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16.ミッション④ーあと1年ー

春ののどかな暖かさ。外を歩けばそこかしこで鳥のさえずりが聞こえる。これから巣作りをするのだろう、木の枝を小さな嘴で咥えているのが見えた。空は青く、所々に浮かぶ白い雲は綿菓子のようだ。

下を見れば、補正された道の脇には春の芽吹きと共に黄色い小さな花が咲いている。柔らかな風にそよそよと動いている。



結局、自分の答えが見つからないまま休みが過ぎ去り、入学式の日を迎え、私は3年生へと進級した。

校門から玄関までの歩きなれた道もあと1年で終わりを迎えると思えば寂しくもあり、先を思うと焦りもあり、なんとも複雑な心境となっている。


今日は授業はなく、午後からはフリーとだけあって、久しぶりに会う友人と街に出るつもりだ。

それを励みに、退屈な学長の長ったらしい挨拶を乗り切ろうと思う。




玄関を入った先に貼り出されていたクラス名簿。最後の年はトルティーナとは離れてしまった。ラリアンがまた同じクラスだったのが救いだ。――問題はレベッカ・ニックもいること。


無事に1年終わる気がしない。




学校の中で一番広い武芸場に教員・生徒全員が集まった。今日は風が弱くて良かった。風が強ければ土が目に入ることもあるのだ。


長い長い話の後、各教室へ入り、担任から学長よりかは短いが、長い話を聞き、ようやく午前中が終わった。


「はぁ~長かった~。」

「疲れたね・・・。ティーナも終わったかな?」

担任の話が終わる少し前から廊下がガヤガヤと騒がしいため、うちのクラスより先にホームルームが終わったクラスだろう。

3年ともなれば仲の良い者同士でグループが出来ているため、みんなそれぞれのグループで話をしているようだ。



「あ、マリアーナさん、ラリアンさん!今年は同じクラスですね。よろしくお願いします~。」

「え、あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」

教室を出ようとしたときに引き留められ、振り向いた先にいたのはニック男爵令嬢だった。

捕まってしまった、というのが正直な気持ちだ。早く離れたい。


「お2人とも春休みは何をされてました~?私はマルロ様とピクニックに行ったり~、ヒュード様と買い物に行ったり・・・そうそう、シュナイザー様と今流行りの音楽会にも行ってきたんですぅ。行きたいって言ったら連れてってくれたんです。優しくて惚れちゃいますね!」

純粋な笑みではなく、いやらしい笑顔を浮かべる彼女にこっちの頭が痛くなる。


彼女の声は常日頃から大きく、よく通る声をしているため、教室の端にいた生徒もこちらを見て一部の人は小馬鹿にしたようにクスクス笑ったり非難の目が向けられたりした。

シュナイザー意外に名前をあげられたマルロとヒュードは共に婚約者や付き合ったばかりの彼女がいる。特にマルロは爵位が上の令嬢と婚約しているため、これが知れ渡れば大変なことになるだろう。


ぶりっ子令嬢は相変わらずだった。


「あまり男性と、それも婚約者のおられる方と2人きりで出かけるのはよくありませんよ。」

取り敢えず注意だけしておく。隣にいるラリアンからの恐ろしい冷気に私は少しビビっているのだが、令嬢は気にしていないのか気づいていないのか、涼し気な顔だった。


「あら、まだ結婚しているわけではないし、相手が良いと言ったら良いのでは?私だって無理やりじゃなくてお願いしているだけですぅ。酷い、言いがかりです!」

常識を教えたはずなのにシクシクと泣くふりをされてしまった。女性だからふりだと分かるが、本当に泣いているように見えたのだろう、男性数人が彼女を囲み慰めだす。


「いくら何でも泣かすまでしなくていいだろう。性格悪いな。そんなだから婚約者から捨てられるんだ。」

私が悪いと決めつけてかかっている男性たちに責められる。その言葉はナイフのように私の心に突き刺さった。そして、それはタイミング悪く騒ぎを聞きつけて別のクラスにいたシュナイザーが私のクラスにちょうど入ってきたところであり、目ざとく見つけた取り巻きの男性が、彼になあ、と同意をとる。


