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運命超克の忘却神皇 〜転生したのでゲーム知識を駆使して破滅する運命のヒロインたちを救います。〜   作者: 平康
第一章 忘却の転生者と光の巫女

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第二十三話 「強くなるために」

遅くなってすいませんでした。今回は少し長いです

闘覇たちは病院に着くとアーシャたちが入院している病室まで歩いていた。


「それで、アーシャさんたちはいつ頃退院できそうなんですか?」


「後はちょっとした経過観察だけだと思うから二、三日で退院できると思うわよ」


「だってよ、アリシア」


「そうね、それならよかったわ」


たわいもない話をしながら病室の前まで向かっていく。すると闘覇は何か思い付いたかのように二人に口を開いた。


「病室に着いたら、先に俺一人で入ってみてもいいですかね?」


「私は構わないわよ。アリシア様はどうですか?」


「構わないけど、どうかしたの?」


「いや、ちょっと聞きたいことがあってね」


そうこうしているうちに、彼女たちがいる病室の前までたどり着いた。


「それじゃあいいかな?」


闘覇の問いかけに対して二人はコクンと首を縦に振る。


「お邪魔します」


闘覇はドアをノックするとアーシャたちのいる病室に入った。扉の開く音に反応して病室にいた全員が扉の方に顔を向ける


「貴方は………どちら様でしょうか?」


すると、闘覇には初対面の人間に対する警戒と不信感が混じった視線が向けられた。


「そういえば初対面だったか。俺の名前は神崎闘覇。どうぞよろしく。俺のことって聞いてる?」


「神崎闘覇様、はい、話は聞いています。その節はアリシア様を助けていただきありがとうございました」


「いや、それはいいんだ。それで少し話したいことがあるんだが」


「はい。なんでしょうか」


「君たちは昨日の事件をどう思っている?」


闘覇の問いにアーシャたちの顔が固まる


「そこら辺をどう思っているのかだけ一応聞いておきたいんだよ。まぁ、なんとなく予想はつくけど、それでどうかな?」


闘覇はアーシャに顔を近づけながら問いかけ続ける。


「どう思っている、ですか。私としては色々ありますが、申し訳ない、が一番の思いでしょうか?」


皆が固まっている中、アーシャが自らの思いを吐露していく。


「申し訳ない、とは誰に?」


「アリシア様に、そしてここにいるみんなに、です。私が弱かったせいでアリシア様やみんなを危険に晒してしまった。私がもっと強ければ、こんな事には」


「そんなことないです!」「そんなことありません!」


アーシャの言葉に他のみんなが否定の声をあげる。


「申し訳ないというなら私にだって」「それなら私も」「いいえ私ももっと強ければ」「私もあの戦いだとあまり役に立たなかったです」「それをいうなら私もよ」「私も、かな」


「みんな……」


その様子をみてアーシャは感極まったかのように涙を浮かべた。そして——


「そうね、私もそう思うわ」


アリシアもアーシャの前に立って思いを伝えた


「あ、アリシア様!」


自らの主が来たことによりその場にいた全員がベットから出て一礼を行う。


「みんな、大丈夫なの?」


「はい、傷はもとより完治しておりましたので問題ありません」


アリシアの問いにアーシャが代表をして答える。


「この度は我らの力不足によりアリシア様の身を危機に晒してしまい、申し訳ございませんでした」


「そんなことないわよ、それ言うなら私だって——」


「いえ、御身を守るのは私たちの責務でございます。それを果たせなかった以上、我らはあなた様の従者失格でございます」


「そんな、ちが……」


アーシャの言葉を聞いて哀しそうな表情をアリシアは浮かべた。アーシャの言葉に反論しようとしても、うまい言葉が見つからずに、無言のままオロオロしている状態となっていた。アーシャたちもまた、今回の負い目からか、ただ頭を下げ続けているだけだった


そこに——


「あの、ちょっといいかな?」


闘覇が周りにいるみんなに届くように声をかける。


「とりあえず、みんなが色々と思っていることがあるのはわかってる。でも言葉にしないといけないこともあると思うんだ」


「闘覇……」

 

