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日本、異世界転生禄  作者: 安眠丸
第一章 乳児編
7/7

サトリ


 天井に立つ彼女は、サルのお面を斜めに掛けている。

 ニホンザルの顔のように真っ赤なお面が、少女の白髪によく目立つ。

 

(コイツはいったい………)


「コイツなんてひどいなぁ。僕はサトリ。ミコトのお姉さんだ。サトリお姉ちゃんって呼んでいいよ」


 心を読んでいるかのような言葉に驚き、それ以上にその名前に驚いた。

 彼女の名乗った名は、俺でも知っている。

 サトリ、おそらく漢字で書けば(サトリ)

 山に住む、人の心を読む妖怪の名。

 つまり、この少女は心を読む妖怪・サトリである可能性が――――――


(いやいや、ナイナイ。それだけはない。この子が妖怪だなんて)


「なに言っているのさ。僕は妖怪だよ」


(いやいやいや、それじゃあ俺が妖怪の兄弟ということになってしまうじゃないか)


「だから、ミコトは妖怪の兄弟だって言ってるじゃん」


(え?)

 

「僕とミコトは腹違いの姉弟(きょうだい)なんだ。

 少なくとも、僕が妖怪であることをミコトは否定できないよね。

 こうして、僕がミコトと会話している時点でね。

 それに、ミコトだって分かるだろう?僕が嘘をついていないことくらい」


 確かに、言われてみればサトリが嘘をついている感じはしない。

 どうしてわかるのかと聞かれたら答えに詰まるが、サトリは本当のことを話している気が―――――

 ――――いやいや、ありえないアリエナイ。

 出生の秘密ってこんなにあっさりと教えられるもんなの?

 もうちょっと俺が成長してから、実は……って感じに打ち明けられるもんじゃないの?

 軽すぎるでしょう。

 マジ軽すぎるでしょう!

 ある日、少女が家に来て「君は妖怪(ぼく)の兄弟なんだ」ってなんなの?

 いったいどういうことなの!?

 説明してよ!

 一切合財、説明してくれよ!!


     ~30分後~


 え~、説明してもらいました。

 どうやらサトリの父親(以降、父)は妖怪の王様みたいなもので、俺の母は人間で父の愛人、サトリの母は妖怪で父の側室なのだそうだ。

 だから俺は半人半妖、サトリは妖怪・(サトリ)として生まれたのだという。

 そのため、俺は人が嘘を言っているかどうかが分かり、サトリは人の心が読めるのだそうだ。

 ちなみに、俺の周りではしゃいでいる妖怪はサトリの部下で付喪神というらしい。


(マジか……)


「ふっふん、やっと理解できたか」


 サトリがエッヘンといった感じに小さな胸を張る。


(……いやいや、あの気に食わない村長は俺の父のことを知っていたぞ。だから俺は――――)


「人間だって言うのかい。いや、思うのかい。

 僕たちの父は妖怪だよ。

 人間に化けるのも化かすのも得意中の得意に決まっているじゃないか」


 畜生、どうにも反論の余地はなさそうだ。

 でも、サトリが父を本当に知っているというのなら、これだけは聞いておきたかった。


(父は……父は、母のもとに帰ってくる気はないのか?)


「さぁね、知らないよ。

 でも、帰ってくる気はないんじゃないかな。

 だから、僕が来ることになったのだろうし」


(そうか……)


 父を想う母の顔が頭に浮かんだ。

 寂しそうで、心配そうで、不安そうな顔。

 村人にのけ者にされても、俺を守り、父の帰りを待つ強い意志を宿した顔。

 父は、そんな顔をする母を裏切ったのだ。

 自然と、父への憎しみがふつふつと湧いてくる。

 ドウシテクレヨウカ―――――――


「お、おいおい、ミコトがマザコンだってことは十分わかったから、それ以上黒い気を出さないでくれ」


 気が付けば、サトリは天井から降りて、家の隅で付喪神達と身を寄せ合っていた。

 サトリは心を読めるせいで黒い気持ちに人一倍敏感なのかもしれない。

 落ち着いた口調のせいで気が付かなかったが、サトリの容姿は6~7歳のものだ。

 妖怪だから実年齢は分からないが、赤子の俺を怖がるサトリの姿は俺に十分な罪悪感を抱かせる。


(怖がらせてごめん、父のことを考えていたら少し腹が立って)

 

「こ、怖がってなんかない。

 だれが、怖がるものか。

 ばっかじゃ――――ヒィッごめんなさい!」


 サトリが強がると、保護欲とともに嗜虐心(しぎゃく)をくすぐられる。

 やばい、俺ゲスい……早く何とかしないと。


(ごめん、ごめん。もう、怒ったりしないから)


「ほ、ほんとか?」


 涙目でにらむサトリは、その容姿と相まって、赤子の俺から見ても可愛らしく、とても姉には見えない。

 まだ少しささくれ立っていた気持ちも徐々に穏やかになっていく。

 自然にサトリに向ける目も優しいものに変わっていく。


「うぅ~怒らないからって、その目をやめろ!僕がお姉さんなんだからな」


 年下に向けるような目がお気に召さなかったようだ。

 俺の主観じゃ、十分に年下なのだが。


(そうだな、サトリ、お姉ちゃんだもんな)


 ちょっとからかってやると「もういいっ」と拗ねてしまった。

 しかし、(ほお)をぷく~っと膨らませるサトリはとても可愛らしかった。


「う、うぅ~~」


お気に入り22件……感動しました………

一話目より大進歩です。

読者の皆様、ありがとうございます。

これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。


さて、今回でやっとヒロイン登場です。

しかし、ヒロインは妖怪で、主人公の姉だということが発覚したところで終わってしまいましたorz

次回こそは、もっともっと物語を進めたいです。

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