとしても図書室で事前に調べておいた方が良いと思うよ。」

「そうなんだ。ありがとう、教えてくれて。」

食事が終わるとすぐに寮に戻る。今から食べるという人たちのお膳にぶつからない様に人混みの中をすり抜けていった。






次の日、放課後に早速図書室に行く。

日当たりのいい席で1人分厚い本を開き、ページをくっていく。図書室内には何人か人がいたが、時折僅かに話し声が聞こえる程度で静かなものだ。そんな静かな場所だからページをめくる音が響いているように思えた。


開花する季節ごとにまとめられた本や果物に関して書かれている本。イラストも入っていて見やすい。

ミモザのページではラリアンが言った通り、いくつか種類があり、樹高も3~10mと幅広い。葉っぱの形もそれぞれ違っていて、三角の葉や丸みを帯びた葉など可愛らしい。

以前雑貨屋さんで見たミモザのリースが可愛くて飾りたいとずっと思っている。


他にも畑でできる果物なんかが載っている本ではパイナップルとかいいよなーと思って見てたら出来るまでに数年かかると書かれていて衝撃を受けた。観賞用程度じゃないとできなそうだ。


日も陰り、そろそろ出ようかと厳選した本をカウンターへ持って行き、貸し出し手続きをする。図書室でも読んでいたが、すぐに読み切れる量ではなかったからだ。



荷物を置くために寮に早足で戻る。夕食前であり、人影はなく、廊下も薄暗くなってきていた。




2階の図書室から1階へ降りる階段の途中で人影が見えたからぶつからない様に端に寄るが、なぜかその人も同じ方向に体をずらしてくる。不思議に思っていたが、そこで相手から声がかかりハッと顔を上げた。


「シュナイザー・・・?」

階段の中腹にいた人物と目が合い、驚きで目を見開く。


まさか会うとは思わなかった。

逃げようにもここは階段。転がり落ちでもしたら大変だから動くこともできない。思わず借りた本をギュッと抱きしめる。


「話したいことがある。ここでは話せない。場所を替えよう。」

特段驚いた様子はないから私が図書室にいたことを知っていたのだろうか。

そのままくるりと向きを変えて階段を降りていった彼についていく。制服のままということは寮に帰らずずっと待っていたのだろうか。



入っていったのは1階にある資料室。この時間なら絶対に誰も来ないからだろう。

教室は人が残っている可能性もあるから。

部屋に入って扉を閉められた。鍵はされなかったが扉付近で陣とられると部屋から逃げられないじゃないか。



「先月、食事処でバイトをしているのを見た。たまたまかと思ってたが休みの度に行っているようだな。なぜだ?夫妻から毎月貰っているだろう。そんなに派手に使っている様子もないのに。」

単刀直入に切り出された。真正面から強い眼光で見据えられ、思わず顔を背ける。


「私が何をしようとあなたには関係ないでしょう。」

「婚約者が貴族でありながら平民の中で働いているんだぞ?・・・お前、あの家を出ていくつもりなのか・・・?」

相手の声量に反して思ったより小さな声しか出なかった。シュナイザーはどんどん低い声になっていく。


「そうなれば私たち結婚しないで済みますし、それもよろしいですわね。」

「そんなに嫌なのか。」

彼を逆なでるように厭味ったらしい言い方をしたら、ちょうど後ろにあった棚に押し付けられた。いわゆる壁ドン状態だ。急なことで背中を打ち、衝撃が体を駆け巡る。乱暴者め。思わず眉間にしわが寄る。


「むしろ嫌じゃないと思えるようなことがありましたか?」

睨み返し、相手が言葉を失っている間に逃げようと棚についた腕の下をくぐろうとする。が、反応よく手首を掴まれてしまった。


「早く戻らないと友人が待っているの。心配させるでしょ。」

特に待たしている予定はなかったがこうなれば嘘も方便だ。掴まれていた手を叩き、なんとか拘束から逃れ、資料室から飛び出た。後ろから私の名を呼ぶ声が聞こえたがそんなもの無視だ。


そのまま寮まで走った私は顔が紅潮し汗だくになっていたので、部屋に着く前にすれ違ったクラスメイトにどうしたのかと聞かれたが、なんとかごまかして後ろ手に自室の扉を閉めた。


彼にばれた。それが両親の耳に入らないことを祈るばかりである。





翌日、彼を囲むようにして歩いていた彼の友人数人とニック男爵令嬢と廊下ですれ違った。

その際、向こうから話しかけられるが、聞こえなかった振りをして横を通り過ぎる。

男爵令嬢が彼の腕に絡みついて話しかける声が後ろから聞こえた。

「いいじゃないですか。あんな失礼な態度をとるんです。放っておきましょう。」


後ろ頭に視線を感じたが振り返らない様に意識した。

怒りに行こうとしたラリアンを引き留める。

「・・・いいの?」

「いいのよ。今は彼と喋れる余裕がないから。」

トルティーナが確認してきたが問題ないと切ってしまう。

何があったのかと怪訝な顔を向けてくる2人を見ない様に、ただ真っ直ぐに前を見続けた――。

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