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第一話 「転生勧誘」

 そこは見渡す限り真っ白な空間であった。地平線の向こうまで続き、永遠に続いているのではないかと思わせる。天井はどこにあるわからず、近くにあるようにも天井が無いようにも思える。そんなある種の神秘的な白き空間に一人の男が立っていた


「どこだ此処?」


 その空間に立っている一人の男、神崎闘覇はそう言いながら周囲を見渡していく。


(確か、俺は会社から家に帰ってるところだったよな?)


 闘覇は気がついたら、一面真っ白の見知らぬ場所にいた事に少し驚きつつも、ここにくる前のことを思い出すために記憶を探っていった。






 神崎闘覇は雨の中を傘をささずに走っていた。


(最悪だ、こんなことなら折り畳み傘を持ってくればよかった)


 闘覇は傘を持っていなかったために、会社から家までの帰り道をずぶ濡れになりながら走っていた。


 天気予報では雨は降らないって言っていただろ、と愚痴りながら、水溜まりを踏まないように注意しつつ小走りでアスファルトの道を駆けていく。


 空は暗く、雷の鳴る音により不気味さが増しており、何か不吉な事が起きるのでは無いかと、闘覇は柄にも無い事を考えていた。


 そして、そんな闘覇の不安に呼応するかのようにそれは起こった。


 ゴロゴロゴロ、ドーン


「……ッッ、ガァッ」


 天から落ちた雷が闘覇に直撃したのだった。


 全身を感じたことの無い痛みを感じながら、闘覇は自分が死ぬ事を、自分で驚くほどに素早く冷静に理解することができた。


 激痛に苛まれながら、闘覇は徐々に目の前が真っ暗になっていく感覚を味わっていた。


ああ、そうかここで終わりなのかと、ある種の諦めと共に闘覇は目を閉じた。


 そして、闘覇は意識を失い、その身体は生命活動を停止させた。






 ここで目が覚める前の事を思い出しながら闘覇は呟いた。


「あぁ、そうだ俺は死んだんだった」


(まさか帰っている途中で雷に当たるとは思わなかった。いったいどんな確率だよ。年に数人いるかいないかだろ、日本で雷に当たる人間なんて)


 自身に起こった悲劇について愚痴りながら、自分の身体に目を向ける。よく見てみるとその身体は薄っすらと透けており、まるで怪談などに出てくる幽霊のようであった。


 闘覇も似たような事を思ったのか、幽霊みたいだと呟いた。そして、実際に死んでるんだから本物の幽霊じゃないか、と思いながら苦笑する。


(しっかし何処だ此処?あの世か何かか?)


「やぁ、ここに来るまでのことは思い出せたかな?」


 闘覇がこの場所がどんな所なのか考えを巡らせていると、不意に声を掛けられた。


「おっと、すまない、驚かせてしまったかな?まずは自己紹介だね。僕は、そうだな、君たちで言うところの神様って奴かな?正確に言えば、創造主様から、この百星世界にある星天世界の内の一つの管理を任されてる存在なんだけど、管理してる世界で神様みたいなこともしてるから、神様と言って差し支えないのかな?まぁ、神様みたいな力を持った奴とでも思ってくれればいいよ」


 ペラペラと喋るその存在は一言で表すならば、全身真っ白な人型の何かであった。姿形は普通の人間なのだが、手から足から全てが真っ白であり、顔も彫り込みが感じられる程度であり、さながら白い大理石で作られた等身大の人型の彫刻のようであった。


「あぁそうだ、立ちっぱなしなのもアレだしね。取り敢えず座って話をしないかい?少し長くなりそうだからね」


そういうと、全身真っ白な人型の何かは指をパチンと鳴らした。すると、何も何もない空間に突如として椅子と机が出現した。


「ささ、どうぞ座ってくれ」


(いきなり現れたよな、この白い人。普通に考えたら滅茶苦茶な状況なんだろうけど、一周回って驚かなくなってきたな。自分が今どんな状況に置かれてるのかもよくわからないし、取り敢えずは話しを聞いたほうが良さそうだよな)


「は、はぁ、では失礼して」


座ることを勧められた闘覇は様々なことが立て続けに起こる状況に困惑しながらも椅子に腰をかける。


「さて改めて自己紹介だね。僕は、そうだね、シロ。全身真っ白だからシロと呼んでくれ。仕事としてはさっきも言ったように、百星世界にある百の星天世界の内の一つを管理をしている、どうぞよろしく」


(百星世界?星天世界?よくわからんが目の前にいるのは世界の管理者って事なのか?)