アリシアが闘覇に縋るような目線を向ける。


「と、言うわけで思っていることを全部言葉にして出してみようよ。他の人が喋っている間は声を出すのは禁止。静かに最後まで聞くこと。どうかな?」


「私は構わないわ」


「アリシア様がなさるのでしたら、我々としても是非はございません」


「よし、それじゃあ決まりだね。じゃあアリシア、音を遮断する魔術をお願いしてもいいかな?」


「分かったわ」


そういうとアリシアによって風の結界が展開されていく。光の巫女として光に絶大な適性を持つ彼女であったが、次に適性が高いのが風であった。


(さて、このままじゃ、みんな気を遣って心の奥底までは話さないだろうし、少し後押ししようか)


闘覇はそう考えながら密かに神器を使って彼女たちに()()()を施し始める。






「じゃあ、私からね。私がみんなが好き。私と一緒にいてくれて本当に嬉しい。でも、同時に申し訳なさも感じてるの。私が狙われているせいでみんなを危険に晒してしまって、今回だってみんなが死にかけて、それで、それで」


アリシアが涙目になりながら心の中を言葉にしていく。アーシャたちが何か言おうとするも、闘覇に制されてそのままベットに座ったままとなっていた。そして、これまでのさまざまな思いについて話をして、話の締めくくりに入った。


「私はみんなとこれかも一緒にいたい。でも私と一緒にいたらみんなが傷ついちゃう。みんなは自分の力不足って言ってたけど私はそうは思ってない。私を守ろうとしてくれて本当に嬉しかった。でも、だからこそみんなが傷つくのは辛い。だから、私のせいでみんなが傷つくなら、一人でいた方がいいかもしれないとそう思ってる。」


アリシアは声をうわずらせながらどうにか最後まで話し切った。


「とりあえず、アリシアの話はここまでかな?何か他に言っておくことあるか?」


闘覇の問いかけにアリシアは涙をこぼしながら首を横に振った。


「そうか、よく頑張ったな」


闘覇はそう言って慰めながらアリシアの頭を撫でた。その甲斐あってか、アリシアも少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「さて、次に誰が話す?」


「では、私が」


アーシャが手を上げて立候補する。


「アリシア様、まずは感謝を。我々を大切だと言っていただき、この上ない幸せです。だからこそ、我々の思いを伝えたいのです」


そう言ってアーシャはアリシアに真っ直ぐと視線を向ける。


「私たちは幸せでした」


そう述べるアーシャの顔には大輪の花が咲いたような美しい笑みが浮かんでいた。


「貴方様といられて、貴方様と過ごせて、我々は幸せでした。そして、願わくばこれからもいつまでもそばにいたいと考えております」


その言葉に周りのみんなも頷いていく。


「アリシア様をお守りできるように、力不足な私たちですが、もしよろしければ、これからも側においていただきたいのです」


そしてアーシャたちは一斉に頭を下げる。アリシアは彼女たちに迷うことなく自らの思いを言葉にする。


「ええ、もちろんよ。私もみんなと一緒にいたいもの」


「ありがとうございます。ただ、やはり我々が側にいていいのか、という思いもあります。もっと強い別の人に従者を代わっていくべきなのではないかと」


「何言ってるよ。貴方たちは最高の従者よ。貴方たち以外なんて考えられないわ」


「アリシア様」


アリシアの言葉を聞いたアーシャたちの顔には喜びと申し訳なさが混在していた。やはり何処か昨日の事件が吹っ切れていない様子であった。


そこに——


「なるほどなるほど、みんなの悩みは分かった。それで、話を聞いて思ったんだが、ようはみんなが強ければ問題ないわけだ。それじゃあみんなで強くなろうぜ」


あっけらかんとした口調で闘覇がいう。


「そうかしら、なんか簡単そうに言ってるけど」


「だってそうだろ。みんなはみんなと一緒にいたい。でも敵が襲ってくるから離れた方がいいと考えてる。だったら敵をボコボコに倒せるくらい強くなれば万事解決じゃんか」


「そう、なのかしら?」


「そうなのでしょうか?」


「ああ、そうだ」


軽い調子でそんなことを言う。その感じに可笑しくなったのか。アリシアたちから少しずつ影が消えていった。


そして闘覇は名案を思いついたかのようなポンと手を叩いてアリシアたちに提案をした。


「よし、それじゃあみんなで誓いをしようぜ。強くなるための誓いだ」


どことなく唐突感のある提案だったが、闘覇の出す勢いに押されて受け入れる雰囲気になっていった。


「ふふ、やっぱり闘覇は面白いわね。なんかだんだんうじうじしてる自分がバカらしくなってきたわ」


「そいつはよかった。それに何事も形からっていうだろ。いいからやってみようぜ。ほらみんな手を出して」


闘覇の言葉に合わせてアリシアが手を伸ばす。闘覇の言葉とアーシャたちとの話し合いによって吹っ切れたようであった。そして、アーシャたちもそれに追随して手を重ねていった。


