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運命超克の忘却神皇 〜転生したのでゲーム知識を駆使して破滅する運命のヒロインたちを救います。〜   作者: 平康
第一章 忘却の転生者と光の巫女

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第二十一話 「いずれ騒乱を起こす者よ」

「………今、一緒に寝るって言いました?」


「ええ、言ったわよ。あら、さっき私言ったわよね?今日は闘覇君は私と寝るって、ここに泊める条件として出したはずよ」


「あれ、本気だったんですか?」


「もちろんよ。さて、夜も遅いわ。早く寝ましょうか」


そう言って微笑む輝夜からは同じ空間にいたら常人だったらどうにかなってしまいそうなほどの妖艶な気配が発せられていた。


「なぁ、アリシア。なんか言ってやって———」


アリシアに援護を頼もうとした闘覇であったが、アリシアが石像みたいな固まっているのを見て、これは無理そうだなと諦め、別の話しに話題をすり替えてこの話しを有耶無耶にしようとすることにした。


「というか今更であれなんですけど、もしかしてずっとその格好でいたんですか?色々あってツッコむ暇が無かったですけど」


「ええそうよ?何か問題でも?」


その返答に闘覇は思わず問題しかねえよ、と内心で突っ込んでしまった。それほどまでに輝夜が着ているネグリジェは扇状的なものであったためだった。


「もう一度聞きますけど俺たちに会った時からずっとその格好で?途中で着替えとかを挟んだりはしてない?」


「してないわよ」


「警察とか救急とかの人たちと対応してる時もその格好?」


「当たり前じゃない。何か変かしら?」


輝夜の答えを聞いて闘覇はおもわず頭を抱え込んだ。異世界だから常識が違うのか?という考えも浮かんでいたが、異空間で学んだ知識ではそのあたりは地球と変わらない価値観であるとあったため、闘覇はこの考えを却下して輝夜の価値観がおかしいだけだと判断した。


「なぁ、アリシア。この格好はおかしいよな常識的に考えて」


「うん、大丈夫よ、大丈夫」


「おーい。戻ってこいアリシア」


そう言って闘覇はアリシアを現実に引き戻す。


「と、闘覇!近くないかしら?」


「あっ、戻ってきた。それでさっきの話は聞こえてたか?」」


「………えっ、えっとなんの話かしら?」


「学園長の服装の話だよ。どう考えてもおかしいよなこれ。人前に出てくる格好じゃないだろ」


「そうかしら?確かに寝巻きみたいだけど、そこまで人前に出るのが変かと言われるとそんなことないように思うわ」


「いやいや、こんだけ肌が見えてたら不味いだろ」


「そう?特に肌が出過ぎとかは思わないけれど」


ここで闘覇はアリシアと何かが食い違っているように感じた。すると輝夜が二人に対して質問をしてきた。


「そうね。では質問なのだけれど、私はどんな格好をしているように見えているのかしら?」


「ネグリジェだな、紫色で結構スケスケの」


「えっと、確か、ゆかた、と言ったかしら?特に肌の色は出てないと思うのだけれど?」


「え?」


「え?」


闘覇とアリシアは互いの顔を見合わせた。両者共に相手は何を言っているんだという表情をしていた。


「どっからどう見てもネグリジェだろ、スケスケの。何をどう見たら浴衣に見えるんだよ」


「ネグリジェではないでしょう。それに全然スケスケでもないじゃない」


ここに至って二人は何がおかしい事に気がついた。


「えっと、学園長。もしかしてなんかやっていらっしゃいます?」


「さぁて、それはどうかしらね」


(絶対何かやってるなこの人)


そう考えた闘覇が輝夜の顔をジッと見続けていると、やがてその様子が可笑しくなったのか輝夜は笑いながら説明を始めた。


「フフッ、ごめんなさい。確かに何かをしていると言われればしているわね。と言ってもそんなに大した事じゃないわよ。魔術で光の屈折を操ったり、他にもちょっとした魔術を使って、着ている服装を誤魔化しているだけ」


