お友達イン・ザ・ハウス
友達のお家へ遊びに行っている最中です。イン・ザ・ハウス!
玄関をくぐると中は案外普通の家だった。なんか、変な構造かと思っていたので拍子抜けする。
「案外普通だな…。」
「何が?」
「いや、別に…。」
独り言に華琳が反応する。
「上がって上がって、部屋に案内するから。…あ。」
奈津実は急に立ち止まって棒立ちになる。
「ん?どうしたの奈津実?」
「あのね…ごみょごみょ…というわけで、ちょっとそこの部屋で待っておいてね。」
何やら華琳に耳打ちして話を進める奈津実と華琳。奈津実は部屋を教えてどこかに行ってしまった。あくまで、招かれているのは華琳であって俺ではない。話も華琳から通すのが普通だろう。
「なんて言われたの?」
一応、弟を意識しながら語調を変えて聞く。
実は家を出る前に紙を渡された。華琳がイメージする弟を演出するように要求されたのだ。
「なんか、同人誌がどうのこうのと言ってた気がする。」
何だよそれ。同人誌って…やはり、やつはそっち系なのだろうか…。
そんなことを考えていると一人の少年が出てきた。小学生だろうか?
「姉さんに言われてきました。応接間まで案内します。」
しっかりとしたもの言いで喋る少年。少年は先を歩いて部屋に案内する。ふと、疑問に思ったので聞いてみる。
「ねえ、ここの苗字ってなに?」
「塩田です。」
華琳に向かって聞いたのだが、後ろ向きに塩田弟が答える。
「どうぞ、ここが応接間です。飲み物を持ってきますので中でくつろいで待っていてください。」
場所が場所なら会社の社長秘書と間違われてもおかしくない程、対応が丁寧な塩田弟。
「あ、どうもありがと~。」
去っていく塩田弟を見送る華琳。
「しっかりとした弟君だな。」
華琳と二人きりなので口調は元に戻す。
「そうだね。しっかりしてるね。」
「華琳もあれくらいしっかりしてればいいんだけど…。」
「無理じゃないかな。あはは~。」
本人の前で言っているんだが!だが!まったくこたえない!自分でもしっかりしていないと認識していながら直す気は全くないのか…まぁ、華琳らしいと言えばそうなんだが。
「それより、さっきの口調よかったからもう一回やってよ。」
「嫌だ。あんな言葉遣い、小学生でも普通しねぇよ。」
「え~、でも可愛かったよ?」
「可愛い言うな!」
これでも結構、胸抉られてるんだからな!初対面の女の子から小学生と間違われるし…可愛いとか言われたし…。
「飲み物をお持ちしました。麦茶でよかったですか?」
塩田弟が帰ってきて少し戸惑う。さっきの話きかれてないだろうな?口調とか戻ってたし。
「うんうん。贅沢言わないよ~麦茶さいこー。」
華琳がガブガブと麦茶を飲む。俺も麦茶に口をつける。うん。冷たくておいしい。
しかし、塩田弟がさっきからこっちを凝視している。
「あ、あの…なにか?」
もしかして、やっぱり気づいちゃう?なんか雰囲気が違うとかで…普通気付くよね。やっぱり流れでる高校生オーラは覆い切れないよね。気付かれて少し嬉しいぜ!きっとピンチなんだろうけど嬉しい!
「いえ…弟さん少し二人で話をしませんか?」
俺は華琳を見る。なんか、やばいんじゃないですか?二人で話しとかはNGじゃないでしょうか?
「いいんじゃない?同じ小学生同士、話してきたら?」
いやいやいやいや、二人でとかやばいでしょ!?ねぇ?ばれるでしょ?考えてもの言ってます?
華琳は不安そうな俺の顔を見て…ピッ!と親指を立てる。いやいや、こいつわかってねぇ!
「じゃあ、少しの間お姉さんはここでお待ちください。」
「はーい。わかりましたー。お二人さんごゆっくりー。」
くそ、どうなっても知らねぇからな!
俺は塩田弟について行き、部屋を出る。
廊下に出て少し歩く。ある程度部屋から離れてこちらを振り向いた。
「ふう、ここらでいいかな…。」
口調が変わっている…。少し面食らっている俺にかまわず話をする塩田弟。
「お前、気をつけろよ。」
「え?何に?」
がんばって弟な感じを出す。
「何にって姉貴にきまってるだろ。あんな獣の前にそんな恰好で出たんだ。覚悟は出来てるんだろうな?」
あー…やっぱり。しかし、知らないふりをする。
「この恰好そんなにおかしいかな?」
「う~ん。おかしくはないんだが、姉貴の前ではやめた方がいいな。」
「でも、これお姉ちゃんがつけろって言ってきたし…。」
「まさか…!あの姉ちゃんも姉貴側の人間なのか!」
信じられないといったような顔である。実際は小学生に化けるために来てる服だけどね。…そうだよね?