私と目が合ったが、彼は返事はしなかったし否定もされなかった。


悲しみと怒りで顔を赤くした私は、涙をこらえ鞄の取っ手をひっつかんで走って教室を出た。

慌ててラリアンが後ろを走ってついてくる。



「ちょっと、ちょっと待って。意外と足速いんだから。」

外に出て腕を掴まれた私はそのまま誘われるように校舎からは死角になっている所まで引っ張られていった。そしてギュッと抱きしめられ、気づけば涙を流していた。




「落ち着いた?」

「うん・・・ありがと。」

ラリアンの制服を濡らしてしまった私の目は赤く充血し、瞼は腫れてしまっていた。


「泣いたらお腹すいたでしょ。さ、顔を洗って美味しい物を食べに行こう!」

彼女の明るさに救われる。



着替えてトルティーナと合流して寮を出る。

あまり有名ではないが、パスタが美味しいと言われている店に入った。


「シーフードのクリームパスタとナスとベーコンのトマトソースパスタ、明太子のカルボナーラ。3つともセットでお願いします。」

「デザートはいつお持ちしますか。」

「食べ終わる頃にお願いします。」

「かしこまりました。ではお待ちくださいませ。」



料理が運ばれてくるのを待つ間、卒業後の話になった。主に私の。

「マリは何するか決めたの?」

「ううん。バイトしてみて掃除より料理の方が好きだな、とは思ったけどただそれだけ。ブオノで卒後就職させてもらえないか聞いたけどどこも行き場がないならいいって断られちゃった。今しか出来ないこともあるって。」

「そっかー。まあ、あの人なら言いそうだね。」

「ララは家の仕事の手伝いで忙しくなるんでしょう?」

ティーナの言葉にやっぱりな、と思う。商団を抱えているからきっとそっちを手伝うんだろうな、とは思っていた。


「なんか今再開発している地域があってそこに1つうちから店を出すかってことになってるの。」

「えっと・・・マッケナだっけ?国境近くの。」

「そ。貿易もできそうだしね。」

海にほど近く、クストロダムとの国境にほど近い場所にある小さな田舎町マッケナ。国境は小高い山であり、元々人が行き来できるよう、道は作られていたのだが、道幅は狭く、決して綺麗で歩きやすい道ではなかった。馬車なんてとんでもない。幅が足りるか足りないかくらい。その道を整備し直し、友好国であるクストダムの行商とジュードの行商との交易を活発にさせたいのが両国の思いだ。クストダムは貴金属が豊富に採れ、加工技術も優れている。かの国の西側では織物産業が盛んで、独特な色合いや貴重な布が売られている。

一方ジュードは西側は農業が盛んで、果物や他国では高額で取引されている砂糖なんかがマッケナ近郊ではよく作られているため比較的安価で手に入る。

それらを取引しやすい環境を整えようというのだ。


また、ラリアンが言っている貿易にはワーグナーという小さな島との取引も含まれている。南側の、クストダムとジュードの国境の延長上にあるその島では香辛料が採れるのだ。

今までもその島と取引がなかったわけではないが、少量しか採れないため高額だった。内陸地であるシュリアやかなり距離のあるベッサナなんかだとさらに高いと聞く。

それが、安定してかなりの量が収穫できるようになったため自由貿易が出来るようになるのだ。


それに手を挙げたのがコルテット家である。コショウはもちろん、ローレルやシナモンにバニラビーンズなど、料理や製菓には欠かせないものがワーグナーでは栽培されている。

もちろん、ジュードでも栽培している物もあるが、気候や土地の関係上数が少なく都心部のみで販売されている。

この島と関係を結べばこっちは香辛料が今よりも安価で手に入るしこちらの物を向こうに売ることが出来る。あっちはあっちで働き手に十分な給金を渡すことが出来るし、大陸の品が手に入ることで今よりさらに生活が豊かになる。


互いにWin-Winな関係なのだ。

マリアーナが走り去った後、シュナイザーがどういうことだと詰め寄るという裏設定です。


話が思った以上に長くなったので切ります。

中途半端な所ですみません。

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