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電車
満員電車の、吐息に白く曇る窓ガラス。
空のキャンバスは茜色に染まり、薄紫色が混ざり合って溶け合う。
イヤホン付けた若者たちの脳にはどんな音が響いているのだろう。
時速百キロで走る鉄の箱の中で、静止した僕たちの体。
一日の終わり 、夜の始まり。
人々は家路につく。
人の溢れる都会の駅で、電車から吐き出される疲れた顔の人々。誰もいなくなった車両。他人の温もりの残る座席。
真っ黒の空と明かりが灯る街。
月光に揺れるみなも。
喧騒から解放された僕の、窓に映った痩せた顔。
誰もいない終点。
人々が吐き捨てたガムで出来上がったプラットホーム。
僕なそれを踏みしめて、一人家路につく。