俺と平和なエピローグ
「……」
俺はエアガンの引き金を引くことなく、すっとカバンに戻す。俺の名前は犬神鷲人。小さい頃から動物を撃って遊んでいたら、気づけば大学生になっていた愚か者。この日も深夜の公園で野良猫を撃って遊ぼうとしていたのだが、まさにとどめを刺そうとした瞬間、突然頭の中に経験したことのないはずの思い出が流れ始める。その思い出に浸っているうちに、馬鹿らしくなった。俺は今まで何をやっていたのだろう。俺はエアガンの代わりに、カバンから何故か持っていたちょーるを取り出す。
『ナーオ』
所詮は畜生、さっきまで銃を向けていたというのに、餌を差し出されただけで信用してしまうらしい。差し出したそれをもしゃもしゃと食べ始める猫を見ながら、ほっこり癒される。ああ、俺にもそういう感情はちゃんとあったんだな。うん、もうこんなことは辞めよう。密かに決意を固めていると、猫の首に目立たなかったが、小さい首輪があることに気づく。野良猫だと思っていたが、飼い猫だったらしい。撃たなくてよかった。
「あ、いたいた!」
猫を撫でていると、遠くから人の声がする。振り向くと、公園の入り口には俺と同年代と見られる女性が立っていた。恐らくは飼い主だろう。こっちに駆け寄ってくると、猫をひょいと抱き上げる。
「もー、また逃げ出して……すみません、迷惑かけて」
「あはは、いいですよ。可愛い猫ですね。今ちらっと見ましたけど、オスですか?」
「そうなんですよ、珍しいですよね、三毛猫のオス。名前は味噌汁って言うんですけど。猫詳しいんですか?」
「それなりにはね。君、大学生? 俺あっちの大学に通ってるんだけど」
「あ、私もです! 同じ大学だったんですね!」
そのまま俺と飼い主は意気投合し、猫について色々話をする。今まで虐める対象でしかなかった俺の知識は微妙に偏っているという悲しみに暮れた俺は、勇気を出して連絡先を聞いてみて、無事に交換する。
「それじゃあ私は帰りますね! また大学で!」
猫を抱きながら去っていく彼女を見送る。彼女となら俺はやり直せるかもな、なんて勝手な妄想をしながら、俺も帰路につくのだった。




