第10章:明日へ伸びる枝
樹々が周囲にそびえ、その枝は冷たく緩やかな風に揺れていた。
銀の月光が樹間から漏れ、森の床にまばゆく舞っている。
僕は子供を腕に抱き、木々の間をゆっくりと歩きながら、草地を探していた。
数歩進むと、月光に包まれた小さな空間が現れた。
僕は立ち止まり、耳を澄ませた。
『風は誰かを感知しない』
僕はしっかりした木の幹にもたれかかる。昼間の陽射しで温かくなっている。
風が僕らを包み、寒気を和らげてくれる。
『この温かさで十分だ』
そう思いながら、風の暖かさを優しく防護の包みへと織り込んだ。
身体はほとんど疲れを感じなかった。
試験勉強、ゲームの徹夜、アニメ一気見の繰り返しが耐久力を磨いたのだろう。
『少し確認してから寝よう』と僕は決めた。
『セバス、集めたクラスカードを見せて』と僕が命じると、
カードが並ぶ一列が目の前に現れ、それぞれにクラス名とイラストが刻まれていた。
うち16枚は「ウォリアー」、1枚は「チャンピオン(ウォリアー)」と記されている。
『ほとんどがオークの斧使いで、一部はロングソードか…僕はオークにしか使えないのか?』
と疑問に思った。
[ イラストは入手場所を示すリマインダーでしかありません、マスター。ウォリアークラスは誰にでも与えられます — 元の所有者のスキルも継承します。 ]
『なるほど、ただのフレーバーか…問題ない』
そう思いながら、僕は子供を見下ろした。
『夕食の用意はしていなかった…だけど彼女は疲れている』と気づく。
[ 子供はまだ目覚めそうにありません。マスターも休養を。 ]
『その通りだ、セバス』
僕は欠伸して言った。
『周囲を見張っていて。何かあったら起こして』と頼み込むと、
目の前の木漏れ日の下で、僕はまぶたを閉じた。
—
数時間後、柔らかな朝日が木々を通して差し込む。
目を開けると、子供はまだ僕の腕の中で眠っていた。
『どれくらい眠っていた?セバス』と尋ねる。
[ 約12時間です、マスター。 ]
『夜の間に何かあった?』
[ 何も接近せず、すべて静穏です。 ]
『よかった。起こして食べさせよう。』
『セバス、他の元素親和性を全部買って』と指示。
[ 大地の親和性(低)を取得 ]
[ 水の親和性(低)を取得 ]
[ 火の親和性(低)を取得 ]
[ これらの元素理解は非常に優秀です。親和性を調整中… ]
[ 大地・水・火の親和性が最大値になりました。 ]
[ すべての元素精霊から好意を得ました。 ]
[ 称号解放:自然と一体 ]
『まず顔を洗うか』と僕が考えると、薄い霧が頬を撫で、水が凝縮して渦巻いた後、暖かな風が瞬時に乾かした。
子供が腕の中で身じろぎ、小さな手足を伸ばす。
僕が見下ろすと、瞳が好奇心で揺れて、まぶたがゆっくり開いた。
『あれ?』と思った。
『水のせいかな?』と空中で泡を作ると、泡は子供の頬へ漂い、汚れを落とす。彼女が手を伸ば・・・泡が顔で弾けた。
僕は彼女の喜ぶ顔に笑みを浮かべた。
『ブラシがないから、“グルグル”で対応かな?』と僕は思った。
僕が「グルグル」と音を立てると、空中に水滴が形作られた。それを横に吐き出すと水滴は蒸発した。
『ここで唾を吐くわけには…』と考えつつ、
そっと子供を膝の上に座らせ、新しい水の瓶を召喚した。
「これを飲んでいいよ」と優しく言うと、
無理に重さを持とうとしていた彼女に風で軽さを与えた。
彼女は瓶を傾け、小さな口でゆっくり確実に飲み、残りが四分の一になると小さな手で返した。
『優しい子だ…』と僕は思いながら、
新しい瓶を手に出現させた。
「心配しないで。まだたくさんあるからね。」と僕が安心させると、
子供の腹が柔らかく鳴った。
僕は目を閉じて微笑む。
「まず食べようか」と言い、
彼女を膝の上に横たえ、風の渦でパンが浮かんだ。
『小さくちぎるべきかな…?』と思った瞬間、風が半分を切り、もう半分を一口サイズに完璧に裂いた。
[ そのサイズは子供に理想的です。年齢と状態を考慮しました。 ]
『さすがセバス』と僕は称賛。
[ 些細なことはお任せください、マスター。 ]
『わかった、信頼する』と僕は答え、
子供の前に浮かぶパンの小片を手で整える。まるで高級レストランのような配置に…セバス、やっぱ完璧な執事だな、と僕は心の中で笑った。
子供はパンを見つめ、目を見開き、腹の虫が鳴ると同時に手を伸ばした。
『まだまだあるから、満足するまで食べていいよ』と僕が優しく仰ぐと、