「よし、それじゃあいくぞ」


闘覇はそう言ってみんなの顔を見渡す。そして目をつぶって一呼吸すると目をゆっくりと開いて力強く声を発した


「強くなろう」


どこか響き渡る、そんな声で宣言が行われる


「どんな敵が来ても、みんなを守れるように、強くなろう。罪悪感を感じるな、とは言わない。でも、どうせならその思いを前に進むために使おう」


笑顔を浮かべて宣言する。心の闇に光を当てるように、その思いを前へと向かう原動力とするために


「俺たちは強くなる。誰にも負けないように、約束だ」


闘覇がそう言い切って高らかに声を上げる


「みんなで最強に、なるぞー!」


「「「オー!!」」」


そう宣言するアリシアたちの顔は影のない美しいものであった。





その後、話を終えた闘覇たちはディザイア迷宮学園へとたどり着いた。そして輝夜の案内でディザイアを付与するための場所まで向かっていた。


「さてついたわ。ここが神の水晶よ。ここでディザイアを付与するの」


「綺麗ね」


「ああ、そうだな」


そこには巨大な柱のような水晶がそびえ立っていた。周りには光の粒が満ちており、幻想的な光景を生み出していた。


「さて、やり方としてはシンプルよ。あの水晶に触れて力を望めばディザイアが付与されるわ。うまく言葉で説明できないけど、ディザイアを付与されたらそれを感覚として認知できるわ。それまで水晶に触れ続けていれば完了よ」


「なるほど、それで水晶にはどのくらいの時間ふれていればいいんですか?」


「数秒も触れていれば、自然と付与されるわよ。それじゃあ闘覇君からやってみる?」


「わかりました。望むところです」


闘覇は水晶へと向かっていき、手を伸ばす。そして水晶に触れると力を望んだ。


(力が欲しい。みんなを守れる力が)


バチッ


闘覇が力を望んだ瞬間、突如として手が水晶から弾かれた


(なんだ?手に入れたのか?いや、でもそんな感じはしないな)


気を取り直してもう一度水晶に触れてみる。しかし——


バチッ


やはり、手を弾かれてしまう。


(なんだ、これ)


「どうかしたの、何かあったのかしら?」


そして十数秒立っても水晶の前から戻らないことに、輝夜が声をかける。


「いえ、大丈夫です」


そう言ってもう一度水晶に触れようとする。するとどこからともなく笑い声が聞こえてきた。


(なんだ?誰か笑ってるのか?いや、そもそもどこから、)


上から聞こえるようにも下から聞こえるようにも感じる笑い声が、闘覇の中に響き渡っていく。


笑い声が聞こえる。嘲笑っているようにも喜んでいるようにも聞こえる、どこか悍ましい笑い声が聞こえる。そして——


『お前に、それは必要ない』


その声と共に闘覇の意識は闇に呑まれた






そこは一面闇だった。ただただ暗く、そして黒が視界の全てを覆っていた


「よう闘覇。お久しぶり、ってほどでもないよな。また会ったな」


「ああそうだな。クロ。それで、これは一体なんなんだ?」


「なるほど、何か聞きたい事があるみたいだな。まぁ気持ちは分かるぜ。取り敢えず座りな」


そうあってクロは足元から椅子を出した。


「色々と聞きたいことはあるが、まずはさっきの言葉の意味だ。なんだよ必要ないって」


「そのままの意味だぜ。あんなモノはお前には必要ない。てか、あんなモノが欲しいのか。趣味悪いぜ。闘覇」


「あんなモノ、ね。何かあれは不味いモノなのか?」


「少なくともお前にとっては益より不利益の方が大きくなるな。他の奴らは持って損はないかもしれんが、お前にいらない」


「そうかよ。でもな、俺は強くならないといけないんだ。これから——」


「これから敵が来る、か?」


「ああ、そうだ」


「わかっているさ、浄星再誕教会、聖魔十三真軍、救世神獣騎士団、どいつもコイツも化け物ばかりだ。場合によっては邪神同盟の奴らともぶつかる事になるだろうな。確かにお前が焦るのも分かる。なんせ時間がないからな」


