第十一話 「忘却からのはじまり」
「え?なんだこれ?残り一日とちょっとしか無いじゃん」
闘覇は最初にいた部屋——高級ホテルの部屋であったようだ——に戻ってきた闘覇は余りに予想外の事態に目の前が真っ暗になっていた。
(マジでどうすんだ。てかどういう状況だよコレ)
意味不明な状況に投げ出されて気落ちしていると、いきなり影が盛り上がり、人の形を成していく。
「やぁ、闘覇、元気かい?」
その影は馴れ馴れしく闘覇に向かって話しかける。
「どちら様?」
「俺か、俺は試練だ。お前に与えられた試練だよ」
その影は自分のことを試練だと言った
「端的に言おう。お前は異世界に来てからの記憶を失っている。俺との取引によってな」
「とりあえず、試練さん、だったか。今の状況を説明してくれ。頭がこんがらがって仕方ない」
「いいぜ!後、俺のことはクロと呼んでくれ。試練とか試練さんは嫌だぜ!というか俺がいきなり現れたのに驚かないのな」
「いや驚いてるよ。ただ反応する気力がないだけだから」
「そっか、まぁ、元気出せよ!」
ハイテンションなクロの声に少し鬱陶しさを感じながら闘覇は話しを続けるように促す。
「まずここは中央大陸だ。北大陸じゃねぇ!」
「そんでもって、こんな状況になっているのは俺とお前が取引したからだ。俺がお前に力を貸す代わりにお前は異世界に来てからの記憶を失い、そして一部の力を制限される!っていう契約をな」
クロは矢継ぎ早に喋り続ける。闘覇はとりあえず話しを聞いた方が良さそうだなと考え、黙って話しを聞くことにした。
「力を制限されるってなんだよって今思ったよな!それは祝福だ。祝福関係の力が制限される。今のお前は祝福の力の内容を思い出せないし、力もほとんど使えないはずだ。」
クロに言われて初めて気づく。祝福の内容が全く思い出せないことに。闘覇は確かに異世界に行く前に祝福の内容を知ったはずだが今はまるで思い出すことができない。
「まぁ、今、俺がお前に状況を説明してることも契約の内に含まれてるんだけどな」
そういうとクロはそういえばと言わんばかりに更なるお喋りを付け加える。
「あっそうそう、最後になんだが、記憶を失う前のお前から一つ忠告をしてくれって頼まれてたんだ」
「カウントダウンがある間、いわゆる準備期間ってのはある意味で安全であることが確保されてる期間でもある。その間にMDCに出てた人物が死んだりするってことはねぇ。多少のブレはあるがMDCで書かれた過去と同じ道筋を通ってきてる。逆に言ってしまえば、カウントダウンが切れた瞬間、それはなくなる。つまりは未来がわからず、安全ではなくなるってことだ」
「最悪の場合だと一ヶ月とかからずにそいつらが死んじまって世界が滅んじまうかもしれねえ。MDCのバッドエンドの中にもいくつかは世界が滅ぶパターンがあっただろ。あれが起こると考えればいいさ」
クロは最後にと前置きをして闘覇に向けて話をする。
「そんでもって、よく考えな。なんで記憶を失う前のお前はスタート地点にここを選んだのか」
話しを終えるとクロは闘覇に激励を送った。
「じゃあな、頑張れよ、闘覇!」
そういうとクロの身体は溶けて元の影に戻ってしまった。喋るだけ喋って、すぐに消えたクロに何か言いたげな闘覇であったが消えてしまったので諦めることにした。
そしてクロの話しを整理した闘覇は、
「とりあえずは情報収集からだな」
まずは外に出て情報を集めることにした。
「さて、中々にめんどくさい状況だな」
情報を集める来た闘覇は部屋に戻るなり、そう呟いた。闘覇の集めた情報を整理してみると
MDCのヒロインの一人であり、アリシアルートのメインヒロインでもあるアリシア・アルブ・オベニアスが明日ここに来訪する。
というものだった。
アリシアは西大陸にあるオベニアス皇国の第三皇女であり、同時に光の巫女という特別な存在である。しかしそれが理由で浄星再誕教会という組織に身柄を狙われており、アリシアルートではその組織が主な敵であった。
(さて、これはどうすればいいんだ?MDCではこのタイミングでのイベントは無い。というかMDCの始まりが学園の入学初日だから、今の時点でなんらかのイベントは無かったはずだが………)