その存在は自らをシロと名乗った。状況が把握できておらず少し混乱している闘覇に向けてシロはさらなる言葉を紡ぐ。


「君に世界を救って欲しい。頼めるかな?神崎闘覇くん」






「つまり、どういうことですか?」


「僕の管理する世界が滅びの危機にさらされているから、異世界転生して世界の危機を救ってきてほしいんだ」


「異世界転生ですか?」


「うんそうだよ、異世界転生」


唐突に、シロと名乗る存在は闘覇に転生を持ちかけた。驚きつつも状況を把握するために頭を回している闘覇を省みる事なく、シロは喋り続けた。


「いきなり過ぎて何が何やら全然わからんって顔してるね。

まぁ、いきなり謎の存在が現れて、転生をして世界の危機を救ってくれなんて言い出したら、そんな反応になるのかな?」


全力を持って状況把握をしようとしている闘覇をみながらシロは説明を続ける


「まぁ、説明を飛ばしすぎたかな。取り敢えず一から説明した方が良さそうだね。そうだね、まず君は何処まで覚えていて、今の状況をどのように認識しているか教えてもらっても良いかな?」


そしてシロは闘覇に現状をどの程度認識しているのかを問いかける。


「確か、会社から家に帰る途中で雷に打たれた所までは覚えています。それと多分ですけどそのせいで自分が死んだということも。そして気づいたらここにいた、くらいですかね。今のところの認識状況としては」


「自分が死ぬまでのことは覚えているわけだね。そうだね、君が言った通り、君は死んだ。本来なら肉体が死んだ時点で君の魂は時間と共に世界に還るはずだったんだけど、そうなる前に僕がこの空間に引っ張ってきたのさ。この空間は特殊でね、ここにいる間は君の魂がこの世界から消えることはないからね。安心して良いよ」


「は、はぁ……」


シロの話を聞きながら闘覇は返事を返す。闘覇としてはこの状況について行けておらず、また魂の話しについても理解が追いついていないため、何がなんやらといった様子であった。


「さっきも言った通り君は死んだわけだ。そこで君の魂を引っ張ってきた。じゃあ、どうして君の魂を引っ張ってきたのかというと、さっき言ったことに繋がるわけだ」


「“世界の危機を救う”ですか」


「そう、その通り」


闘覇の言葉に頷きながらシロは話を進める。


「僕の管理している星天世界が危機的状況でね。このままだと滅びそうなんだよ。死んだ君の魂をここに引っ張てきたのはその危機をどうにかしてほしいからなんだよ」


「なるほど、状況はなんとなくですがわかりました。でも私はただの一般人なんですけど、自分一人が転生したところで世界の危機をどうにか出来るのでしょうか?」


ある程度の状況の整理がついた闘覇は、自分一人が行った所で世界を救うことなどできるのだろうか、と疑問に思い質問をした。


「それについては問題ないよ。転生者には僕から力を与えることができるんだよ。ただ、不都合なことに僕でも与える力が具体的にはどんなものなのかはわからないんだ。力は与える人やその時々によってランダムに変化してしまうからね。強い力なのは確かなんだけど、中にはほとんど使い道がない奴だったり、使い道が限定されてたりするものもあるから一概には言えないけど、君があの世界で十分に通じるだけの力は確実に渡すよ。詳しくは転生を引き受けてもらえないと話すことができないんだけどね」


「わかりました。力を貰えるならどうにかなりそうですね。ところで、世界の危機って具体的にはどんなものでしょうか?魔王が出てきたとかそんな感じのものなのでしょうか?」


「すまないがそれについては答えられない。答えないんじゃなくて答えられないんだ。(ことわり)があるからね。それによって縛られているんだ。言えることといえば、世界の危機は単一ではなく複数あるんだ。それも方向性とかが違っていてね。成功したら即座に世界の破滅に繋がるものから、成功してもある程度猶予はあるけどそれでも洒落にならないものまで色々なんだ。中には一見すると世界の破滅とは何ら関わりが無さそうなものもあるからね。本当は教えてあげたいんだけどそれは出来ないからね。申し訳ないけど頑張って見つけて欲しい」


