表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゾンビ禍の最中の安全安心な開会式

作者: HasumiChouji

「あの……このゾンビ禍の最中に、我が国で国際的スポーツ大会を開くのみならず……開会式に観客まで入れるのですか?」

 ぶら下がり取材の記者は、首相にそう質問した。

「我が国で最も高性能なスパコンによる()()()()()()()()の結果、安全に開催する方法を見付ける事に成功したよ」

「で……ですが……」

「観客を入れないとスポンサーがうるさいんでな。仕方有るまい」

「でも……それでは、観客に危険が……」

「どうして、そう思うのかね?」

「競技場の客席数と……開会式の予定時間からして……最低でも1名の観客がゾンビ化する確率は四〇%を超えています。そして、1人でもゾンビ化したが最後……」

「安心して、開会式を待ちたまえ」


 そして、開会式の日……客席では……。

「ぐるっ?」

「ぎゃおっ?」

「ふぎゃっ?」


 人間は極めて小さい確率でゾンビ化する。1人の人間にとっては……ゾンビにならずに一生を終える可能性の方が高いが……万単位の人間が居れば、数時間の内に誰か1人がゾンビ化する可能性は……無視するには大き過ぎる。

 ゾンビは生きた人間を襲う衝動に支配されるが……同じゾンビは襲わない。

 そして、ゾンビによって重傷を負わされた人間は……約八〇%の確率で5分以内にゾンビ化する。

 その「ルール」から導き出された「観客の安全を確保する方法」がこれだった。そして……。


「では……選手入場……えっ?」

 客席を満している万単位のゾンビの群れは、生きた人間である選手達を見付けると雪崩のようにグラウンド目掛けて突進し……そして、客席とグラウンドを遮る強化ガラスをあっさり破壊した。

「お……おい……どうなってる?」

 控室のモニタで、その様子を見ていた首相は、側近を怒鳴り付けた。

「え……ええっと……私に言われても……」

「おい、スパコンの()()()()()()()()では大丈夫だった筈だろ?」

「す……少し待って下さい。シミュレーションをやった学者に聞いて……おい、TVかネットで今の様子を見てるだろ? あれは何だ? どうなってる?」

 首相の側近は……シミュレーションを行なった学者に携帯電話で問い合わせ……そして……。

「おい、例の学者は何と言ってる?」

「『あくまでも自分はゾンビの専門家であって、材料工学の専門家では無い』と……言っています」

「はぁっ?」

「シミュレーションの中での……強化ガラスの強度は……適当に設定したそうです」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