「お姉ちゃん達に何かあるの?」
一応聞いてみる。
「いや、お前は知らない方がいい。いや、待てよ。知っていた方がいいのか?」
なんか、親身になって助けようとしてくれる塩田弟。
「とりあえず、うちの姉貴と二人っきりになるな。そして、一人にもなるな。必ずお前の姉ちゃんと一緒にいろ。それが一番だ。」
わかってるよ。俺だって食い物にされたくないからな。
「わかった。なんかわかんないけど、気を付けておく。」
「ああ、がんばれよ。じゃあ、戻るか。」
さて、一つ突っ込み忘れたから今言わせてくれ。ばれてねぇ!高校生オーラどこいった!おい!しかも、塩田弟の口調、頼りになりそうな兄貴みたいな口調になってるぞ!そこまで俺はか弱い存在に見えるか!どういうことだよ!一頻り心の中で突っ込んだあと、応接間にもどる。
応接間に戻ると華琳と奈津実がいた。二人で話していたらしい。
「あ、戻ってきた!じゃあ、さっそく私の部屋に案内するよ。」
そう言って立ち上がる奈津実。
「弟君も来る?」
華琳が塩田弟に聞く。
「いえ、遠慮させてもらいます。三人で楽しんでください。」
口調が戻っていた。
「そっか、じゃあ!涼いこ!」
華琳に手を引かれていく。
塩田弟はこっちを向いて目で「がんばれ」と言っていた。いいやつだ。
廊下を進んで奈津実の部屋に行く。
「ここだよ、入って。」
部屋に入ると…ツイスターゲームが準備されていた。なんだ?パーチーでもする気が?
「わー!これってついすたーげーむってやつだよね?私やったことないんだ!」
華琳が嬉しそうに声を上げる。そういえば、俺のやったことがない。
「前に華琳と話したときやったことないって言ってたから準備してみたんだ。やる?」
なかなか友達思いのいいやつだった。
「え?いいの?やるやる!」
「弟君もやろう!」
最初からこの展開を狙っていたな…これは罠だ。ここは無難に断っておこう。
「え、僕はこういうの苦手だから…。」
「大丈夫、お姉さん達が手取り足取り教えてあげるから。」
キラーン★って目がギラギラしてるよ?しかも、明るい星って感じじゃなくてダークな感じだよ?
「え…でも…。」
「いいじゃん。やろうよ涼。折角なんだし。それに…」
華琳が耳打ちをする。
「手と足取られるだけならまだましな方だと思うよ?」
…肉を切らせて骨を断つ…か。
「だから、一緒にやろ!涼!」
「うん…わかった。お姉ちゃん達と一緒にやる!」
「シャ!」
拳を握りしめガッツボーズをする人一名。判断を誤ったか…。
「じゃあ、誰から始めようか。」
「はいはいはーい!」
手を上げて跳ねる華琳。
「じゃあ、華琳と…」
こっちを見る。笑っているけど、その笑いが怖い。
「弟の涼君ね。」
「はい…。」
とりあえず、一番怖いやつと一緒にならなかったので少し安心した。でも、相手は華琳だ…。
「よーし!やるぞー!」
拳を突き出したり軽くジャンプしたりフットワークしたりと準備運動している。誰と戦う気だ…。奈津実の方は…
「うふ、うふふふふ…。」
気持ち悪く笑いながらカメラをいじっている。すごい身の危険を感じる。なぜ、ただツイスターゲームをするだけで、こんなにも不安になってしまうのだろうか…。
「そうだ!私、悟呼んでくるね。」
奈津実はバダバタと部屋から出て行ってしまった。
「悟って誰だ?」
華琳に聞いてみる。
「たぶん弟君じゃないかな?」
塩田弟の下の名前悟なのか。
しばらくして奈津実と塩田弟が戻ってくる。
「悟にはルーレットを回す役をやってもらいます。」
ルーレットを塩田弟に渡す。
「姉さんは何をするんですか?」
相変わらず丁寧な口調だ。
「この記念すべき日を後世に残すため撮影を行う!」
胸を張ってカメラを持つ。絶対、趣味のためだけだろう。そんな姉を見て塩田弟は諦めたような顔をする。
「ってことで、準備はいいか!皆の者!」
「おー!!」
「おー…。」
「はい。」
タイトルは「私は友達の家にいます。」を華琳が英語に直したものです。「お友達イン・ザ・ハウス」何を言いたいかはわかる。でも、ペケです。