「では、世界の危機は神様がどうにかして対処したりは出来ないのですか?」


「無理だね。それが出来れば楽なんだけどね。それについても(ことわり)によって縛られているからね。直接の干渉はできない。転生者を送り込んだり、あちらの世界にいる僕の味方になってくれてる人々に神託と言った形で指示を送ったりするみたいな間接的な干渉しかできないんだよ。一応、条件を満たせばあの世界に干渉したり、場合によっては降臨したりする事もできるんだけど、それでも条件が面倒くさい上に制限があるから、基本的には僕はあの世界で出来る事はないと思ってくれた方がいい。君に転生してもらいたいのはそう言った事情もあるからなんだよ」


「転生する世界ってどんな所なのでしょうか?」


「今言えることとしては魔術があって君がいた世界同じくらいには文明が発達していふということくらいかな?」


「さっきからちょこちょこ出てきてる(ことわり)とはいったいどんなものなのでしょうか?」


「創造主様と創造主様の敵が創り出したこの世界のルールのようなものだよ。超越の先、理脱の領域に至った者のみに許される新たなる摂理の創造。僕を含めたあらゆるものがそのルールに縛られている。今の君に言えるのは此処までかな?」


「転生先はどんなものなのでしょうか?また転生先を選べるのでしょうか?」


「それについても転生を引き受けてもらえないと説明できないんだ。ただ君が思っている転生とは少し違うと言っておくよ」


「なるほど、では………」


そして、シロはこの後も闘覇から投げかけられるさまざまな質問に答えていった。そして闘覇が大方の疑問を質問し終えた頃、シロは闘覇に問いかけた。


「さて、大方の質問には答えたと思うけど、転生して貰えそうかな?一応言っておくと、転生も断ることもできるよ」


「転生を断ることもできるのですか?」


「転生はあくまでも自由意志によって行われるからね。それに僕が君に何かを強制できるわけでもない。出来るのは力を与えることだけ。だから極端な話、君が何もしなくても僕は何もできない。だから自発的に世界を救ってくれそうな人を選んでここに招いているんだ。それに転生したからと言って必ずしも幸せになれると決まっているわけでもないんだ。場合によってはここで死んでおいた方が良かったと思えるくらい酷いことになる可能性もないわけではないからね。よく考えてほしいんだ」


シロは神妙な顔をしながら闘覇に返答した。


「えっ、転生する予定の世界ってそんなにヤバい所なのでしょうか?」


「すまない。今の状況でその件について言えることは少ないんだ。言わない(・・・・)ではなく言えない(・・・・)んだよ。ただそこまで酷い世界ではないよ。君がいた地球と似たレベルまで技術発達しているし、魔術があるから一部の分野では追い越してすらいる。あくまでも可能性の話しをしただけたよ。それにある意味では君もよく知っている世界さ」


シロはそう言って話しを続ける


「ただ、やっぱりそういう事にならないと言い切れるわけでもないからね。ましてや世界の危機を救ってほしいと頼むからにはキチンと伝えるべきことは伝えるべきだと思っただけなんだ。不安にさせたのなら謝るよ、ごめん」


そう言ってシロは頭を下げた。


「だ、大丈夫です。私は全く気にしてませんから頭をあげてください」


すると闘覇は慌てて頭を上げるように促した。そして話しを聞いて疑問に思ったことを質問する。


「ちなみに何ですけど、転生を断ったら私はいったいどうなるんですか?」


「別にどうもしないよ、その場合は他の死者と同じようになる。ありとあらゆる生命は死んだら肉体は分解されて大地に還るだろ、魂も似たような感じで世界に還るんだよ。だからキミの魂も世界に還ることになるだろうね。僕は(ことわり)に縛られてるせいで君を甦らせてあげることは出来ないし、天国とか地獄とかはそう言ったものも存在しないしね」


「私が転生を断ったらその世界の問題を神様はどうするつもりですか?」


「その時はまた別の人に転生を頼んで解決してもらえるように頼むしかないかな?転生に勧誘するのも短期間に何度もできることではないし、遅くなるほど時間が無くなって色々と不利になることがあるから君に引き受けて貰えると嬉しいのだけどね」


シロは苦笑いをしながら答えた。そして本題とも言える問いを闘覇に投げかける。


「さて、それでは答えを聞かせてもらってもいいかな?闘覇くん、君は転生をしてもらえるかな?世界の危機を救うために」


シロは闘覇に転生するか否かを問いかけた。




これから毎日投稿していくのでよかったらよろしくお願いします。


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