表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉弟演技  作者: 瀬名孝太
4/13

Let's★罰ゲーム♪

夏休み初日でーす。Let's★罰ゲーム♪

 幼い頃の華琳(かりん)が言う。

「勝負だ!お兄ちゃん!」

 幼い頃の俺が答える。

「いいぜ!相手してやる!」

 そう。あの頃はまだ互角に戦えるだけの実力差だった。

空から俺の部屋のドアが落ちてくる。

ドアから華琳の目が覗く。

「プリン」

 高校生の俺が答える。

「待て!落ち着け!」

 そう。今では華琳の方が捕食者側である。運動でもそして、勉強でも…。

華琳の腕が伸びてくる。

「や!やめ!やめてええええ!!!!!」

――――うわああああ!!!!!」

 ベッドから起き上がる。

「はぁ、はぁ、はぁ……トラウマになってるじゃねぇか!」

 パジャマが汗でびっしょりと濡れている。時間はまだ7時だった。

「着替えてまた寝るか…。夏休みだし。」

 パジャマを着替えて寝ることにする。

一応、訂正するがパジャマは俺の趣味じゃない。

華琳の趣味だ!無理やり着せてくるんだよ!

朝、違う服でいるところを見られると殴られるし、仕方ないんだ…。

パジャマを着替え終わりベッドに入る。

再び、深い眠りの中に落ちてゆく。

今度はよく眠れそうだ…。

バアアアァァァンンン!!

「朝だーーーー!!!!!」

「うわああああ!!!!!」

 な、何が起きたんだ?

部屋の入口を見ると………四代目ーーー!!!!

「さあ、遊びに行く準備をするぞー!おー!」

「お前!よくも四代目を!」

「元気がないぞー!おー!」

「俺の話を聞けー!」

「私の方の話を聞けー!」

 何なんだ…こいつ。理不尽すぎる!

「よーし!落ち着いたな!はい、じゃあ、これから(りょう)をコーティングしまーす。」

 何なんだよ!コーティングって!?

「ふっふっふ、実は昨日、夏休み用の涼の服を買って来たのだー!」

 おお!以外に夏休みのこと考えてた!だが…

「昨日のうちに言えよ!」

「楽しみは取っておくものだ!弟よ!」

「うっ。」

 いきなり弟かよ。結構胸にくるものが…。いつもなら「忘れてたんだろ!」と突っ込むのに…。

「見よ!これだ!」

 見せられたのは…短パンとTシャツと(つば)付きの帽子。

「………。」

「短パン小僧セット~~!」

 どこかの青い狸のようにしゃべる。

 キッ!

「おお、そんなに睨まないでよ~。きっと、ばっちり似合うよ!」

 ギンッ!

「お、さらに目つきがきつくなった。何、そんなにご不満があると?」

 コク。

「なら!特別にこのブリー―――待って~逃げないで~。」

 付き合ってられるか!こんなの!

俺は部屋から出て1階に下りて行く。

今の時間は親父も母さんもとっくに起きてるだろう。こんな理不尽許せるか!直訴しに行ってやる。

「親父!いるか!」

「なんだ、涼。」

 親父は新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。ジョッキで…。

「聞いてくれよ!華琳のやつがふざけてやがる!あいつを止めてくれよ!」

 親父は新聞を閉じてこっちを見る。

「ああ、華琳のことか。話は聞いている。」

 え?話を聞いている?

「どういうことだ?話を聞いているって?」

 話を聞きながらコーヒーを飲む親父。ジョッキで…。

「今日から弟なんだろう?華琳が姉で涼が弟。」

 え?何で親父に話が届いているの?

