レベル1の6
「翼くんほんとに瀕死だねー」と神様
見るとメニューバーにの左上には、
1割も残っていない体力ゲージが光っていた。
主が慌てて、ワイン瓶を取り出し、
「翼さん、回復薬を早く使うっす」
と言って、僕に書けるような仕草をした。
すると今度は、中の液体がしっかりとこぼれて、僕の腰のあたりを濡らした。
一瞬、緑色に濡れた僕のシャツからは、煙のようなものが出て、
すぐに元の色に戻った。
そして、僕の腰の痛みはみるみる間に薄れて、
メニューバーも緑色になった。
するとさっきまで見えていなかったものも見えてきた。
それは、僕のステータスだ。
しかし、それはステータスと呼ぶには余りにもひどいものだった。
体力ゲージがあるだけで、体力の最大値がいくつなのかも、
攻撃力や防御力にあたるものもどこにもなかった。
「このステータス、スッカスカなんだが…」
「私もよ」
「私もです」
「瑠璃もです~?」
レベルも『1』と表示されている。
一方、主の頭の上に出ているステータスを見てみると、
そこには、レベル1と書いてあった。
「悪いが、主、ステータスを見せてくれないか?」
「いいっすよ」
主が手をパッとスライドすると、僕の前に主のステータス画面が現れた。
しかし、そのステータスも、僕とレベル以外は変わりがなく、
違うところと言ったら、紫色のゲージが、
体力ゲージの下にあることぐらいだった。
おそらく魔力ゲージといったところだろう。
「実は僕もまだゲームの中には、来たばっかりで、よくわかってないっす
気が付けばレベル1に戻って、ステータスも消えてたっす
でも、ゲームの中に入るのは、割と憧れのシチュエーションだったっす」
主が照れくさそうに、頭をこする。
しかし、志帆はそれに食ってかかる。
「じゃあ、主くんは、役立たずってことね」
すると主は言葉が詰まったように、
「はあ…、そうっすね」
と言った。
突然が神様口を開いた。
「それじゃあ、何もわからない君たちに、神様からのヒントだー。
まずは、この街の隅っこにある、転職の神殿に行くといいよ。
それぞれ、好きな職業になれるはずだから。
それから、主くんも、元の『騎士』じゃなくなってるからね。
転職しなおすといいよ。
主くんが知ってるこのゲームとはシステムがだいぶ変わってるから注意してね。
あくまでここはゲームを基盤としてるだけだから、ゲームそのものじゃないよ。
でも、ゲームがアップデートされると、こっちもアップデートされるから、
楽しみにしていてねー」
…というわけで、僕たちは転職の神殿に行くことにした。
お城から出ると主は、
「マップがゲームと同じなら、転職の館はこっちっす」
と言って、歩き出した。
すると鈴紗が、言った。
「主くんについていくしかなさそうなので、ついていくことにしましょう」
「です~?」
瑠璃も主の後を歩いて行ったので、僕も付いていこうと動き出したが、
志帆が突然、
「待ちなさい」と言った。
志帆の声に反応して僕が振り向くと、志帆は、
「翼くんは私の後ろを歩きなさい」
そして、僕の前にスタスタと歩く。
「なんでだよ?」
僕が聞くと、志帆は歩く速さを落とした。
「……なんだか侮辱された気分なのよ、他人に案内されるのって」
「…でも、それは主でしょ?僕には関係なくない?」
「関係あるわよ」
と言い、少し間を空けて、
「……翼くんが後ろにいると安心するの」
と小声で言った。
僕は志帆の『デレ』を久々に見た気がした。
なので、少し照れるが、照れてないように装うため、
「隣じゃダメなの?」と聞いた。
すると「…別にいいわよ」という返事が返ってきた。
しかし、少し冷静に考えると、『隣じゃダメなの?』は
照れ隠しにならない気もしたが、
言ってしまった以上は仕方がない。
少し恥ずかしいが、僕は志帆の横に立って歩き出した。
僕は書いていて楽しいのですが、
読んでる人は不快
なんてことにならないように、
これから頑張っていきたいです。