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しょーとしょーと 小説家の中の小説家

作者: waraenai

オリジナルショートショートです。

駄文の塊ですが、三人の登場人物の掛け合いを楽しんでいってください。

「あぁ、楽に小説を書く方法ってのはないもんかねぇ」

 夕焼けで赤く染まる部室の一角で彼は唐突にそんな事を口にする。

 この疑問はこの部室にいる他の二人の男女に対して向けられたものだった。 

 問いを発した男とそれを聞いている二人の男女、彼らは趣味で小説を執筆する集まりだ。この問いは彼らが集まっている主題を考えれば、何でもない普通の質問である。

「あるわっきゃねぇだろ、そんなもん。バカな事言ってねぇで、ほらキリキリプロットでもかきな」

「興味深い質問ですね。一考の価値があります……… さすがトモカズさん、たまには良いことを言うものです………」

 問いをむべもなく切り捨てた男がマモル、言葉を噛み締めるように発した女はヒカル。彼らはトモカズの同級生であり、部活動仲間であり、良き友人だ。

「ほぅ、さっすがヒカルちん。中々良い感性をお持ちのようだ。ほれほれマモルくぅん? クラスの秀才ヒカルちんがこんなに興味を示しているんだぜ、もっとこの話題を掘り下げようぜ?」

「むっ、ヒカル……… また、こんなバカを調子に乗らせるようなことを」

 興味を示したヒカルをダシに使いマモルに迫るトモカズ。マモルは少々抵抗を見せたものの、最後にはヒカルの物をねだるような視線に押され承諾した。渋々とだが。

 考えを思い付いた人から挙手制で発言していこうという次第になる。数瞬もしない内に早速一人手を挙げた。

「じゃあ、この俺から発言させてもらうとしよう」

 この中でも一番の常識人であるマモルからの発言となる。最初は渋っていたのに変なヤツだとトモカズは思った。だがそんな事でこの流れに水をさすような彼ではない。ニヤケ顔で先を促す。

「おぉ、マモル。さっきぐだぐだ言っていたのにワリと乗り気じゃぁねぇか。嬉しいぜ、おりゃぁ」

「………ワクワク」

 表情があまり変わらないように見えるがヒカルも興味津々だった。

「ではトモカズ、俺の考えはな………」

 そここで一拍置くように言葉を切る。二人の期待が否応なく高まる中、満を持して彼は考えを口にした。


「何度も言うがそんなもんはねぇ! あるわきゃぁねぇだろっ!」 


 きっぱりと彼は決定的な一言を口にした。

「前言撤回だっ! テメェっ、全然乗り気じゃぁねぇな!」

「そんなものぁ、無いっ!」

「この期に及んでまだ言うかっ、空気読めよバカっ」

 表情があまり変わらないように見えるがヒカルはとても悲しそうな顔をしていた。余程大きく期待を裏切られたのだろう。その辛さは到底他の人に理解できるものではなかったはずだ。

「ほら見ろっ、ヒカルちんも残念そうにしてるだろ。まるで昼食のお預けをくらった犬の顔だっ!」

「ぬうっ、当たり前の事を言っただけなのにすごく罪悪感があるだと………!」

 たじろぐマモルをトモカズは冷めた目で見る。そこで彼は一つ決意をした。この流れを断つための一つの決意を。

「あぁ、もう俺がお手本ってのを見せてやるよっ。最初からこうすれば良かったんだよっ! 俺が考える楽に小説を書く方法、それは………」

 何かを言いたげにしているマモルを片手で制しながら、彼はお手本を切り出した。

「時間を止めてその間にゆっくりと書くっ! そうすりゃ、いくらサボってもいつか終わるだろっ!」

 彼は一度天を仰ぎ見るかのようにのけぞると、そのまま反動をつけて頭を前に突きだした。


「これぞまさに俺の世界、英語にするとマイ・ワァァァァァァルドだっ!」


「勢いつければ何でもいいわきゃぁねぇぞっ! アホかっ!」

 彼はとても常識では考えられない発言をしている、これは十人に訊けば、十人が肯定をすることだろう。無論この発言を見逃す彼ではなかった。続けて非難をしようとするがそれはトモカズの行動によって

