第五話 猫の身体、猫の一日
第五話 猫の身体、猫の一日
朝、美咲は仕事へ向かう準備をしていた。
「今日は帰り、ちょっと遅くなるかも。
あき、いい子にしててね」
あきおは玄関までついていき、
靴を履く美咲を見上げた。
(行くのか……そりゃ仕事だもんな)
美咲はしゃがみ込み、
あきおの頭をそっと撫でた。
「帰ったらいっぱい遊ぼうね」
ドアが閉まる。
部屋に静けさが戻る。
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◆ 猫の身体は眠い
美咲がいなくなった瞬間、
あきおはふわぁっと大きなあくびをした。
(なんだこれ……めちゃくちゃ眠い……)
猫の身体は、
思考より先に眠気が襲ってくる。
ソファに飛び乗ろうとして──
失敗して落ちた。
「にゃっ!?」
(……俺、こんなに運動神経悪かったっけ?)
もう一度挑戦すると、
今度は軽々と飛び乗れた。
(できた……!
いや、なんで一回目失敗したんだよ……)
そんな自分にツッコミを入れながら、
ソファの上で丸くなる。
太陽の光がぽかぽかと暖かい。
(……ちょっとだけ……)
気づけば、深い眠りに落ちていた。
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◆ 美咲、帰宅
夕方。
玄関の鍵が回る音で、あきおは目を覚ました。
「ただいまー……あき、起きてる?」
あきおはソファから飛び降り、
玄関へ駆け寄った。
「にゃあ!」
美咲は笑顔になった。
「お迎えしてくれるの……かわいい……」
そして、両手いっぱいの紙袋を見せた。
「今日はね、いろいろ買ってきたよ。
あきのために」
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◆ 猫飼育用品が並ぶ
リビングの床に、
美咲が買ってきたものが並べられる。
- 猫用ベッド
- 爪とぎ
- おもちゃのじゃらし
- ボール
- キャットフード
- 猫砂とトイレ
あきおは思わず固まった。
(……本格的だな)
美咲は嬉しそうに言った。
「これで、うちの子としてちゃんと暮らせるね」
胸がじんわり温かくなる。
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◆ おもちゃに反応してしまう
美咲が猫じゃらしを振る。
シャッ、シャッ。
(……いや、こんなのに反応するわけ──)
身体が勝手に飛びついた。
「にゃっ!!」
(ちょっ……俺……!?
なんで跳んでんだよ!!)
美咲は大笑いした。
「かわいい……!
あき、すごいジャンプ!」
あきおは恥ずかしくて耳が熱くなるような気がした。
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◆ 猫砂の心地よさ
美咲が猫トイレをセットし、
砂をサラサラと入れる。
「ほら、あき。
ここがトイレだよ」
あきおは近づき、
前足で砂を踏んだ。
サラ……サラ……
(……気持ちいい……)
本能が勝手に動き、
前足で砂をかく。
サッ、サッ、サッ。
(やめろ俺……!
なんでこんなに楽しいんだよ……!)
美咲は優しく笑った。
「上手だね。
ちゃんと使えるんだ」
あきおは、
なんとも言えない誇らしさを感じてしまった。
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◆ 夜、美咲の膝の上で
美咲はソファに座り、
あきおを膝に乗せた。
「今日ね、仕事中ずっと考えてたの。
あきが家で寂しくないかなって」
あきおは喉が勝手に鳴った。
ゴロ……ゴロ……
(やめろ……!
なんで勝手に……!)
美咲はその音に気づき、
そっと微笑んだ。
「……幸せそうな声だね」
あきおは、
その言葉に胸が熱くなった。
猫の身体でもいい。
美咲が笑ってくれるなら、それでいい。
そう思いながら、
美咲の膝の上で目を閉じた。




