第十四話 訪問者の視線
第十四話 訪問者の視線
休日の午後。
美咲は部屋を片づけながら、
そわそわしていた。
「今日は久しぶりに、
大学の友だちが来るんだよ、あき」
あきおは耳をぴくりと動かした。
(友だち……?
俺のこと、どう思うかな)
美咲は笑いながら続けた。
「猫好きな子だから、
きっとあきのこと喜んでくれるよ」
その言葉に、
あきおは少し安心した。
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◆ 友人・沙耶の来訪
インターホンが鳴った。
「はーい!」
美咲がドアを開けると、
明るい声が響いた。
「久しぶり、美咲!
元気してた?」
「うん、なんとかね。
入って入って」
沙耶は部屋に入ると、
すぐに目を丸くした。
「わっ……猫ちゃんいるの!?
いつから飼ってるの?」
美咲は嬉しそうに答えた。
「最近ね。
この子、“あき”っていうの」
沙耶はしゃがみ込み、
あきおに手を伸ばした。
「かわいい〜……
でもなんか……不思議な子だね」
あきおは固まった。
(……やばい。
この人、勘が鋭いタイプだ)
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◆ 沙耶の違和感
沙耶はあきおをじっと見つめた。
「なんだろ……
目がすごく人間っぽいっていうか……
表情が豊かっていうか……」
美咲は笑ってごまかした。
「そう?
私も最初びっくりしたけど、
慣れると可愛いよ」
沙耶は首をかしげたまま、
あきおの頭をそっと撫でた。
「……なんか、
“考えてる”って感じがするんだよね」
あきおは心の中で叫んだ。
(考えてるよ!!
めちゃくちゃ考えてるよ!!
頼むから気づかないでくれ!!)
尻尾が緊張でぴんと立つ。
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◆ 美咲の変化に気づく友人
沙耶はソファに座り、
美咲の顔をじっと見た。
「ねぇ、美咲。
なんか……前より元気になった?」
美咲は少し驚いた。
「え……そうかな?」
「うん。
あきおくんが亡くなった時、
すごく落ち込んでたじゃん。
でも今は……
なんか、前より柔らかい顔してる」
美咲はあきおを見つめた。
「……この子がね、
そばにいてくれるから」
沙耶は優しく微笑んだ。
「そっか。
いい子だね、あき」
あきおは胸が熱くなった。
(美咲……
俺が支えてるって、
ちゃんと伝わってるんだな)
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◆ 沙耶の最後の一言
帰り際。
沙耶は玄関で靴を履きながら、
ふと振り返った。
「ねぇ、美咲」
「ん?」
「……この子、
あきおくんに似てるよ」
美咲は一瞬、息を呑んだ。
「……そう、かな」
沙耶は微笑んだ。
「うん。
なんとなく、ね」
ドアが閉まる。
部屋に静けさが戻った。
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◆ 二人きりの部屋で
美咲はあきおを抱き上げた。
「……似てるって。
沙耶、鋭いなぁ」
あきおは美咲の胸に顔をうずめた。
(似てるんじゃない。
俺なんだよ……
でも言えない)
美咲はそっと撫でながら呟いた。
「……あき。
あなたが来てくれて、本当に良かった」
あきおは喉を鳴らした。
ゴロ……ゴロ……
その音は、
美咲への答えそのものだった。