「っ、だったら……」


「だが、お前が今やろうとしているのは悪手だ。せっかくだし教えてやるよ。お前が強くなる方法」


「本当か?」


闘覇は半信半疑の心境でクロに言葉を返した


「あぁ、本当だとも。それが俺の望みにもつながる。その前に、まず俺の事について話しておかないとな」


そう言うとクロは一息をつく。


「さて、闘覇には俺のことはどこまで話したっけ?」


「お前がシロから与えられた"試練"だって事と、お前と記憶を失う前の俺が取引して、結果として俺が記憶と力を失ったってことだけだな」


「そうだったな。じゃあ、まずは"試練"の持つ力について話しておこうか」


そうして、クロは指を三本立てる


「"試練"の力は簡単に言うと三つ。保護と強化と契約だ。他にもちょっとした能力が幾つかあるが基本はこの三つだ」


「保護と強化と契約」


「そうだ。順番に説明していくぞ、まずは保護だ。保護は、お前が死にかけたときに発動する。死の寸前になったお前と俺が入れ替わる。そしてお前が生存できる状況にまで持っていくのが俺の一つ目の力だ。この時、命に関わる傷はあらかた回復するし、力も一時的に増す。お前のマックスの力を100とすると150くらいになるように強化される」


「それは、強いな」


「ああ、強いさ。ただ勘違いして欲しくないがこれはそんなに便利な力じゃない」


「と、言うと?」


「単純な話さ。これはお前の生存させるための力。だから()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから場合によっては仲間を見捨ててその場を離脱する場合もあり得るし、仲間を人質に取られて攻撃できずに死にかけた、とかの場合だと仲間を見捨てたりして敵を排除することもある。場合によってはお前を生存させるのに邪魔だと判断したら仲間だろうと殺す。これはそういう力だ」


「なるほど、それは、キツイな」


「そりゃあそうだ。これはあくまで最終手段なんだからな」


「それで、二つ目は?」


「そうだな、次は強化だ。強化の内容もそこまで難しいものじゃない。これはお前を強化する力だ。ただしそのためにはポイントが必要だ。使ったポイントが大きければ大きいほど強くなる」


「そうか、それでポイントっていったいなんなんだ?」


「それについては後で説明してやるよ。最後に契約だ。契約は俺とお前とで約定を結ぶ。お前は俺に力を望みにも、俺はお前に代償と力を与える。ポイントの代わりに俺が提示した代償を使う強化だと思ってくれていい。その分強化よりは与えられる力が多いがな」


「代償か。なるほど、それで俺は記憶と力を失ったのか」


「そうだ、記憶を失う前のお前は基本的には契約は使わずに強化で済ませていたんだがな。最後の戦い、その時にお前が戦った奴らは別格の強さだった。それを一人で相手にしようとしたんだからな、しかも周りの被害を0にしようとした。流石にそれはあの時のお前でも無理だったんだよ。それでお前は俺と契約を行った」


「なるほどね」


「さて、それじゃあ、ある程度説明したところで、ここからは俺の目的をお前に話してやろう」


そういって笑みを浮かべるクロ。その笑顔はどこか悍ましさを感じさせるものだった。それに対して何一つ動じずに闘覇はクロを見据える。


「お前に言った通り、俺は"試練"だ。じゃあなんで"試練"なんて名前が付けられているか。それは"試練"と呼ばれるモノの目的は宿主を試練に導き、そして試練から生還させるためだからさ。そんでもって試練を超えて宿主に高みへと至ってもらうのが"試練"の目的ってわけだ。」


「……ふむ。いまいちお前の言いたい事がよくわからんな」


「人の魂は試練を超えると強くなる。骨が折れたら治った時にその部分が強くなる。病気になったら病気に対しての抗体が身につくだろう。魂にも似たような機能がついてると思ってくれればいい。限界以上の力を使ったり、命の危機を迎えたりすると魂が自己を保全するために今の自分よりも強くなろうとする」


クロはまぁまとめると、と言いながら話を続ける。


「要するに、俺の言う試練っていうのは魂を強くするために必要な苦難の事だ。そんで魂を一番手っ取り早く強くするには死線を超えさせるのが手っ取り早いのさ。」


「なるほど、お前の保護や強化や契約とやらも試練を超えさせるために必要なものというわけか」


「ああそうだ。死線を超えさせるって言っても普通はそんなことしたらどっかで死んじまうからな。それを生きて帰るようにするための保護と強化と契約だよ。さっきも言った通り"試練"の役割は宿主を試練に挑むように誘導する事だが、死なれたら元も子もないからな」


