第十二話 寄り添う気配
第十二話 寄り添う気配
美咲は、朝からどこか元気がなかった。
仕事へ向かう準備をしながら、
ため息をひとつ落とす。
「……今日、行きたくないなぁ」
あきおはその声に耳をぴくりと動かした。
(どうしたんだ……?)
美咲は鏡の前で髪を整えながら、
ぽつりと呟いた。
「最近、仕事うまくいかなくてさ……
あきおがいた頃は、もっと頑張れたのに……」
その言葉に、
あきおの胸がきゅっと締めつけられた。
(……俺はここにいるよ。
姿は変わったけど……)
あきおは美咲の足元にすり寄り、
そっと頭を押しつけた。
美咲は驚き、
そして微笑んだ。
「……ありがと、あき。
行ってくるね」
玄関のドアが閉まる。
部屋に静けさが戻った。
---
◆ 美咲の帰宅
夕方。
鍵の音がして、美咲が帰ってきた。
「ただいま……」
声が少し疲れている。
あきおは駆け寄り、
美咲の足に身体をすり寄せた。
「……あき。
今日も待っててくれたんだね」
美咲は靴を脱ぎながら、
あきおを抱き上げた。
その腕の力が、
いつもより少しだけ強い。
(……大変だったんだな)
---
◆ ソファで寄り添う
美咲はソファに座り、
あきおを膝に乗せた。
「今日ね……
上司に怒られちゃってさ」
あきおは喉を鳴らした。
ゴロ……ゴロ……
(大丈夫だよ。
俺がいる)
美咲はその音に気づき、
そっと微笑んだ。
「……あきって、
なんでこんなに慰め上手なの?」
あきおは目を細めた。
(それは……
美咲のそばにいたいからだよ)
---
◆ 人間の頃の癖
美咲がテレビをつけると、
あきは自然と美咲の肩に前足を置いた。
美咲は驚いた。
「え……?
あき、それ……
あきおがよくやってた癖……」
あきおは固まった。
(やば……!
身体が勝手に……!)
美咲はしばらく黙っていたが、
やがて小さく笑った。
「……そっか。
似てるだけだよね。
ごめん、変なこと言って」
あきおは胸が痛んだ。
(似てるだけじゃない。
俺なんだよ……
でも言えない……)
---
◆ 夜、眠る前に
美咲は布団に入り、
あきおはその横に丸くなった。
「……あきお。
あなたがいなくなってから、
ずっと寂しかったよ」
あきおはそっと美咲の手に頭を押しつけた。
美咲は涙をこぼしながら微笑んだ。
「でもね……
あきが来てくれて……
少しずつ、前に進めてる気がするの」
あきおは胸が熱くなった。
(美咲……
俺も……
お前を支えたい)
美咲は目を閉じ、
小さく呟いた。
「……ありがとう、あき」
あきおは静かに寄り添いながら、
美咲の寝息を聞いていた。
この時間が、
ずっと続けばいいのに。
そう思いながら、
ゆっくりと目を閉じた。