母さんが台所から出てくる。

「お母さんも聞いたわ~今日から弟なんでしょ~。」

 母さんにまで話が届いている…。

「いいのかよ!?俺は華琳の兄だ!弟なんて通じるわけねぇだろ!普通じゃねぇよ!」

「いいんじゃないかしら~十分通じるとおもうわよ~私は~。」

「別に困ることはないだろう?」

 だめだ。ここで引き下がったら完全に認めてしまうことになる。

「困るよ!俺のプライドが傷つく!もう、学校に行けなくなる!」

 いや、マジで学校行けなくなるよ?友達とかに見つかってみろ…終わりだ。

「ごめんね~、華琳ちゃんには貸しができちゃったのよ~。」

「すまんな、華琳には貸しがある。見逃すしかあるまい。」

「う、うそだろ…。」

 思わず肩を落としてしまう。家族まで華琳の手中にあったとは…。

「ありがとね~お父さん、お母さん♪」

 後ろを振り向くと短パン小僧セットを持った華琳がいた。

「さあ、行くよ!お・と・う・と・の涼!」

「うぐぅ…。」

 信じていた両親の裏切りと心を折ってくる妹の言葉。

もう、勝手にしろよ…。


「今日はどんな友達の所に行くんだ?」

 短パン小僧セットに身を包んだ涼が聞く。いや!もう、吹っ切れました!

「う~んと、奈津実(なつみ)の所かな~「すぐ来い!今すぐ来い!弟を連れて今すぐ来い!」って言ってたから。」

「なんだか不安なんだが、その友達。」

 たった、一行の文で不安を煽るとはどんなやつなんだ…知りたくねぇ~。

「なあ、帰ってもいいか?俺の本能が危険だと言っている。」

「だめだよ!奈津実とは契約を交わしているんだから。来てくれないと私が危ないよ。」

 何なんだよ!契約って!華琳が危ないって、俺だとどうなるかわからねぇよ!

「はぁ…本当にこの恰好(かっこう)で行くのかよ?」

「しょうがないよ。それも誤魔化(ごまか)すためだよ。」

「はぁ…もう、嫌だよ~何なんだよ~家に帰りたいよ~。」

「駄々こねないでよ…本当に小学生に見えるよ。」

「ああ、何でこんなことになっちまったんだよ。」

「涼がテストで負けたからでしょ?」

 ああ!そうだよ!負けちまったからだよ!

「ほら、そんなところでうずくまってないで。もうすぐそこだよ。」

「はぁ~~~。」

 ため息をつきながらついて行く。

「ほらほら、ここだよ!」

 顔を上げると木造ではなくコンクリートで固められた近代的な家があった。

「こんにちはー!」

 いや、インターホン右にあるじゃん。使えよ。

「きたー!かりーんいらっしゃーい!弟君どこー!」

 おそらく今の「きたー!」はカタカナが正しいかもしれない。

「やっほー。ここにいるのが弟の涼だ―――」

「キャー!かわいいー!小学生!?小学生だよね!?何年生かな?4?5?6?4は流石にないか…じゃあ、5?6?」

 怒涛(どとう)のような喋りで、華琳が押されている。

「6年生だよ~。」

「こ、こんにちは…。」

「照れてるのかな?お姉ちゃんの後ろに隠れちゃって可愛いわ~。」

 怖いんだよ!テンションおかしいだろ!何なんだこいつ!

「とりあえず、入って飲み物用意するから!」

「あ、ありがとー、ここに来るまで暑くてさー、助かるよー。」

 華琳が奈津実の家へ入って行く。ここに入ったら日のあたる世界に戻ってこれるだろうか…とっっっっっっても不安になる。

「どうしたの?」

 華琳が不思議そうに聞いてくる。

「いざとなったら守ると約束してくれ。じゃないとここには入らない。」

「大丈夫だよー。奈津実はいいやつだよー。」

「怖いんだよ。あのテンション。どんな行動に出るか予想できないんだよ。」

「う~ん。まぁ、本当にやばいな~と感じたら助けてあげるよ。そりゃね。」

「本当だな?信じるからな?」

「どーんとまかせんしゃい!」

 どーんと胸を打つ華琳。心配すぎる。

余談「THE・密会!」

「ってなわけで、助けを求められたら助けるから。」

「ちっ、やるな涼君、華琳に助けを求めてから家に入るとは…。」

 奈津実は親指を口に当てながら言う。

「でも、華琳?契約があるわ。だから、手を出さないで。」

「そうはいかないよ~、一応大切な弟だからね。姉として本当に危ない時は助けないと。」

「なら、あなたがこれ以上はいけないと思う所で止めなさい。それくらいはいいでしょ?」

「あいあいさー。わかりましたー。」

 こうして、涼の知らない所で密約は結ばれていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