一ヶ月後
あれから一ヶ月ほどの時間が過ぎ、俺が『転生』を果たしたらしい事を漫然とだが、理解できた。
きっかけは、抱き上げられた時だ。
頭を支えられながら周囲を見渡すと、全てが大きくて驚かされた。
そして、自身の手の小ささ、丸みを帯びた体を見て愕然とした。
(赤ちゃんになってる!?)と、
俺は夢を見ているのではないかと最初は考えていたが、乳を飲み、おしめを変えてもらう毎日を一ヶ月も繰り返せば嫌でも理解できる。
人としての尊厳と引き換えに……。
今はもう、慣れた。
目が覚めて、最初に見た女性は俺の母親だった。
年齢は二十を過ぎた辺りだろうか。
俺より年上ではあるが、母親っていうよりもお姉さんって感じだ。
ただ、父親をまだ見たことがない。
収入はどうなっているのかわからないが、裕福でないのは分かる。
ぼろぼろの麻布で作られた着物、古臭い木造の家。
灯りは囲炉裏だけで電気なんてものはない。
まるで、昔の農家みたいだ。
今までの人生で何度もやり直したいと願ったことはあったが、こうも貧乏な転生してしまうとは……。
自分の不運さを呪いたい。
まぁ、母親が美人なのが唯一の救いか。
それに、前世の記憶と知識は残っている。
成長したら知識を使って速攻、貧乏から抜け出してやればいい。
にやり、と口の端を歪めて笑った。
(俺は、ここで人生をやり直す)
思いを新たにし、乳から口を放す。
「あら、もういいの?」
いいのだ。これ以上、乳をちゅぱちゅぱ吸っていては格好もつかん。
腹は膨れたしな。
あとは寝るだけだ。
「そう、じゃぁお眠り」
ねんねん ころりよ おころりよ
ぼうやは 良い子だ ねんねしな
懐かしい子守唄が眠気を誘った。
背中をとんとんと、心地よく打たれる度に瞼が下がっていった。
すみません、体調不良のため今回は短くさせていただきました。
次回以降は頑張るので許してください。