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【短編】習作・アイデア切り抜き

今日も独りで

作者: 結崎 梟

キーワードなどのご確認をお願いします。

「んぅ……さむい」


 そう体を震わせ目をこすりつつ少女が目を覚ました。

 ボロボロになった崩壊しかけのビルの中、吹きすさぶその潮の香りのする寒風を避けるために端に身を寄せたものの、いつでも動けるようにと自分で切り貼りした寝袋では寒さを防ぎきれずに目を覚ましたのだった。

 少女がしばらく寒さと慢性的な空腹でボーとしていると突然世界がうねった。


「ひゃっ!?」


 思わず驚いて軽く叫んだが、急いで口を覆い音を殺しつつ荷物をつかんで周囲を警戒した。

 寝床を選ぶ際に、寒さや寝心地を犠牲にしてロボットの巡回コースから外れていたのことが功を奏したのか、近寄る気配は何も感じなかった。


「地、震?」


 空いた壁に近寄り、外を見ると海側で何かしらの雲が立ち上っているのが見えた。

 ボロボロのビルが崩れてしまう懸念から、万が一の時の逃走経路として用意しておいた縄を壁から蹴りだして滑り降り、海にほど近い場所にぽつりと建っていたビルから離れて海にそびえる壁の向こうからの津波の危険性がないことを確認しつつほっと一息ついた。

 そして、地震の被害や地震対策で同じように飛び出してくる人はいないかと旧市街地の方に視線を向けた。


 先ほどまでいたビルに負けず劣らずに朽ちた建物の数々、そして……


「誰も……いないな……」


 そう思わず零れる思いを振り切り、遠目ながら人っ子一人見つからない道を見てこれからの行動などに無理やり思いを巡らせた。



 争いなどは戦争含めロボットでの代理ばかりになっていたその時代に突然起きた核の使用、そしてその応酬によって世界全体が摩耗し、そこに付け入るように終末思想の集団によるロボットのシステムの書き換えというテロリズムによって世界は決定的に崩壊した。

 流通の断絶による人口の激減、都市も田舎も治安や労働力の多くをロボットに頼っていたことなどから道を悠々と闊歩するのはロボットばかりへとなった。


 ハッキングされたのは武力行使用のロボットだけだったが、ロボットそのものへの危険視などからその稼働はごく少数派における使用や、破壊・停止する前に人の影が消えうせた場所のみとなっていた。




「……燃えてる?」


 市街地側を眺めていると先ほどの地震で火災が起きたのか、夜の暗闇の中に揺れ動く光があった。


「これは、チャンス?」


 旧市街地であるその場所には赤外線センサーを搭載する警邏ロボットが存在し、ここしばらく侵入の機会を窺っていた少女にとって、これは千載一遇の機会だった。


 急いで寒い中動きやすい服装に着替え、荷物のいくらかをカバンから抜き出し場所を頭に叩き込むと駆けだした。


 前もって目星をつけていた場所へ白い息を切らしつつも、今までのロボットの巡回ルートやイレギュラーを警戒しながら辿り着き、地震による破壊や火災に引き寄せられたのか断念せざるを得なかった原因がいないことを確認した。

 思わず笑みに顔をほころばせながら食料や燃料の調達を開始した。




「おいしーーー!」


 帰り道に浮かれて見つかりそうになったものの、なんとか怪我一つせず大量の食糧などを確保できた少女は、暖をとるためにビルに戻って火をつけて温もりながら保存食にかじりついた。


 カバンだけでなく服にも詰めれるだけ詰めてきて折角だからと、豪勢に2つ腹に収めて人心地ついたことで、少女は日課にしている記録をつけ始めた。


< ■■■■■日目 朝

 今日は地震が起きて寝床が崩れるかと思ったけど、火事が起きたおかげでロボットの移動パターンが変わって食料と燃料が確保できた!まだ保管庫らしきところにはそれなりの量があったから、ロボットを誘導できれば往復して移動させれるかもしれない!方法を考える!

                               字〇 音   >


「日記はこんなもんで良いかな~」


 そう呟きいそいそと身なりを整えて、慣れた手つきでカメラなどを設置して似たような記録を残した。

 それから日記の方にも追加で丸を付け加え、ぺらぺらと見返したあと仕舞い込んだ。


「誰でもいいから、会えないかな…………」


 いつでも動けるように荷物を纏めなおした後、涙をこらえながら少女は丸くなって眠りについた。


 その“誰か”となるもう一人の少女と出会い絆をはぐくむのはまた別の話。

お読みいただきありがとうございます。

拙いものですので様々なご意見ご感想が頂ければ幸いです。

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