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理不尽な7

少し早足で、志帆の隣を歩く。

志帆が僕の方に少し寄ってくる。

肩と肩、手と手が触れる。

志帆が一瞬歩くのを止めて、僕の足を蹴る。

僕は前に倒れて、顔を地面にぶつける。

志帆が僕の上に乗る……


「…おい、途中からおかしくないか?」

「おかしくなんてないわ、あなたが私に触るからいけないんじゃない」

「いや、それは志帆が僕の方に寄ってきたから…」

「あなたが悪いのよ、そうでしょう?」

…なんて理不尽なのだろう…


「そもそも、私とイチャイチャしようなんて10年早いのよ」

「別に、イチャイチャしようとしたわけではないのだけど…」

「じゃあ、なんでいきなり隣とか言いだしたのかしら?

 私は、後ろを歩けと言ったはずよ」

このままでは負けてしまう。たまには志帆に口喧嘩で勝ちたい。


「じゃあ、10年たったらイチャイチャしてくれるの?」

志穂はきっとこのあと、『セクハラだわ』などというであろう。

そしたら僕は、本当にセクハラの一つでもしてやろう。

きっと、志帆は慌てるはずだ。

未だかつて、志帆が慌てたり動揺したところは見たことがない。

その冷静さは志帆の良いところでもある。

だからこそ、志帆の慌てる姿が見たいのだ


しかし、そんな僕の考えとは裏腹に、志帆は

「…キモッ…!翼くんキモッ…!」

と、冷たい目を向けてきた。

なので、さすがの僕も黙る他になかった。

これは、冷静というより冷血である。


だが、ふと考えてみれば、僕は志帆に現在乗られているのだ。

横から見ると、僕と志帆が逆T字になっている。

勝てるわけがない、僕は物理的に負けているのだ。


気が付けば、目の前には3人がいた。

「翼くん~?乗られてる~です~?」

「大丈夫っすか?」

確かに乗られているが、正直さっきの鈴差の一撃の方が、よっぽど痛かった。

と言ったら、きっとまた、怒られるだろうから、言わないでおこう。


しかし、その鈴紗は、

「私も翼くんに乗ってもいいですか?」

と言い出していた。

というか、もう乗っていた。


さすがに2人分の体重がかかると、

さっきの腰の痛みが、トラウマのように蘇ってきた。

「あ、ちょっと勘弁」

「情けないわね、翼くん、この程度で根を上げるなんて、えいっえいっ」

そう言って志帆は、僕の腰をぐりぐりと蹴る。

「私も蹴ります、えいっえいっ」

鈴紗はつま先でガンガンと蹴る。


ああ、痛い、とても痛い。

「ちょっと待って、痛い」そう言って僕は、腰をぐいっと右にひねる。

すると、バランスを崩したふたりは、結果的に僕の上から降りた形になった。


瑠璃がタイミングを見計らったかのように、

「じゃあ、主くんに~?ついていくです~?」

と言って、主を押してから、歩き出した。

瑠璃に押された主は同じように歩きだし、僕も続いて歩き出すことにした。

今度は志帆も呼び止めず、僕の後ろから早足で歩いてきた。

…………。


僕が歩き出して、しばらく経つと、

翼の半径2メートルぐらいの範囲に、4人が集まった。

歩く速さは、僕を基準にしたとき、主は同じくらいの速さで歩く。

志帆と鈴紗は割と早いが、璃流は大分遅い。

それは璃流の背が低く、歩幅が小さいからなのだろう。

しかし、その璃流もペンギンのように歩数を増やし、歩いている。


主は歩くのが早いが、お城に来るまでは、僕を支えていたため、

普段よりも歩くのがゆっくりになっていたのだろう。

事実、瑠璃もさっきは、小さな歩幅で普通に歩いていた。


すると突然、主が話し始めた。

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