そして輝夜はそう言うと魔術を解いて本当の姿を晒した。アリシアはその扇状的な格好を見て口をパクパクさせていた。


「なっ……なっ……なっ……」


「にしても良くわかったわね、闘覇君は。これでもほとんどの人には魔術を使っていることすらバレなかったのに。それに魔術を使っていると見抜いた人だって、殆どはそこで止まってしまうの。私の本当の格好までたどり着いた人はさらに少ないのよ」


「そうですか、それは光栄ですね」


「な、なんで格好をしているんですか輝夜様。闘覇も闘覇よ!なんでそんな平然としてるのよ。あと色々と見過ぎよ!」


「ああ、うん。まぁとりあえず落ち着けよアリシア」


「私は落ち着いてるわよ!!」


「そ、そうか、ならいいんだ。それで学園長。その格好はどうにかなりませんか?」


「ごめんなさいね。私は寝る時はいつもこの服装なのよ」


「………そうですか」


闘覇はここに至って、輝夜には多分何を言っても無駄だなと悟った。そして輝夜と寝ることは確定事項だなとも考えていた。


(さて、どうしようかな。まぁ学園長と一緒に寝ることは問題ないとしてもアリシアをどう説得するかだよなぁ)


そうして闘覇は頭を悩ませながらこの難題に取り掛かった。






そして、どうにかしてアリシアを説得した闘覇はようやくベットにつくことが出来ていた——アリシアは別の部屋のベットで眠る事になった。ちなみにいざという時のためにアリシアの周りには輝夜が結界を張っていた——しかしながら心が休まることはなかった。

それは隣で鼻歌を歌いながら腕に抱きついてきている人物が原因であった。


「随分とご機嫌ですね」


「そうかもしれないわね。ふふっ、緊張しちゃうわ」


言葉とは裏腹に輝夜はとてもリラックスした様子であった。


「それで、一体何が目的なんですか?こんなことして」


「別に目的なんて大したものはないわよ。さっき話した通り、貴方の見張りのようなことをしているだけよ。ちょっと気になる事があるのよ」


「それは分かりましたけど、その……俺の腕に抱きつくのをやめて貰えませんか。当たってるんですよ、色々と」


「あら、大丈夫よ。私は全然気にしないから」


(俺が気にするんだよ、こんちくしょう)


闘覇は心の中で輝夜に対する文句を言いながら、どうにか眠るために心を落ち着かせようとする。しかし——


(だぁー、全然落ち着かねぇ。マジで色々とやばいんだよ。この人自分の色気のヤバさを自覚してないのか!)


「とにかく、このままだと眠れないのでどうにかしてもらっていいですか?」


「あら、じゃあ闘覇君が眠るまで子守唄を歌ってあげるわ。こう見えて歌には自信があるの」


「いや別にそうじゃなくて———」


闘覇の言葉を聞かぬうちに輝夜は唄を歌い出した。そして——


(すごくうまいな。声が綺麗なのも有るけど、メロディとかそんなところも凄くいいな、いまいちうまく言語化出来ないけど)


闘覇はすっかりその唄に聞き惚れていた。最初の数秒は聞き流そうとしていた闘覇だったがその唄の美しさにいつの間にか唄を聞くのに集中していた。


そして徐々に眠気が闘覇を襲ってきていた。


瞼が徐々に重くなり、だんだんと意識が薄れていく感覚を味わいながら闘覇は目を瞑る。


「おやすみ、闘覇君」


慈しむような輝夜の声を聞きながら闘覇は眠りに落ちた。






そして闘覇が眠ってから数分のこと。


「闘覇君、闘覇君、眠っちゃったのかな?」


輝夜はスヤスヤと寝ている闘覇の頬をつつきながら、闘覇がキチンと眠っているかを確かめていた。


そしてその確認が終わると——


「それじゃあ、失礼するわね」


輝夜はそう言いながら闘覇の頬に手を当てて魔術の展開を開始した。とても静かに、そして精密に術式が展開されていく。


(ごめんなさいね。闘覇君は多分いい子だと思うわ。でも念には念を入れないといけないの)


そう言って闘覇の事を探るための魔術を完成させる。


普段であれば闘覇が起きる可能性もあったが、闘覇は先程唄った唄にのせた魔術によって熟睡させられているため、起きるのは朝になってからであった。


そして魔術が完成したのだが


(あれ、おかしいわね?何もわからない?)