遮られた。

 トモカズは無言で指を一点へと向けている。その指の指し示す先をいぶかしみながらもゆっくりと追っていくマモル。そして彼はその先を見て絶句した。

 ヒカルが笑っている。いつも表情に大きな変化が見られない彼女の顔に、まるでこれを待っていたと言わんばかりの大輪の花が咲いていた。

「ば、バカなっ。これが本当に正しい事だというのか………?」

 信じられないという顔で彼はヒカルの笑顔を見る。だが何度もまばたきしてもその笑顔は消える事はなかった。彼はある種の絶望にその身を苛まれた。

 その様をトモカズは満足気に見る。彼は心の中で「ざまぁねぇな」と呟いた。

「よし、この調子でどんどん続けるかっ、ヒカルちんは何か考えとかある?」

「………一つある」

 自信ありげにヒカルがそう言った。トモカズは机から身を乗り出して、興味津々にそれを

聴きに行く。

 ヒカルは静かに、力強く自分の考えを口にする。

「………トモカズ、あなたの考えには一つ欠点がある……… もし途中で飽きてしまったらどうするつもりなの?」

 至極もっともな疑問をヒカルは口にする。トモカズはそれにぐうの音もでないように黙りこんでしまった。

 そもそもそんな能力が無いという疑問は野暮な疑問だという事だろう。

「………でも私にはそれを解決するプランがある」

 もったいぶるように話を区切る喋り方をする彼女。業をにやし、さらに身を乗り出す彼。それを見て笑みを濃くする彼女。彼の我慢が頂点に達しようかというとき、彼女は続きを口にした。

「………そのプランとは過程を飛ばして、結果だけを掴みとるといいうもの」

 だが彼女の口から出た言葉は少し彼にとって難解なものであった。まるで初めて聞いた詩のような、理解するのに時間をようするものであったのだ。

 彼の理解が追い付いていないことを察したのか、彼女はゆっくりと例えを用いて説明を行う。

「………簡単に言えば『小説を書いた』という過程の時間を飛ばすことで『小説が出来た時』という時間を手にいれる」

 彼女は胸の前で手を組み、どこか遠くを見るようなうっとりとした顔つきになる。

「………書いた本人が気がつかない間に全てが終わる。 ………とても素敵なこと」

「なぁるほどっ! それは良いなっ。最高だっ! そのプランの名前は何て言うんだ?」

「………名づけるならば紅の王の加護を受けた計画だから、………紅王計画」

 紅王計画。それがこの大それたプランのタイトルであった。彼はこの計画が持つ、独特な魅力に惹かれたのか、無意識の内に言葉を反芻する。


「紅王計画……… 英語にするとクリムゾンキっ………」


「………それ以上はダメっ!」

 英語でその名を呼ぼうとした彼の言葉を、ヒカルは鬼気迫る勢いで遮った。突如豹変した彼女に面をくらい

、言葉を飲み込むトモカズ。

 彼は彼女の変化が気になったものの、その表情からとてつもなく深いものを感じとったためそれ以上の追求をするのはやめておくことにした。

 後から聴いた話であったが、あの話題をあのまま続けていれば別の世界線に影響がでるのだという。彼には到底理解できないことであった。しかし強大な存在だけは感じとることはできたのであった。

 

 次に手を挙げたのは、驚くべき事にマモルであった。トモカズは彼の顔を疑わしげにじっと見つめる。彼にはある種の前科がある。疑ってかかって当然の事であった。

「そんな視線で俺を見るなよ、もう………吹っ切れたんだ。だから………俺は全力でお前らのお遊戯に付き合ってやるよ」

 彼の顔はとても清々しいものだった。この世の全てのしがらみから解放された顔のような―――素晴らしい笑顔であった。

「うっ、そうか。楽しみにさせてもらうよ。ほ、ほら言ってみろよ」

 トモカズですら引き気味になるぐらいには、純粋な笑みであった。

 さて、トモカズのゴーサインも出たとあって、マモルは楽しそうに喋りだした。

「俺が考えた方法ってのは、『平行世界の小説を書いているかもしれない自分』を呼び出し、そいつらに手伝わせるって感じのだ」

「………マモルにしてはなかなかの発想。六十点ぐらいはあげても良い」

 どんな爆弾発言が飛び出すかと身構えていたトモカズであったが存外普通の意見が出て来た。ヒカルの反応も好感触なものである。

 素直に関心をしていた二人であったが、そんな二人の前で彼は人差し指を左右に振る。まるでまだまだお楽しみはこれからだというかのように。

「何だよ、まだ何かあるのか?」

「あぁ、まだあるさ。………お前らまだこれの名前を聴いてないだろ? 評価をつけるならそっちを聴いてからにして欲しいもんだな」

「………じゃあもったいぶらずに早く言って」

 待たされることに業をにやしたのか、ヒカルは机から身を乗り出す。奇しくもこれはさっきの彼女とトモカズの構図と同じであった。

 マモルはそれの見て満足気に頷くと、その名を口にした。


「平行世界から大量の小説を書いていたかもしれない可能性を持った自分を全て呼び出すこの技、その名もアイン・ソフ・オウルっ!」


「中二こじらしてんじゃぁねぇぇぇぇぇぇぇ!

