第6話 考えるな。感じろ!
ようやく忍術に結びつけることができました。まだまだ先は長い。
空は青かった。
そう、かの有名な宇宙飛行士が言ったとか言わなかったとか。その言葉をもじった俺の言葉である。
あぁ、空は青い。あぁ…気持ち良いなぁ…なんでここは空なんだろう。
そう。ここは空である。正しく言うなら俺は今、空を駆けているのである。もっと正しく言うならば空を駆け落ちているのである。駆け落ち。なんだか背徳的で甘美な響きだよね。
って、いやあああああああああああらめええええええええええええええええ
後頭部を打った日から数日が経った今。まだ風を借りて身軽になる特訓をしているのであった。
いや、結構順調だと思うよ?あれから空を飛べるようになったのだから。というのは嘘であり。一歩目を踏み出した途端、一回転したかと思うとそのまま上空へ舞い上がってしまったのだった。
なぜこうなったし…
いやいや、それよりも先生えええええええ助けてえええええええええええええええええええ
クララ先生ええええええええええええええ
空に俺の精一杯なラブコールが響き渡る。
「やれやれ…子供には興味ないよ。」
そういうとクララは両手を前方に突き出し、魔法を唱える。
フローツ!
青と緑の色が混じった気体がぐるぐるを俺を囲みゆっくりと下降する。助かった…本当に助かった…
ちょっと真面目に涙目になっている。
お昼ご飯を届けに来てくれたアンナも心配そうに俺を見ている…
「…大丈夫であります?」
うん…全然、大丈夫じゃない…めっちゃ怖かった…。けど取り繕った笑顔で大丈夫だよ。とアンナに返す。
涙目だけどね。
そのまま、仰向けに寝転ぶ。何が悪いんだろうか…真面目に集中してるし精霊様の力も上手く混ざり込めているとは思うんだが…
クララはそう簡単には習得できんわ。数年という言葉は本当じゃよ。とは言うが俺を見た顔は優しく慈愛に満ちたような表情だった。
そして少し困ったような顔もしていたがコホンと咳払いを1つして言う。
「魔力とは思いの丈と言ったな。まずは気持ちを表現する事じゃ。どんな風に走るのか、どんな風に飛ぶのか。そう言うイメージも大事なのじゃよ。」
ほう。イメージか。どんな風にか…考えはするがすぐには答えが見つからない。
考えても煮詰まるばかりだしで、ちょうどお昼の時間になったので。まずはアンナの作ってくれた料理を楽しむことにしよう。
今日の昼食はサンドイッチに鳥の揚げ物!唐揚げだ!
アンナの手料理は冗談抜きで美味い。サンドイッチに挟まれているのは王道のタマゴサンドからBLT、きゅうりやトマト、チーズをふんだんに挟み込んだ野菜サンドにハムとチーズのサンドはしっかりと焼かれており中からトロリとチーズが顔を覗かせている。
そういえばアンナはなぜクララのところにいるのだろう。そう不思議に思い聞いてみると、ちょっと色々とあってね。と返されるのだった。
何か聞かれてはいけない、もしくは聞かれたくない事情でもあるのだろう。それ以上、深く突っ込むのは野暮というものだ。
アンナに凄く美味しいと伝えると嬉しそうな顔をするのがまた余計に可愛い。
「あっタケノリ様、お水が無くなっていますね。今、注ぎ足しますから。」
と言い立つアンナだが何か足を引っ掛けてしまったのか前のめりに倒れかかってくる。
それを咄嗟に両手で抱えあげるように支えたところ、黒髪のお下げから、ふわっと良い匂いが漂う。ちょっと甘い果実のような匂いだった。
思わず匂いを嗅いでしまうのだが、あいにく口にはアンナを助ける為にサンドイッチを丸々1つ入れておりフガフガと気持ち悪く鳴き叫ぶ動物のようなモノへと変化してしまっていた。
口の中には美味しい料理、鼻には果実のように甘い匂い。そして、手には幼女体型とはいえ柔らかい感触を感じるのだった。
クララを見るとなんだか笑いを堪えているような顔…。いや、俺の今の状況はおかしいけど少しは助けてくれたって良いだろう…
そして、アンナを起こしてあげる。
「フガフガ?(大丈夫?)」と聞くが多分伝わってはいない気もするが…
アンナは顔を真っ赤にしたまま俯いて頷くだけだった。
昼食を食べ終わり、休憩がてら仰向けになる。耳元ではカチャカチャとアンナが食器を片付ける音が心地よい。
そういえば、こっちに来て久しく音楽を聴いていない。というより充電が切れるのが嫌でなかなか聴けないのである。
充電器はあるがコンセントがないのだ。ビバ、文明社会。
心地よい音のリズムが眠気を誘う。文明社会かぁ…まだこっちに来て一週間も経ってないはずなのだが数年は離れている気がする。
悪友達や両親は心配してくれているだろうか。放任主義な両親ではあるが…とそこから一気に元の世界の事を思い出していた。そういや四元素とかRPGっぽいよなぁ。
RPGかぁ…そういやネトゲにもログイン出来てねーやと据え置き機で出来るMMORPGを思い浮かべる。
はっ?!と飛び上がる。RPGかぁー!なるほどなるほど。答えはすぐ近くに転がっていたのだ。
「先生!魔力って、絶対に手から出さないといけないという決まりとかってあるの?!」
急に起き上がった俺を見て少し驚くが意図を察したのだろう。
「いんや。必ずしもそうとは限らない。ただ、手から出すとイメージした方が分かりやすいだろ?他に何か理由があるならそれでも良いさ。現に杖から、剣から魔力を打ち出す者もいるしね。」
と言いながら食後のお茶を優雅に飲むクララ先生。
そうかいそうかい。ふへへ…ふひ…ふひふひ…
気持ち悪い声を上げている俺をアンナはちょっと心配な顔で見てはいるが、クララ先生はかまへんかまへんという感じで手のひらをひらひらさせている。
イメージは確実に出来た。あれを結ぶ手の形はよく覚えてねぇーが…覚えてる数個の中から勢いで3つの印を手で結ぶ。シュシュシュと音が聞こえてきそうだった。別に印を結ぶ必要はない。ないのだが…こういうのはあれだ。気分なのだ。フィーリングだ。
そして、俺はこう叫ぶのだった。
風遁!
と。