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静かな森の奥にある湖。

日の光が反射して、水面が輝いている。

湖のほとりにいる小鳥は

ささやくように鳴き、朝が来たことを告げた。

その湖の隣。そこに、大きな邸があった。

西洋風の建物で、邸から少し離れたところにある

門柱には「ミシェル」と書いてあった。

邸の二階にある部屋の、一つ。

その部屋のドアには、リラーシュと英語で書いてあった。

そこに向かう、一人の男。

黒色の燕尾服を着ている。

右手には銀色のトレイ、その上には

湯気が立った紅茶がのっていた。

男は部屋の前につくと、左手でドアをノックする。

乾いた音がした。

そして、ドアノブに手をかけ

ドアを開け、部屋の中へと入る。

部屋は広く、ほとんどの物がピンク色だった。

その隅にある、大きなベッド。

上から白いレースのカーテンがかかっている。

男はベッドに近づくと、その横にある

小さなテーブルにトレイを置いた。

そして声をかける。

「お嬢様。起きて下さい」

レースのカーテンの向こうで、何かが動く気配があった。

しばらくした後、ベッドに寝ている人物が

起き上がる様子が、カーテン越しに見られた。

そして、カーテンが開けられる。

男はにっこりと微笑む。

「おはようございます。リラお嬢様」

「・・・おはようセファル」

ベッドに座っている少女は、眠そうに目を擦って言った。

「今日の紅茶はアールグレイにしてみました」

「そう。いい香りね」

少女は小さなあくびを一つすると

ベッドから降りた。

「それでは、お着替えが終わったらいつものように食堂ダイニングルームへ」

そして、指をパチンとならす。

すると男の後ろから、メイド達が4人ほど

現れ、部屋の中へ入っていった。

男は右手を左胸にあて、左腕を後ろに回して

軽く頭を下げた。

そして、静かにドアを開けると

部屋から出て行った。



ミシェル家。世界でも有名なデザート専門店。

ミシェル家の主人、マルスは

妻と二人で、数年前にデザート専門店を創り上げた。

最初は小ぢんまりとした店だったが

日に日に人気が出て、店の前には行列が出来るようになり

あっという間にミシェルのデザートは

ブランド物になり、店舗を増やしていった。

マルスの元には、たくさんの金が入ってきた。

そして、マルスは「ミシェル」の社長となった。


その娘、リラーシュ。

年は十五歳くらいで、髪の色は金髪。

毛先にはゆるいカールがかかり

顔は小さく、まさに人形のようだった。

周りには、「リラ」と呼ばれている。

本人もそれを気に入っていて

たまに手紙の返事に、「Dear リラ」と書くこともあった。

「リラお嬢様は、今日も綺麗でお美しいですわ」

「本当、羨ましい限りでございます」

メイド達は、笑顔でリラに話しかける。

「ありがとう」

リラは笑顔で言うと、鏡で自分の姿を

確認してから、部屋から出て行った。



リラの部屋から出た男は、廊下の花に水をあげていた。

セファルと言う名のこの男は

ミシェル家の執事だった。

リラが小さい頃から、周りの世話をしているので

リラにも気に入られている。

少々くせっ毛気味のその髪型が、窓から入った

そよ風に揺られる。

セファルは風を気持ちよく感じながら

水遣みずやりを終えた。

そろそろリラお嬢様が、お着替えを終えて

食堂へ向かっている途中だろうか――。

そんなことを考えながら、セファルは

食堂へと向かって歩いていった。



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