 トモカズは絶叫した。腹の底から叫んだ。心の底からのシャウトであった。それほどに彼の心は烈火のように猛り、狂っていた。

「何だとてめぇ! 誰が中二病だっ、誰が。てめぇらに合わせてやっただけだろうがっ!」

「おめぇの事だよっ! 極端すぎるわ、このアホがっ! 誰得なんだよ、コレっ!」

「誰得だって………? ヒカルに訊いてみれば良いんじゃないか………?」

 さっきまでトモカズと同レベルで騒いでいたマモルの雰囲気が突然変わる。まるで嵐の海が風が凪いだ海に変わるかのような変化であった。

 そして急変の意味を彼は唐突に理解する。ヒカルの様子によって。


「………ブラボー 百点満点獲得」


 そう彼の変化は大きな自信の現れであったのだ。それはヒカルの恍惚とした表情から証明されたのだ。

 トモカズは言葉を出すことも出来ない。彼は敗北したのだ、中二病とバカにしたマモルに。

 マモルは静かに笑い続ける、ヒカルはどこかへ思いを馳せ続ける。

 

 時間だけが―――ただ過ぎ去っていった。


 トモカズが調子を取り戻した後も、三人でこの話題に花を咲かせた。

 生体時間を加速させ、自分の動きを早める固有の結界がどうだとか、未来の自分の原稿をコピーするなど、派手なものから、下らないものまで様々な意見が飛び出した。

 時刻は帰宅するにはちょうど良い時間となっている。三人はそろそろ話を切り上げる事にした。

「さぁって、帰ったら真面目に小説書くとしますかねぇ。使えそうなネタもいっぱい拾えたわけだし」

「お前、さっきまで楽して書きたいとか言ってが結局真面目に書くのか………」

 マモルは呆れ顔で、さっきまで共に与太話を語り合っていた友人を見る。彼の発言が下らないことを言っていた人物と同一の人間から発されたものだとはにわかに信じがたかったのである。

 その疑惑の視線に対して、トモカズは自分の小説に対する思いを言葉にすることによって応えた。

「確かに俺は、楽して小説を書きたいと思っているさ。マモルやヒカルちんが考えたような方法が実際にあったらやってみたいと思う。だけどそう思う自分がいる傍らで、こう思う自分もいるんだ。『苦労して書いた小説にこそ作者の思いはやどるんじゃぁないか』ってね」

 マモルは、ヒカルは静かに彼の言葉を聴いている。彼はそれを嬉しく思いつつ、言葉を紡いだ。

「だから過程にこそ意味があり、様々な苦難を自分一人で乗り越える事に意味があるってさ。だから俺は面白い小説を書くために苦労するんだ、そう思うことが俺の小説を楽に書く方法なんだって思ってる」

 最後まで彼は考えを口にした。一度も言い淀む事もなくきっぱりと言いきった。しかし、言い終えると恥ずかしくなってきたのか鼻頭をぽりぽりとかく。顔も真っ赤だ。

 それを見て、マモルは小バカにするように笑い、ヒカルは慈しむように微笑んだ。

 ここはとても温かい場所だ、包み込んでくれる優しさがここにはある。

 

 彼らが笑いあっていると、部室の戸が開いた。一人の男が入ってくる。

「アキラじゃぁねぇか。遅かったな、もうこんな時間だぜ?」

 トモカズがいち早く部室に入ってきた男の名を呼んだ。名前を呼ばれたのはトモカズ達と同じ部員であるアキラである。この四人でこの部活の全メンバーだった。

「ごめん、先生に頼まれ事されちゃって………」

 ばつが悪そうにアキラは答える。トモカズはそれに「そうか」と短く返すと、アキラにも楽に小説を書く方法を訊いてみることにした。順を追って、今日話題にのぼった数々の方法等をアキラに説明する。

 突然の事に少し驚いた顔をするが、流石にここの部員である。立派な適応性を持って、この質問の解を答えた。

 彼は目の前に原稿用紙とペンを用意した。どうやら実演をしてくれるらしい。彼らの期待は大きく膨らんでいく。

「じゃあ、良く見ててね………?」

 彼らは集中力を総動員して、彼の手元を注視した。しかし一向に変化は訪れない。

 苛立ちが最高点に達しようとした時、事態は大きく動いた。

「な、何もしてないのに文字が書いてあるだと………!」

「………!」

 驚くべき事に、一度も手を動かしていないアキラの原稿用紙に文章が書かれていたのだ。びっしりと。

 驚きのあまり震えているヒカル。彼女は何かに気づいたのか、おずおずと腕時計を見た。彼女の顔が半信半疑のそれから確信のそれへと変わる。

「………やっぱり時間が飛んでいる? 紅の王、帝王の力………!」

「そ、それは確か………!」

「そんなのアリかよ、ヒカルちん!」

 その呟きでマモルとトモカズは驚愕の表情でアキラを見た。あり得ないことに彼は………


「紅帝っ! 時間を吹っ飛ばすっ!」


 アキラの叫びが部室にこだまする。

 事実は小説よりも奇なり。世の中は学生の想像を越える事がままあるらしい。このように。



 

推敲/zeroなので、見苦しい表現が多々あったと思います。

さらには文章力や構成力も皆無なのですいません………

次回もショートショートを書いていきたいと思ってますっ!

次も読んでくださると嬉しいです。

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