Let's★罰ゲーム♪
夏休み初日でーす。Let's★罰ゲーム♪
幼い頃の華琳が言う。
「勝負だ!お兄ちゃん!」
幼い頃の俺が答える。
「いいぜ!相手してやる!」
そう。あの頃はまだ互角に戦えるだけの実力差だった。
空から俺の部屋のドアが落ちてくる。
ドアから華琳の目が覗く。
「プリン」
高校生の俺が答える。
「待て!落ち着け!」
そう。今では華琳の方が捕食者側である。運動でもそして、勉強でも…。
華琳の腕が伸びてくる。
「や!やめ!やめてええええ!!!!!」
――――うわああああ!!!!!」
ベッドから起き上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ……トラウマになってるじゃねぇか!」
パジャマが汗でびっしょりと濡れている。時間はまだ7時だった。
「着替えてまた寝るか…。夏休みだし。」
パジャマを着替えて寝ることにする。
一応、訂正するがパジャマは俺の趣味じゃない。
華琳の趣味だ!無理やり着せてくるんだよ!
朝、違う服でいるところを見られると殴られるし、仕方ないんだ…。
パジャマを着替え終わりベッドに入る。
再び、深い眠りの中に落ちてゆく。
今度はよく眠れそうだ…。
バアアアァァァンンン!!
「朝だーーーー!!!!!」
「うわああああ!!!!!」
な、何が起きたんだ?
部屋の入口を見ると………四代目ーーー!!!!
「さあ、遊びに行く準備をするぞー!おー!」
「お前!よくも四代目を!」
「元気がないぞー!おー!」
「俺の話を聞けー!」
「私の方の話を聞けー!」
何なんだ…こいつ。理不尽すぎる!
「よーし!落ち着いたな!はい、じゃあ、これから涼をコーティングしまーす。」
何なんだよ!コーティングって!?
「ふっふっふ、実は昨日、夏休み用の涼の服を買って来たのだー!」
おお!以外に夏休みのこと考えてた!だが…
「昨日のうちに言えよ!」
「楽しみは取っておくものだ!弟よ!」
「うっ。」
いきなり弟かよ。結構胸にくるものが…。いつもなら「忘れてたんだろ!」と突っ込むのに…。
「見よ!これだ!」
見せられたのは…短パンとTシャツと鍔付きの帽子。
「………。」
「短パン小僧セット~~!」
どこかの青い狸のようにしゃべる。
キッ!
「おお、そんなに睨まないでよ~。きっと、ばっちり似合うよ!」
ギンッ!
「お、さらに目つきがきつくなった。何、そんなにご不満があると?」
コク。
「なら!特別にこのブリー―――待って~逃げないで~。」
付き合ってられるか!こんなの!
俺は部屋から出て1階に下りて行く。
今の時間は親父も母さんもとっくに起きてるだろう。こんな理不尽許せるか!直訴しに行ってやる。
「親父!いるか!」
「なんだ、涼。」
親父は新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。ジョッキで…。
「聞いてくれよ!華琳のやつがふざけてやがる!あいつを止めてくれよ!」
親父は新聞を閉じてこっちを見る。
「ああ、華琳のことか。話は聞いている。」
え?話を聞いている?
「どういうことだ?話を聞いているって?」
話を聞きながらコーヒーを飲む親父。ジョッキで…。
「今日から弟なんだろう?華琳が姉で涼が弟。」
え?何で親父に話が届いているの?
