17.ミッション④ー夢ー
前回の続きなのでいつもよりすごく短いです。すみません。
「マッケナは港もあるし、うちの国ではワーグナーに最短で行ける港よ。陸路も確保されるならこれに乗らない手はないわ。」
そう言う彼女の目はキラキラと輝いていた。
「ハブソンほどではないけどマッケナも少しは魚も獲れるし、そこに市場を作ろうかと思って。で、さすがに実家から通うのは遠すぎてできないから近くに家を建てて、私や従業員はそこに引っ越そうと思うの。もちろん、地元の人たちもそこで働けるようにするけどね。」
「すごい・・・ちゃんとプランを考えているんだね。」
「あら、大分話が進んでいるのね。あそこは今、出店者を募っているし、移住者も探しているわよね。どんな街になるか楽しみだわ。」
ハブソンというのはジュードの東にある国一番の漁港であり、数多の魚介類がそこに集まっている。我が国の港の中で一番活気のある所だ。
料理が届くまでの間はそうやってラリアンの事業計画について話を聞いていた。
届けられた美味しそうなパスタとサラダ、スープを堪能した後は今度は私の話になる。
「で?マリはどうするの?料理が好きなら大変だろうけど自分で店を経営するも良し、誰かの店に下働きから入るも良し。実家から離れて自分で生活するんでしょ。せっかくなら自分のしたい事をしたら?もう誰の目も気にする必要はなくなるんだから。人生一度きり、楽しまなくちゃ損でしょ。」
可愛いガラスの器に入ったパンナコッタと季節のフルーツを咀嚼しながら聞いてくるラリアンにそうか、と思う。――経営は考えつかなかった。
「でも、経営なんてしたことないからできないよ?」
「誰だって初めはそうでしょ。私みたいに代々繋いでいっているなら地盤はある程度しっかりしているから安心だけどね。ほら、ブオノだってハゴルさんとチェルシーさんが一から始めたんだよ。それに・・・エミリちゃん?エイリちゃん?はずっとケーキ屋で下積み積んでるならやり方はある程度分かるんじゃない?あと、アドバイス位なら私もできるよ?」
「エイミね、エイミ。――まあ、それもそうだね。ただ、彼女が何て言うかは分からないけど。」
自分にとっては知らないことがたくさんあるが、周りに分かる人がいてくれると心強い。
滑らかで甘くておいしいパンナコッタに癒されながら考える。
せっかくなら店を出してみようか?デザートはあまり作ったことがないけど好きだし、彼女なら来てくれるかもしれない。店の誘致をしているなら今がチャンスだろう。
聞くところによると出店者や移住者には補助金が出たり、店や家を建てるときに銀行から借りるローンの利子を他地域より格安にしてくれているらしい。それは魅力的だ。店を持つなら建物を建てるところから始まるのだが、借金は少なければ少ないほど自分の生活も楽だ。従業員の給料の問題もあるし・・・。
ただ、その開発地域がどんなところかは行ってみないと分からない。区画整備などもあるだろうし、時間のある時に一度見に行ってみようか。
「心は決まったようね。いい顔をしているわ。その方がいいわよ。」
斜め向かいからトルティーナの慈愛を感じる目に見つめられ、なんだか見透かされているような、こそばゆい感じがした。
少し、憧れてはいた。料理屋にしろ、宿屋にしろ、花屋にしろ、自分のやりたいことをして夢を叶える。店自体の装飾だって店主の趣味とかセンスが良く表れていて見ていて楽しいし、参考にもなった。好きなことを仕事に――。どれだけ幸せだろう。ずっと自由を、幸せを求め続けていた私には手を伸ばして掴みたいものだった。
そしてチャンスが巡ってきたのなら、手を貸してくれる人がいるのなら、無駄にはしたくない。
その日、手紙を書き、寮から以前教えてもらった住所に送る。
そして返事は1週間後に来た。
良い返事と共に、マッケナに一緒に行く希望の日時も添えられて。
この話を書いた前日、地元のイタリアンレストランのコースで出された新玉ねぎのポータージュを飲んだんですが、玉ねぎ臭くなく、めちゃくちゃ美味しかった。レシピ教えて欲しいなあ。