「それで、俺が強くなるためには結局どうするんだ?後ポイントの事についても説明がないぞ」


「そうだな。まずポイントのことから説明するか。ポイントはお前が試練を超えるとその難度によって自動的に溜まっていく。そして、さっきも言った通りそのポイントを使ってお前の力を強化できるわけだ。お前は何度か強化を使って自分や仲間の危機を乗り越えてきた。だが最後の時はポイントが足らなくてな、強化だけじゃアイツらに勝つ事ができなかったんだ、そして更なる力を得るために契約を結んだ、ここまではさっきも少し話したよな」


「ああ、聞いた」


「それでここからが問題だ。契約を結ぶ場合、"試練"は求める代償について、あるルールが課せられる。それは契約で求める対価は相手が大切に思っているような、数多の試練を乗り越えても取り返そうと思えるようなものを選ばなければならない。さらにいえば契約が完遂されるまで次の契約はできない」


「それで記憶と力を封印したのか」


「そうだ。ちなみに記憶と力はお前の魂が高みに上るほどに封印から解放されていく。そう言う契約だ。ここまでいえば何をすればいいのか分かるだろ」


「大体な。ようは強い敵と殺し合って死線を超えまくれって事だろ」


「そういうこと。安心しろ。全てを取り戻せばお前は最強になれる。いや、この場合は最強に戻ると言った方が正しいかな」


「そんなに昔の俺は強かったのか?」


闘覇がクロの言葉に疑問を呈する。


「ああ、強かったさ。まぁ、あんまり俺の口から語ることでもないな。強い奴と戦いまくればいいさ。そうすればいずれ全てを思い出す」


「はぁ、聞きたいことが山ほどあるが、まぁいい。なすべきことは分かった。ありがとう」


「別に構わねえよ。俺の目的に近づくためさ。これからもちょくちょく助言してやるから、ありがたく受け取れ」


「ハイハイ、それじゃあ俺を返してくれ」


「おう、じゃあな」


クロがそういうと闘覇は夢から覚めるように意識が現実へ戻っていった。






「それで、よかったのか。我らのことを説明しなくて?」


闘覇がいなくなり、クロだけが取り残された空間。そこに声をかけるものが現れた。クロに声をかけた、その存在は教会の絵画などに描かれている天使のような風貌をしていた。


「ああ、ラジエルか。別にいいだろ。まだ時じゃない」


ラジエルと呼ばれた存在はクロの言葉を聞き、ふむ、と頷くと聞きたかったことを話し始める。


「そうか、それで闘覇がこれから高みに上ったとして、誰から闘覇のところに戻すつもりなんだ。今、闘覇の中にいる、我を含む17の真神の内、今闘覇が使えるのは我の力だけだ。それも全力からは程遠い、塵みたいなものだがな」


「さてどうしよっかね。お前も分かってると思うが、俺がお前らを封印したのは強すぎるからなんだよな。お前らの力を闘覇が使えるようになったら試練にならん。敵側が全員まとめて瞬殺だ。正直なところ、こっちはそれだと困る。それだと魂の格が上がらないからな」


「無論、それは我らも承知している。闘覇を更なる高みに上らせる事は我らも賛成だ。それが我らの望みに繋がるからな。しかし契約は契約だ。いずれ戻さねばなるまい。それに無用な犠牲を出すのは反対だな。未来のために今ある命を見捨てるのは間違っているからな」


「そうか?俺としては闘覇が生きて高みに上れば後はどうだっていいんだがな」


クロのその言葉にハァとため息をつきながらラジエルは頭を抱える。


「そんな思考回路だから、お前は闘覇に嫌われたんだ。少しは直そうとは思わないのか?」


「思わないね。俺は俺だからな」


「そうか。それで、闘覇が順調に試練を超えていったとして、誰から戻すつもりなんだ?」


「そこは考え中だな。まぁ悪いようにはしないさ」


「そうかならばいい」


その言葉を最後にラジエルはこの空間から跡形もなく消え去っていった。


「これからどうしようかな。試練の相手には強すぎず弱すぎず、今の闘覇より少し強いくらいがベストなんだが。さてさて、どうするか」


そう呟きながらクロは自身の目的のために次の手を考え始めた。






次回は2月24日更新です。次回で一章が終了します。

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