闘覇は悩んでいた。確かにMDCでは特にこのタイミングでの何らかの出来事についての言及はなかった。しかしシロに言われていたMDCとこの世界は違うということも加味すると何かが起きる可能性は十分にあった。
(明日、アリシア皇女殿下を祝したパレードとやらをやるらしいし、それを見物していくか)
「「「キャァァァ、アリシア皇女殿下ァァ!!」」」
(凄い盛り上がりだなこれ)
翌日のパレードを見物しに来た闘覇はあまりの人の多さと歓声に驚いていた。パレードの行進では優に一万を超える人がいるのがわかった。徒歩で歩きながら様々な楽器で美しい色を奏でる者たちに馬に乗って進む者もいる。その中でも一際目立っており、見物人たちが注目しているのが豪華な装飾を施した馬車である。
その二頭の白い馬に引かせた白い馬車の中から手を振っているのが、アリシア・アルブ・オベリニアスであった。
彼女は金髪碧眼であり、女神のような造形をしていた。更にはプロポーションも黄金比であり、まさしく絶世の美女と言えるものであった。
(まぁ、あれだけの美人が笑顔で手を振ったらそりゃこうなるか)
そして、闘覇は念じてカウントダウンを出現させる見てみると残り時間は3時間を切っていた。
(今日の夜にはカウントダウンが0になるな。それからは何が起こってもおかしくないってわけか)
警戒をしながらアリシアを見ていた闘覇はふと疑問に思った。
(にしてもMDCでのアリシアのイメージとは少し違うな)
MDCでは、アリシアは人を寄せ付けない雰囲気を纏っている女性として登場していた。アリシアルートでは心を開き、主人公にはデレデレになるうえに健気に尽くしてくれるのだが、それ以外の相手では何処か壁を作っており、なるべく人を遠ざけるような言動をとっていた。それは人間恐怖症といえるほどであり、それほどまでに他者に対する言葉が辛辣であった。
実際MDCでも、とあるイベントをクリアして彼女が心を開くようになるアリシアルートとハーレムルート以外では主人公にすら心を開かないほどである。
ちなみにMDCのファンからの人気はとても高く、一部では彼女の辛辣な言葉に興奮する者もいたほどであった。
閑話休題。
(やっぱりイメージと違うよな。公衆面前だから取り繕っているのか?でもだったら学園でももう少し愛想良くしているよな)
闘覇はMDCでの彼女と実際に彼女を見た際のズレについて、少し考えたが答えも出ないので闘覇は思考を打ち切る。そしてアリシアを乗せた馬車が見えなくなるところまでいったのを確認しつつ、闘覇はその場を去った。
そこには広い中庭と大きな白い屋敷があった。中庭には大きな噴水と色とりどりの木々や花などが調和を重んじられて配置されていた。ここには周りの住宅も大きなものが多いが、これは一際大きく、小さな白亜の城と言えるものであった。
そこの一室である浴室で水浴びをしている一人の女性がいた。その光景はまるで天女が川で体を洗い流しているようであり、浴室に流れる幻想的な曲も相まって、一つの完成された芸術のようであった。
「アリシア様、移動の手配が整いました。いつでもお申し付けください」
「ええ、わかったわ、ありがとう」
アリシアは従者からの言葉を聞き、sound only と書いてあるボタンを押して流れていた曲を止め、浴室から出た。
その後、従者たちに身支度を整えてもらいながら馬車まで向かう。そこに近づいてくる人たちがいた。
「アリシア様」
先頭の女性がアリシアに声をかける。するとアリシアは花が咲いたような満遍の笑みを浮かべて、その女性に話し掛ける
「アーシャ、来てくれたのね!あなたが一緒なら心強いわ!私のことをお願いするわね」
「はい、お任せください」
アーシャと呼ばれた少女は一度瞼を瞑ると目を開いた。その目には決意の灯火な宿っていた。
「ご安心ください。我が命に変えても、必ず貴方様のことをお守りいたします」
ただいまタイトルやあらすじを試行錯誤中なため
これからもタイトルやあらすじが変わるかもしれません
ご迷惑をお掛けいたします<(_ _)>




