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姉弟演技  作者: 瀬名孝太
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なんだよそれ?

これは天才小学…もとい高校生の(たちばな) (りょう)君とその妹様の華琳(かりん)ちゃんが織り成すちょっとラブなコメディーな作品です。

 「なぁ…本当にマジで行くのかよ?」

「本当もマジも私は本気だよ?それに、涼に選択肢なし!」

「はぁ…もう、嫌だよ~何なんだよ~家に帰りたいよ~。」

「駄々こねないでよ…本当に小学生に見えるよ。」

「ああ、何でこんなことになっちまったんだよ。」

「涼がテストで負けたからでしょ?」

 そう。事の発端は妹である華琳(かりん)の一言から始まったのだ。


   ~回想~

 バアアアァァァンンン!!

「うおおおおお!!!!????」

「涼!」

 振り向くと部屋のドアが蹴破られていました。

「涼!無視するなんてひどいよ!」

 涙目のイノシシがこちらを見ながら怒っている。

「ああ、ごめん。ヘッドホンしてて何も聞こえなかった。それより…」

 俺は華琳の後ろに倒れる板(元ドア)を一瞬みて

「なぁ、これで何回目?少し体がでかくなったからってこれですか?力があるから実力行使ですか?」

 華琳は高校に入る前から急激な成長を遂げ身長が10cm弱伸びました。身長が伸びるということは当然筋肉も増えるということで。

「いや~ははは~」

「いや~ははは~…じゃねぇんだよ!これでドア変えるの4枚目になるぞ!いい加減ドア蹴破る以外何か文明的なドアの開け方考えろ!」

「いや~カギカカッテルカラシカタナイヨネ。」

「なぜ片言になる。」

「それより!それより!」

 華琳はビシッ!と俺を指差す。

「勝負だ!涼!」

「はぁ?何の勝負だよ?」

「高校の中間テストだー!」

 ……………………???

……何考えてるの?(かな)うわけねぇだろ。俺自分でも言うのなんだけど頭いいよ?少なくとも今、目の前に立っているイノシシよりは頭いいよ?それが?テストで勝負?めんどくせぇ。

「敵うわけねぇだろ?それに勝負して俺に何のメリットがある?めんどくさい。」

「いいじゃん?点数見せ合うだけだし。どこがめんどくさいのよ?」

「一々負けたことに落胆するお前を見ること。」

「むきー!何それ!勝つ前提で言ってるでしょ!」

「当たり前じゃないか?俺のどこに負ける原因がある?」


「………………………………チビのくせに。(ボソッ)」


「今なんか言った?言ったよね?聞こえましたよ?おい?こっち見ろよ?」

「ナニモッテイナイヨー。」

くそ!俺より身長がちょっと高いからとふざけてやがる。一度完膚なきまでに打ち負かしてやろうか。

「よし。いいだろう。受けてやる。」

「よっしゃー!」

 めっちゃガッツポーズを取るイノシシ。この後起こるテストの惨状を知らないとは…ふっふっふ、微笑ましい。

「もう、言うことないだろ?さぁ、帰った帰った。」

「待って。」

「なんだ?まだなんかあるのか?生憎俺は新作のゲームを友達から借りていてだな―――」

「一つ条件があーる!」

「………条件を付けるのは俺の方では?」

「一つ条件があーる!」

「なぜおまえが条件を出す?」

「一つ条件があーる!」

「話聞けよ!」

「一つ条件かあーるっ!!!!」

 ……だめだ。こいつ話聞く気全くないぞ。とりあえず話だけでも聞くか。

「いってみろよ。」

「ただ勝負するのは楽しくないので罰ゲームを決めよう!」

「内容は?」

「一つだけなんても言うことを聞く。」

 ふぅ。俺の妹ってここまでアホだったのか。負け戦に賠償金まで払う手筈を整えるとは…。

「いいだろう。まぁ、覚悟しとけよ。」

「ふっふっふ、そっちもな!」

 華琳は悠々と俺の部屋を出てゆく。

「さらばだ!……がんばってドア直してね♪」

「まっ……て……。」

 遅かった…また逃げられてしまった…。なんてことだ…。

「うわぁ…マジかよ。これ一人で直すのかよ。俺はドア職人じゃねぇんだぞ。」

 板(元ドア)を見ると幸い金具が外れているだけの様で簡単に直せそうだ。

「4枚目にして上手くドアを蹴破る技術を習得したのか…。全く無駄な技術を。」

 私の特技はドアを壊さず蹴破ることです!ってか!?もう蹴破ってるから壊れてるんだよ!


 家にある工具を持ってきてドアを直し一息つく。

「ふぅ…終わった~。だっる。すっごいだる。あいつ帰って来たら数式の地獄に陥れてやろう。」

 頭を抱えて転げまわる華琳の姿が思い浮かぶ。いい気味だ。ドアを蹴破った代償を取らせねばいかん!

