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10.ミッション②ー軍資金を調達しようー

さあ、今日は他に貯蓄に回せるものを考えよう。

バイト代だけでは今後を思うと心許ない。


じゃあ、何をする・・・?



そうして考えている私の目に入ってきたのが衣装棚。下の隙間にはアクセサリー類が分類別に箱に仕分けされている。

上の貴族たちのようにとてもいい生地やデザインには程遠いがこれだって安くはない買い物だった。これを売ればいいのではないだろうか。

サイズが小さく着れないものはほとんど置いてないが、見てみると舞踏会で1回、2回しか着ていないもの、いつか親が何かで与えてくれたが色やデザインが私には合わず一度も袖を通していないドレスがあった。そういうものを優先して売ればいいだろう。


アクセサリーも同様。

さすがに以前誕生日プレゼントで貰ったネックレスとイヤリングはばれるし、こっちとしても貰ってすぐ売るのは気が引けるから残しておこう・・・。


元々私は出かける方ではない。だから何年も使っていないものだってあるはずだ。



そうしてメイドがいない今、ガサゴソと家探しのように箱の中を漁っている。

そうしたら下段にここ2、3年使ってはいないのではないか、と思えるくらい最後いつ使ったのか忘れた品々が収められていた。

きっと主人の品を使わなくなったからといって勝手に捨てたり売ったりもできずこうして閉まっておいたんだろう。


ルビーのイヤリングは一昔、二昔くらい前のデザインで、今これと同じようなデザインを付けている人は見たことがない。そもそも子供に合わせたデザインであるため、この年になってこれを付けるのはさすがにはばかられる。

他にもいろんな宝石のさざれ石を使用した髪留めもあって、いくらになるんだろう、と思った。



そして相談したのがトルティーナ。彼女の父親は王宮で働いているし、母親もおっとりしているが社交界では有名な人。彼女の仕草を真似る女性もいるくらいだ。町に出れば宝石店もブティックもあるが、あえて定期的に家に呼び、商品を購入していると言っていた。

その伝手でどこかに引き取り手がいないか聞いてみよう――と完全に人頼み状態なのだが、そこまで考えられていないマリアーナであった・・・。






「ほう、これは5年ほど前に流行った型ですな。まだ綺麗だ。ふむ・・・これなら1万いくかいかないかくらいの額になりますかな?」

「けっこう下がるんですね・・・。やはり流行りとかも関係するんでしょうか?」

「そうですな。買い手もやはり売れなければ在庫として抱えなければならなくなりますので、どうしても人気から外れるものは値が下がります。これは状態もいいのでまだ値がよくつく方だと思いますよ。」


今いるのはベストラン伯爵家の応接間。

事情をトルティーナに話すとすんなりと了承してくれ、今日宝石商を呼ぶと聞いて、自分の売ろうとしている物がいくらくらいになるのか見てもらっていた。

右目にモノクルをかけたダンディーなおじ様商人さんは白い手袋をして私が持ってきた物を慎重に見ていた。


一度は使用したものだから値は下がると思っていたがこんなに下がるとは。そう考えるとあまり貯蓄の足しにならないかもしれない。


宝石商が帰った後、トルティーナの私室にお邪魔して飲み物とクッキーをいただいていた。

「どうする?手放すかもう決めたの?」

「うん、家にあっても仕方ないしね。少しでも足しになるなら売ってしまいたいかな。」

「家に来るのは新品を売る人だけだから、持っている物を売ろうとするなら町に出ないといけないわ。それに一度にたくさん持って行くと疑われるから小分けにして、店も変えるといいわね。」

「疑われるの?」

「盗んだものを売りに来たんじゃないかってね。」

なるほどと頷く。たしかに、ありうる話だ。しかし、そう買い取ってくれる店は多くないだろう。

ナッツの入ったほのかに甘いクッキーを咀嚼しながら考え込んでいると話は前に進んでいた。


「隣の町に1件、その隣は少し大きいから2件あったと思うわ。あまり遠いと持って行くだけでも時間がかかるからその辺りかな、って思うんだけれど・・・」

「一緒に来てくれないかな?」

「いいわ。すぐには行けないと思うけど・・・」

「ううん。それでいい。ありがとう!」

予定があるのだろう。すぐには向かうことは困難でも一緒に来てくれるという彼女の手を取り、何度もお礼を伝えた。


「あとは今子爵家からお小遣いとしてもらっている分の一部を貯蓄に回すことね。」

「そうだよね。それは私も考えていたの。でも元々そんなにもらえてないからね。休日家に帰って来るだけだからそんなにいらないでしょって言われてて。学費や寮費は払ってもらっているから。」

「学費や寮費なんて仕方ないじゃない。・・・もしかしてとは思ってたけど、やっぱりお小遣いもほとんどないのね?」

「バイト代よりは多いけどね。やっぱり交際費とかかかるし、社交界の時期にポンッとドレス代を貰えるわけではないから少しずつ溜めて、っていう感じ。まあここ数ヵ月は休日になるとバイトしてるし交際費は浮いてるからそれを回せるかな。」


そこまで裕福ではない子爵家で蔑ろに扱われている私は他家に比べて十分なお小遣いをもらっていない。兄たちが成人しても家に居るため、彼らにもまだお小遣いを渡しているのも一因だと思うが、きっといなくても変わらなかっただろう。

外側に小さな淡い色の花をあしらった白い陶磁器のカップに入った紅茶の水面を眺めながら眉を下げる。

物憂げな私を心配そうに見つめていたこげ茶色の瞳がついと大きな窓の外を見やった。


「とりあえず宝石店に行く日を決めましょうか。これからドレスも売りに行こうと考えると取っ掛かりを早くした方がいいわね・・・2週間後なら土日共に空いているわ。大体店は昼前に開くんだけど・・・バイトの都合は大丈夫かしら?」

「明日行ったときに相談してみる。昼過ぎまでバイトしてその後行くっていう感じでもいい?」


バイトが終わってから行くとあまり時間が取れないかもしれないため、まずはバイト先から一番近い店に行くことになった。

「ネックレスとイヤリングとセットになっている物はある?」

「いくつかあるわ。」

セットであった方が単体で売るより少し高く買ってくれるだろう。

少しずつ少しずつ準備を進めていく。



限られた時間は残り少ない。

その時間をいかに有効かつ最大限利用できるかが今の私の課題なのである――。

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