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「あの、神上さん。お時間大丈夫でしょうか?」
「ん? 熾滝か。問題ないぞ。あと、敬語は要らないと言っただろう?」
声を出したのは南条熾滝、その後ろに三名の男女がいる。零斗は何となくだが目的を理解し、女子がそっち系で無いことを祈りつつ、返事をした。
「それでなんの用だ? まあ目的なんて無くても構わないが」
「その……、神上達と友達になりたいなって」
「酷いな。さっき自己紹介したのに、友達じゃ無いなんて」
冗談と本気を半分半分で笑いながら零斗が言うと、熾滝は少し困ったような、微妙な笑顔を造りながら、答えた。
「はは……、僕じゃなくてこいつらだよ」
すると後ろにいた三名――男子二名、女子一名――が前に出てきた。
「西園寺雫です。よろしくね」
小柄で、可愛いという言葉が似合う女子。
「東駿一郎といいます」
細身で、優しそうな顔をした男子。
「北潟大地という。よろしくたのむ」
太くは無いが、どこか逞しい男子。
三人の名前を聞いて、零斗達はどうでもいいことに気がついた。東西南北だ、と。しかしやはり深い意味は無く、ただの偶然だと思ったので、零斗や龍華は口に出さなかった。メグはそもそも気づいていない。
「よろしくな」
「よろしくおねがいします」「よろしくね」
零斗、続いて龍華とメグが返事をする。大地の顔が心なしか赤いが、むしろ予想通りなので零斗は気にしない。というより、冷静な駿太郎がイレギュラーなのだ。
「それじゃあ、駅まで一緒に行くか。
そういえば気になったんだけどさ、熾滝と大地は何となくわかるんだけど、お前らはなんで俺に話しかけたんだ? 平民同士で群れれば良いだろうし、貴族と仲良くなりたかったら他にも沢山いただろう?」
「えっと、それは……」
「い、いやあ、その……」
零斗の質問で熾滝と大地がキョドるが、駿一郎と雫が冷静に答える。
「他の貴族階級が出している、傲慢なまでの自信が少なかったからですかね」
むしろ自信なんてゼロだぜ。と零斗は心の中で呟くが、当然誰にも聞こえない。
「優しそうだったからかな、私は」
それを聞き龍華が、そうです、神上さんは優しいんです。とか言っているが、それは境遇故に(心境の問題で)、自分より実力が上の奴隷に冷たく当たることができなかった為であり、零斗に自覚は無い。そういった意味では、他の貴族よりも実力主義であると言える。
その後は階級も考えず仲良く他愛もない会話をし、駅にたどり着いた。
「じゃあ、また明日」
そう言って別れた。