異世界の2
学校から僕の家までは、距離的には、そこまで遠くないのだが、
急な登り道なので、時間は少しかかる。
そんな帰り道の途中で、光るものを発見した。
「これは…?」
光るといっても、ピカーンという感じではなく、
光がにじみ出ているような感じの物
「石…?」
石でできた5円玉のようなそれは、
僕の手からパチンとはじけて、飛んで行った。
「えっ?」
五円玉のようなものは、光を強め、人になった。
人のようなものになった。
人型になった。
そして、その人は手を横に広げ言った。
「はい、神様です」
「…?」
「あれ?反応が鈍いね」
「…神様?」
「そう、神様だよーなんでもできる万能の神ー」
意味がわからない…、神様と言われても…
「本当なら、願いを叶えると言いたいところだけど、
そうもいかなくってねー
…翼くんは、ゲームとか好き?」
なぜ僕の名前を知っているのか…、…神様だからということでいいか。
「まあ、ゲームは嫌いじゃないです」
「じゃあ、決定でいいね」
「えっと…、あの…?」
本当に一瞬のことだった。
あっという間に現れて、あっという間に消えて行った。
残された僕は訳も分からず、立ちつくしかない。
…意味がわからない
…全く理解できない
しかし、家に帰っても、変わった様子はなく。
なにか特別な事が起きるわけでもなく、いつもどおりに一日が終わった。
そして、朝になる。
僕はゲームの中にいた。
正確に言うと、僕たちはゲームの中らしきところにいた。
周りにはどこかで見たような、アニメチックな風景が広がっていて、
前を見ると見慣れた顔があった。例のツンデレ嬢だ。
「翼くん、ここは一体どこよ」
「ごめん、志帆、僕にもわかんない」
「役立たずね」
「志帆だって、ここがどこかわかんないだろ?」
「私はいいのよ、私は」
…そう言われても、僕にだって、ここがどこかなんてわからない。
でも、思い当たることならある。
昨日の神様だ。いや、本当に神様なのかはわからないが、
神様との話から察するに、ここはゲームの中なのだろう。
「もしかして、ここってゲームの中かな」
「まあ、それっぽいわね、少なくとも私たちの世界じゃないわね」
「そうだね」
「ちなみにだけど、あなたの後ろにいるのは、もしかして…」
と、志帆が言いかけたところで、
「わあ~!」
と、瑠璃が後ろから飛び出してきた。
これはきっと驚いてあげるべきだと思ったので、
「わー」
と言ったのだが、いささか棒読みになってしまった。
璃流は手を腰の近くでパタパタさせて、
「ぜんぜん~、おどろいてない~です~!」
「驚いてるよー、びっくりした」
「ほんとにびっくり~したです~?」
「うんうん、びっくりしたした」
「じゃあ成功~です~?」
とりあえず、よかった。
璃流は一度すねると、しばらくの間、機嫌が治らない。
それは少し前に、僕が身を持って知ったことだった。
瑠璃は、くるりと回って、ツインテールをなびかせると、
「そういえば~、鈴紗は一緒じゃな~いです~?」
と話を転換させた。
「あら、瑠璃と一緒じゃなくて?私たちは知らないわ」
「僕も見てま…」
僕も見てませんと言いかけたところで、体に激痛が走った。
少し遅れて、『ガクッ』という鈍い音。
「うぐっ!?」
「鈴紗が翼くんの上~に落ちてきた~です~?」
「痛そうね」
突然のことに僕は驚き、同時に襲ってきた痛みに呻いた。
「い、痛い…」
しかし、鈴紗は何事もなかったかのように立ち上がり
「…ここはどこですか?」
と言った。
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