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日本、異世界転生禄  作者: 安眠丸
第一章 乳児編
2/7

勘違い

 ――――――――――――――暖かい。

 ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ

 一定のリズムで水が押し出されるような音が刻まれる。

 力強く押し出される音、優しく緩やかな流れに変わる音が交互に続く。

 音と音の合間に聞こえるのは女性の声だろうか、優しい子守唄のようにも感じる。

 光は感じられないが、優しく穏やかな闇が微睡を誘う。

 ひどく安穏とした世界だった。

 起きているのか、眠っているのか自分でもわからない。

 ただ、心地良い時間が過ごせた。


 しかし、突然の激痛が意識を完全に覚醒させた。


 い、痛い痛いイタいタぃ苦しク、クルぁイタァアいたぁアタアイぃアぁアぃアアァァァア


 頭が締め付けられ、体全体にとんでもない圧がかっている。声も上げられず、身動きもできず、ただ痛みと苦しさに耐えることしかできない。


「オギャアァ、オギャァア」


 頭から順に圧から解放され、体が完全に緩みきると反射的に泣き叫んだ。

 未だに感じられる痛み、苦しみを叫ぶ。

 力の限り、泣き叫んだ。

 それに呼応するように歓声が響いた。

 徐々に泣く気力さえなくなり、意識は再び闇へ溶けて行った―――――――。



    ◇ ◇ ◇ ◇


 目が覚めると、若い女が覗き込んでいた。

 多少やつれ、頬はこけていたが、いかにも大和撫子な美女だった。


(…………誰?)

「おはよう、ミコト」


 俺に微笑みを向けてくれた。柔らかく、優しげな顔だ。


(…………ミコト?)

「あなたの名前よ。ミコト。ミ、コ、ト」

「うぃ~お~おー?」

(あれ?声が上手く出ない。それに、俺の名前がミコトだって?どういうことだ?)

「?私の言葉が分かるのかしら。……いえ、そんなことあるわけ無いわよね」

「あ~う~ぁ~お~ぅ~お~」(分からないはず無い、あれ?)


 おかしい、やっぱりまともに声が出ない。

 訳が分からない。誰か説明してくれ………。


 くぅ~~


 気の抜けたような音が聞こえた。


「あらあら、お腹空いちゃったみたいね」


 発信源は俺の腹、ちょっと恥ずかしかった。

 彼女から目をそらすと、クスクスと笑い声が聞こえた。


「ほら、準備できたわよ」

 

 その一声とともに俺は抱き寄せられた。

 頬に柔らかなものが当たる。

 温かい。

 耳を澄ますと、懐かしい単調なビートが響く。

 不思議と落ち着いた。

 心地の良い、穏やかな気持ちで満たされた。

 彼女の手が後頭部を撫で、支えながら俺の顔を優しくずらした。

 目の前には初めて見る乳白色の膨らみがあった。

 唇には、しこりの様な、突起の様なものが当たっている。

 

 俺は直後、理解する。


「あぁ~うぁ~」(この人、変態だ!!!)


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