勘違い
――――――――――――――暖かい。
ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ
一定のリズムで水が押し出されるような音が刻まれる。
力強く押し出される音、優しく緩やかな流れに変わる音が交互に続く。
音と音の合間に聞こえるのは女性の声だろうか、優しい子守唄のようにも感じる。
光は感じられないが、優しく穏やかな闇が微睡を誘う。
ひどく安穏とした世界だった。
起きているのか、眠っているのか自分でもわからない。
ただ、心地良い時間が過ごせた。
しかし、突然の激痛が意識を完全に覚醒させた。
い、痛い痛いイタいタぃ苦しク、クルぁイタァアいたぁアタアイぃアぁアぃアアァァァア
頭が締め付けられ、体全体にとんでもない圧がかっている。声も上げられず、身動きもできず、ただ痛みと苦しさに耐えることしかできない。
「オギャアァ、オギャァア」
頭から順に圧から解放され、体が完全に緩みきると反射的に泣き叫んだ。
未だに感じられる痛み、苦しみを叫ぶ。
力の限り、泣き叫んだ。
それに呼応するように歓声が響いた。
徐々に泣く気力さえなくなり、意識は再び闇へ溶けて行った―――――――。
◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めると、若い女が覗き込んでいた。
多少やつれ、頬はこけていたが、いかにも大和撫子な美女だった。
(…………誰?)
「おはよう、ミコト」
俺に微笑みを向けてくれた。柔らかく、優しげな顔だ。
(…………ミコト?)
「あなたの名前よ。ミコト。ミ、コ、ト」
「うぃ~お~おー?」
(あれ?声が上手く出ない。それに、俺の名前がミコトだって?どういうことだ?)
「?私の言葉が分かるのかしら。……いえ、そんなことあるわけ無いわよね」
「あ~う~ぁ~お~ぅ~お~」(分からないはず無い、あれ?)
おかしい、やっぱりまともに声が出ない。
訳が分からない。誰か説明してくれ………。
くぅ~~
気の抜けたような音が聞こえた。
「あらあら、お腹空いちゃったみたいね」
発信源は俺の腹、ちょっと恥ずかしかった。
彼女から目をそらすと、クスクスと笑い声が聞こえた。
「ほら、準備できたわよ」
その一声とともに俺は抱き寄せられた。
頬に柔らかなものが当たる。
温かい。
耳を澄ますと、懐かしい単調なビートが響く。
不思議と落ち着いた。
心地の良い、穏やかな気持ちで満たされた。
彼女の手が後頭部を撫で、支えながら俺の顔を優しくずらした。
目の前には初めて見る乳白色の膨らみがあった。
唇には、しこりの様な、突起の様なものが当たっている。
俺は直後、理解する。
「あぁ~うぁ~」(この人、変態だ!!!)