母さんが台所から出てくる。
「お母さんも聞いたわ~今日から弟なんでしょ~。」
母さんにまで話が届いている…。
「いいのかよ!?俺は華琳の兄だ!弟なんて通じるわけねぇだろ!普通じゃねぇよ!」
「いいんじゃないかしら~十分通じるとおもうわよ~私は~。」
「別に困ることはないだろう?」
だめだ。ここで引き下がったら完全に認めてしまうことになる。
「困るよ!俺のプライドが傷つく!もう、学校に行けなくなる!」
いや、マジで学校行けなくなるよ?友達とかに見つかってみろ…終わりだ。
「ごめんね~、華琳ちゃんには貸しができちゃったのよ~。」
「すまんな、華琳には貸しがある。見逃すしかあるまい。」
「う、うそだろ…。」
思わず肩を落としてしまう。家族まで華琳の手中にあったとは…。
「ありがとね~お父さん、お母さん♪」
後ろを振り向くと短パン小僧セットを持った華琳がいた。
「さあ、行くよ!お・と・う・と・の涼!」
「うぐぅ…。」
信じていた両親の裏切りと心を折ってくる妹の言葉。
もう、勝手にしろよ…。
「今日はどんな友達の所に行くんだ?」
短パン小僧セットに身を包んだ涼が聞く。いや!もう、吹っ切れました!
「う~んと、奈津実の所かな~「すぐ来い!今すぐ来い!弟を連れて今すぐ来い!」って言ってたから。」
「なんだか不安なんだが、その友達。」
たった、一行の文で不安を煽るとはどんなやつなんだ…知りたくねぇ~。
「なあ、帰ってもいいか?俺の本能が危険だと言っている。」
「だめだよ!奈津実とは契約を交わしているんだから。来てくれないと私が危ないよ。」
何なんだよ!契約って!華琳が危ないって、俺だとどうなるかわからねぇよ!
「はぁ…本当にこの恰好で行くのかよ?」
「しょうがないよ。それも誤魔化すためだよ。」
「はぁ…もう、嫌だよ~何なんだよ~家に帰りたいよ~。」
「駄々こねないでよ…本当に小学生に見えるよ。」
「ああ、何でこんなことになっちまったんだよ。」
「涼がテストで負けたからでしょ?」
ああ!そうだよ!負けちまったからだよ!
「ほら、そんなところでうずくまってないで。もうすぐそこだよ。」
「はぁ~~~。」
ため息をつきながらついて行く。
「ほらほら、ここだよ!」
顔を上げると木造ではなくコンクリートで固められた近代的な家があった。
「こんにちはー!」
いや、インターホン右にあるじゃん。使えよ。
「きたー!かりーんいらっしゃーい!弟君どこー!」
おそらく今の「きたー!」はカタカナが正しいかもしれない。
「やっほー。ここにいるのが弟の涼だ―――」
「キャー!かわいいー!小学生!?小学生だよね!?何年生かな?4?5?6?4は流石にないか…じゃあ、5?6?」
怒涛のような喋りで、華琳が押されている。
「6年生だよ~。」
「こ、こんにちは…。」
「照れてるのかな?お姉ちゃんの後ろに隠れちゃって可愛いわ~。」
怖いんだよ!テンションおかしいだろ!何なんだこいつ!
「とりあえず、入って飲み物用意するから!」
「あ、ありがとー、ここに来るまで暑くてさー、助かるよー。」
華琳が奈津実の家へ入って行く。ここに入ったら日のあたる世界に戻ってこれるだろうか…とっっっっっっても不安になる。
「どうしたの?」
華琳が不思議そうに聞いてくる。
「いざとなったら守ると約束してくれ。じゃないとここには入らない。」
「大丈夫だよー。奈津実はいいやつだよー。」
「怖いんだよ。あのテンション。どんな行動に出るか予想できないんだよ。」
「う~ん。まぁ、本当にやばいな~と感じたら助けてあげるよ。そりゃね。」
「本当だな?信じるからな?」
「どーんとまかせんしゃい!」
どーんと胸を打つ華琳。心配すぎる。
余談「THE・密会!」
「ってなわけで、助けを求められたら助けるから。」
「ちっ、やるな涼君、華琳に助けを求めてから家に入るとは…。」
奈津実は親指を口に当てながら言う。
「でも、華琳?契約があるわ。だから、手を出さないで。」
「そうはいかないよ~、一応大切な弟だからね。姉として本当に危ない時は助けないと。」
「なら、あなたがこれ以上はいけないと思う所で止めなさい。それくらいはいいでしょ?」
「あいあいさー。わかりましたー。」
こうして、涼の知らない所で密約は結ばれていく。