神様さんの5
階段を上った僕たちの目に入ってきたのは、
玉座と、それに座っていた人だった。
それはうろ覚えだが、昨日会った神様に違いなかった。
「…どうでもいいのだけれども、こういうところにいるのって、
普通は王様とかじゃないのかしら」
「王冠~?かぶってないです~?」
確かにこういうお城にいるのは王様のような気もするが、
目の前にいるのが神様だとしたところで、なんら不都合はない。
むしろ神様なら、腰も一瞬でなおしてくれそうだ。
「よく来たね、翼くん御一行さん」
「翼くんと一括りにしないで欲しいわ」
志帆が神様が喋り終わるとほぼ同時に言った。
…こういう時の志帆の反応の良さは素晴らしい。
まるで、僕をいじめるために生まれてきたみたいだ。
「…でも、その翼くんが瀕死なのは神様もびっくりだよ」
「すっすいまっせ…!ごふっ!!」
「…もう喋らなくていいよ、しばらく神様が一方的に説明するから」
すると突然、鈴紗が、
「どうでもいいんですけど、神様って一人称が『神様』なんですね」
…本当にどうでもいい
「本当にどうでもいいね」
神様も僕と同じことを考えていたようだ。
「そういえば、主くんはここに来るの、初めてじゃないよね?」
「はい、ついさっきも来たっす」
「なんでまた来たの?」
「翼さんに回復薬をあげようとしたっすけど、プレイヤー登録が、
まだだったみたいだったので、登録が終わったら回復薬をあげようと思って
ついてきたっす」
「ああ、そうなの」
そして、神様は「こほん」と軽く咳払いしてから、口を開いた。
「それじゃあ、説明を始めようか。
…まず、ここは現実のとあるゲームを基盤に作られた異世界なんだ。
作られたというよりは、神様が作ったんだけどね。
それで、なんで君たちがここにいるかというと、
なんというか、こう…、なんとなくとしか言いようがないね」
「まって、私たちはなんとなくでこんなところにいるの?」
「うん、なんとなくがいやなら、運命ってことでもいいよ」
「わ~?神様てきと~です~?」
運命…、なんだか心が躍る単語だ。
「正確に言うと、人数合わせなんだけどね…
それで、君たちにはこれからプレイヤー登録して、
このゲームに参加して欲しいんだ。
ちなみに、ここにいる主くんはこのゲームの元プレイヤーだから、
わからないことがあったら彼に聞いてね。
まあ、彼もゲームの中には来たばっかりだけど。
じゃあ、とりあえず、プレイヤー登録してしまおう」
そう言って神様は、玉座の後ろに手を回し、
銀色のタブレット端末のようなものを取り出した。
「逃惑翼、追方志帆、正側鈴紗、流碧璃流…っと」
神様は人差し指で、画面をいじり、
「うん、プレーヤー登録完了だー」
と言った。
その瞬間、視界の端に、赤い半透明のメニューバーのようなものが現れた。
僕はオンラインゲームと呼ばれるものをやったことはないのだが、
携帯ゲームなら、少しだけやったことがある。
なので、メニューバーの大体の使い方はわかる。
それはほかの三人も同じようだった。
「なんだか、緑色のメニューがでてきたわ。」
「視界の隅が緑色です」
「翼くんだけ~?赤色です~?」
よく見れば僕のメニューバーはピコピコと点滅していた。