闘覇からはなんの情報も得る事ができなかった。


もう一度魔術を発動させる。今度は一つ一つ確認しながら術式を展開したが、やはり何も分からなかった。


(何者なのかしら、闘覇君は?)


輝夜から見れば闘覇は、敵ではないが味方と見るにはまだ情報が足りない存在であり、今回の行動は敵が味方かをはっきりさせるためのものであった。


そして何も分からない状況に困惑していると


ガシィ!


瞬間、輝夜は左手の手首をつかまれた。


(もう目覚めたの!もしかして効きが弱かった?)


想定外の状況になった事に驚きつつも、混乱を抑えて声をかける。


「あら、闘覇君、もしかして起こしちゃったかしら?」


どうにかして平静を保っていたが、闘覇が目を開けた瞬間、輝夜は息を呑んだ。闘覇の目が闇のように真っ黒になっていたからだった。


「そんなに警戒する必要はないぜ。今はお前に何かをするつもりはない。今は、な。あと俺は闘覇じゃない。クロだ。クロと呼べ」


闘覇——の体を乗っ取ったクロ——が輝夜に向かって応答する。その表情は怪物が無理矢理取り繕ったような、どこか恐ろしさを感じされる笑顔であった。


「貴方……誰?」


「だからクロだって言っただろう」


「そう言う事を言っているのではないの。闘覇君はどうしたの?」


「別にどうということはしていないさ。それに俺は闘覇に何か出来るわけでもないからな。だから普段は出てこないさ。出てくるとしたら、闘覇が死にかけてやばい時か、もしくは面倒なちょっかいを出して来る相手を牽制するためくらいだ」


「なるほど、それで私を牽制しに出てきたのね」


「後はちょっとしたお願いがあったからだな。まぁこっちの方は大したことじゃない。闘覇を少しばかり支援してやってくれればいいだけだ」


「支援、ね。具体的にはどんなのかしら?」


「衣食住の面倒を見て、後は学園に通わせてやってくれればいいさ、それに闘覇は役立つはずだぞ。お前たちも情報は掴んでいるんだろう?」


「役に立つ、とは何のことかしら?」


輝夜はとぼけるように言った。


「浄星再誕教会に天魔十三真軍、それに救世神獣騎士団、アイツらが動き出したんだろ?」


「…………」


「そいつらとはいずれ戦う事になるだろう。その時に闘覇がいれば役に立つって話さ」


「貴方、正気で言ってるのかしら。貴方が今上げたのはどれも世界が連携して対応するレベルの化け物組織よ」


「だからこそだ。それでこそ試練になる。極上の試練に、な」


「試練って。貴方、何を考えているの?」


「考えていることは一つさ。闘覇が理の域へと至ることを。ただそれだけだ。では頼んだぞ」


そう言うとクロは目を瞑った。すると纏っていた雰囲気が元に戻っていた。クロから闘覇に戻った証であった。


「……もう、何なのよ、一体」


そう輝夜は呟くと、もう自分も寝ようと考えて瞼を落とす。


輝夜は今のやりとりで確信した。闘覇はいずれ台風の目になるだろうと、とんでもない騒乱を彼は起こすであろうと。


その考えを抱いて輝夜は眠りについた。




読んでいただきありがとうございました。次か次の次くらいにようやく学園に舞台を移行できます。


次は2月10日更新です。どうぞよろしくお願いします

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