待っていろ!ドア!きっと君の仇は俺が取ってやる!

計画を立てながらも、ふと思う。

「あいつ勝つ気満々だったな…。」

 あの自信とやる気はどこから湧いてくるのだろうか。ここ数年は勝負なんて言わなかったのに。

「まっ!あいつに負けるなんてないんだけどね!」

 若干、フラグみたいな台詞だがフラグなんて回収すればいいのだ。回収すれば。

「おっと、ゲームの続きをしなければ。」

 華琳が相手だし、勉強なんて明日からやればいいかな?


   テスト返却日

 「バアアアァァァンンン!!…ってあれ?開いてる?」

「お前壊す気満々だったね?「バアアアァァァンンン!!」とか言って壊す気だったよね?」

「ソンナコトオモッテモミナカッタヨ。」

……こいつ都合が悪くなると片言になること自覚してるだろうか?考えていることがバレバレだが…。

「…まぁ、いい。お前も今日テスト帰ってきただろ?それでどんな風に勝負する?1教科?全教科?」

「全部に決まっておろうが!たわけ!」

「黙れぃ!無礼者が!この紋所が目に入らぬか!」

 俺はすかさずすべてのテスト用紙を並べる。合計は489点。まあまあな点数だ。だが、今まで華琳が440点を超えるところを俺は見たことがない!なぜなら、華琳は英語が苦手だからだ!

「さあ、跪け。そして、俺を敬え!」

 椅子に踏ん反り返って華琳を見る。

「りょ~うちゃ~ん?言いたいことはそれだけでちゅか~?」

 ニタニタ笑いながらゆっくりと俺に近づいてくる。

「なんだと?」

「これを見ろ!」

 華琳は俺に5枚のテスト用紙を突き付ける。合計。490点。…おかしい計算を間違えたらしい。少し熱があるみたいだ。今日は早めに寝よう。改めて、合計。4・9・0。490点。

「お前の負けだ。」

「ふざけるな!これは何かの間違いだ!こんなことがあるはずないだろ!」

「いいや、本当だ。私は弱点である英語を克服したのだ!」

「そんな…馬鹿な。」

「はっはっはー!いい気味だ!復讐心に燃える私に敵う者などいないのだ!さあ、次はこっちに言わせて貰おうか!」

 目の前にいたのは清々しい顔をした悪魔でした。

「何でも言えよ。できる限りで従ってやるよ。」

 俺はというと……、妹に負けたショックで完全に燃え尽きて灰になったボクサー状態でした。

「では、罰ゲームを宣告する。」

 一々仰々しく言いやがって腹が立つぜ。とか普段は思っただろうけどショックで反応できませんでした。

「お兄ちゃんはこれから来る夏休みの間、私の弟として過ごしてもらいます。」

…………

………

……

へ?

なんとおっしゃいましたか?妹様?

余談「数式地獄編」

「っ!!」

 家に帰ると涼が玄関で仁王立ちしていた。

…やばいやばいやばい!めっちゃ怒ってる!なんで!?なんで!?私何か悪いことした!?だめだ、笑ってる。ここはご、ご機嫌とらなきゃ…きっとあの地獄が始まってしまう!

「おに~ちゃん!どうしたの?そんな怖い顔して?華琳怖くて泣いちゃいそう…うるうるしくしく。」

 どうだ!この最強の声と顔でこんなか弱い少女がうるうるしくしく泣きそうになっているんだ!これは怒れないだろう!あれ?なんか目を閉じて深呼吸してる?なんで臨戦態勢取ってるの!?まさか!私の攻撃が通じなかったのか!

「――華琳…。」

「はひっ!」

「ドアが壊れた時、金具にかかった力の計算をしよう。」

 ……ドア?壊れた時?

「………ああ!そのことか!」

ブチッ!…私は確かに聞いたのです。何かが切れる音を。

 

 その後、涼の部屋に行き理解できるまで金具にかかった力を計算しました。

「そこちがーう!」

「………。」

「そこはこの公式を入れるっていっただろ!」

「………。」

「ここ計算間違ってる!」

「………。」

「はい、次は下の金具にかかった力の計算しまーす♪」

「………にゃあ"あ"ぁぁぁ!!!!」

 ついに限界が来たのか頭を抱えて転げ出す華琳。

仮にも女の子が奇声上げながら転げまわるとは…計算怖い。

「やっと壊れたか。」

「にゅわあぁぁぁ!!!!」

「今回は結構長かったな…少しずつではあるがこいつ頭良くなっているかもしれんな。」

「にょおおぉぉ!!!!」

「もう、いいから。部屋帰ってもいいぞ。」

「本当!?やった!バイバイ!」

 猫のような素早い動きで帰っていく華琳。

「…一応、限界来るまで素直にやるから悪いやつではないんだよな…。」

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