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最強の勇者サマ

作者: 茶摘み鶏



 ひみつ、ひみつ。

だれにも秘密だよ。


 だれにも抜けなかった剣を抜いて、本当に自分が「勇者」なんだと認められてしまった。

でもその前までは、魔物とだって友達だったんだ。

本当だよ。

最近は歩いてるだけで自分が誰かばれてしまうため、魔物とも距離を置くようになった。

 「勇者」は「魔王」をたおすための存在だから。


 ーーむかし、大好きだった魔物がいた。


 魔物なのに森にいた彼らは、人(自分)を襲わなかった。

 そのなかでも大の仲良しだったあの子。

たしか人間の言葉を話していたように思う。

賢い友達だ。

でもあの子は森の仲間からよくいじめられていて、オレはよく一緒に遊んだんだ。

 あるとき、何度目かの傷の手当をしているとその子は、美味しそうな蜂蜜色のものをくれた。

どうやら花の蜜でできているらしいそれ

は、いままでのお礼らしい。

「ありがとう」

それを受け取って食べると、確かに甘い。

その子はオレの様子を見て、嬉しそうにバタバタと手を振っていた。

あの子から貰ったものは飴かと思いきや、それはすぐに口の中で溶けてなくなってしまった。

魔物って不思議なものを生み出せるんだな~。スゴイや。



 そういえば最近気付かないうちに魔物に襲われていたらしく、今現在その魔物と身体を共存している。

一緒に旅していた魔法使いは呆然としてコチラをみてかたまっているだけ。

もう一人の仲間は、腹を抱えて笑っている。

そんなにおかしな容姿の魔物じゃないのに、笑うなんてヒドイ。

「魔物じゃない!お前がうけるの!だってお前の……っ!!」

彼はそういと、こちらをみて言葉を詰まらせるとプッと吹き出し、笑いをこらえきれず再び大笑いをし始めた。

なんでだろうと首を傾げていると、大丈夫?と頭上の魔物が話しかけてきた。

 そういえばこの魔物は、昔仲の良かったあの子のように綺麗な緑色をしている。

あの子とみたいにまた仲良くなれたら良いなぁ。


「それは草系のモンスターの種だ。

そいつは土の中で長くて半年、種のまま育つ。土や木、動物の死骸を苗床にするが、生き物に寄生してるのは初めて見たよ」

 後日、笑いの理由を告げられた。

どうやら寝ている間に襲われたのではなく、気がつかないうちに食べていたんだろうといわれた。

なるほどナットクだ。

 でも、拾い食いとかしないんだけど。いったいいつ食べたのだろう?






***************






 森の仲間達も自分もいつもやってくる子供に襲いかかるのだが、なぜか子供は笑って喜んだ。

否、何度襲いかかっても鬼ごっこだとでも思っているのか、逃げる逃げる逃げる。

しかも早い。

しかも逆にニコニコと突進してくるわ、いたずらを仕掛けてくるわ。

次第に自分達はみたことない笑みが空恐ろしくなって、誰も相手をするのをやめた。

ただそうしてるうちに、子供は必要以上に自分にくっついてきた。

なぜだ?

 あとあと子供を産んだ自分は、長い付き合いだ。この相手なら頼れると思った。

自分達は種の間はとても弱い。

だからその間、他のモンスターに襲われないように子を守り、そしてどこか遠くまで子を運んではくれないかと。

そこで子供に種を任せても良いだろうかと、ちゃんとした人間の言葉で問うともちろんだよといわれた。

そのすぐあと、奴は我が子を喰った。


 人の時間でいう十年後、魔王を倒すべく勇者が選ばれたという。

はじめはどうでもよかったのだが、そうもいかなくなった。

勇者の頭に見事なまでの、白い花が咲いているというのだ。

「生きていた…」

自分達の種は、生きている者の力強さに勝てないため、動物等の生物にきせいできない…ハズなのだが。

自分の子はどうやらあの人間の子供の中ででも、頑張って生きていたらしい。

 その後、なんどか人間やら動物等に種を植え付け見張っていたが、何十年経とうとうどの子も成長することはなかった。


 ……ユウシャ、オソルベシ

 そう思わずにはいられなかった。






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