彼女は僕を見上げてからパクリと一口ずつ、ペースを上げて食べ始めた。
しかし急にむせた。
『ゆっくり!』と僕は叫び、水の瓶を取り返す。
傾けると水滴が空中を踊り、彼女がむせながら咳き込む。
僕は優しく背中を叩き、鼓動が高鳴った。
彼女の表情が曇り、瞳に悲しみが浮かぶ。
僕は髪を撫でながら…
「大丈夫、僕がいる限り飢えも渇きもさせないよ」
と誓った。
彼女は見上げ、戸惑いと純真が混じる瞳を見せた。
僕は空になった皿を見て、数片だけ残っているのを確認した。
『セバス…』
[ 補充を始めるところでした、マスター。 ]
風でできた皿が再び浮かび、新鮮なパンで満たされた。
子供の瞳が喜びに大きくなり、僕を見て無言の問いかけをしてきた。
「“あなたの守護天使”がやってくれたんだよ」ととっさに答える。
彼女は首をかしげ、そして初めて言葉を発した。
『えんじゅ…?』
柔らかく、甘い声が暖かく胸に響いた。
『かわいい声だ…』と僕は心がきゅっと締め付けられる思いで考えた。
感情の急な波を振り払いつつ、
「天使ってわかる?」と尋ねると、
彼女は頷いた。
「本物の天使じゃないよ。いい人が助けてくれたんだ」と僕は説明を試みた。
彼女は困惑した表情を浮かべたが、また腹の虫が鳴った。
「さあ、まず食べよう」と僕は話題をそらして提案した。
僕は画面を確認した:
[ ショップ:1150 ポイント ]
『プレーンなパンはいいけど、もっと栄養が必要だな…これだけじゃ足りない』と心配した。
『このポイント、すぐなくなっちゃう…』
別の青い画面を見る。
「日用品」のショップメニューには、パン、水、ジャム、ソースなどの基本品が並ぶ。
『俺の世界の素材を頼んだんだけど、原材料だけで調理器具がなかった。しかも購入はモンスターキルポイントだけだ』と僕はため息。
[ その特殊能力は世界のバランスを崩します、マスター。 ]
[ 不可能でした。 ]
『武器も混乱起こすしな』と頷く。
「日用品」メニュー:
—‑—‑—‑—‑—
本日の割引品: 〔50% OFF〕
パン ×10:10 ポイント
水 ×10:10 ポイント
――――――――――――――
フレーバー:
アップルジャム(500g):50 ポイント
トマトソース(200g):50 ポイント
〔他の表示〕
――――――――――――――
フルーツ:〔ロック中〕
〔200ポイント以上購入でロック解除〕
—‑—‑—‑—‑—
『整理されてて助かるな』と僕は前向きに考える。
パン、水、ジャム、ソースを購入した。
[ ショップ:1030 ポイント ]
再び子供を見ると皿は空になっていた。
彼女は見上げ、未だ飢えているように見えた。
僕は手をかざすと、新たなパン片が浮かび上がった—今度はジャムがたっぷり載っている。
子供はうっとりとした顔でパンを見る。
僕は一切れ味わった。甘酸っぱいジャムが舌先で爆発する。
彼女はそれを見て、真似をした—小さな口でジャムを味わう。
頬がほんのり赤みを帯び、瞳に輝きが戻った。その喜びの表情が…僕の何かを温めた。
『こんなに純粋な喜び、久しぶりだ』と僕は思った。
僕はセバスに向き直る。
「予定変更だ。まず人間の集落を探して、彼女をきちんと治療させよう。途中でアンデッドに遭遇したら簡単に済ませればいい。いなければ後で探す」
と静かに言った。
[ 承知しました、マスター。 ]
『人間の王国は面倒だし教会は腐ってるかもしれない…でも彼女の治療は絶対必要だ』と僕は心に決めた。
[ トラブルを起こす輩はどうしますか?ならず者や腐敗した司祭など? ]
「面倒なならず者?オレのアニメや漫画のデータもあるのか、セバス?」と僕は尋ねた。
[ はい、マスター。 ]
「完璧だ。それなら言おう…邪魔なら殺す。嫌なら司祭を一人倒して回復スキルをもらえばいい」
と冷静に言った。
[ 承知しました、マスター。 ]
『ただし…こうなると公敵にされるだろうな』と気づく僕。
『面倒だな…うん』と苦々しく思う。
[ マスター、人間だけが回復魔法を使える種族ではありません。 ]
『悪魔のことを言ってるなら嫌だよ、セバス』と僕は返す。
[ 悪魔ではありません、マスター。エルフのことです。 ]
『え?でも聖属性の適性は教会で長く信仰しなければ取得できないって…』と僕は混乱して尋ねる。
[ それは正しいです、マスター。ただし、エルフもまた神性を敬います。 ]
『神性を崇める種族って多かったっけ?まぁ驚かないか…』と僕は思う。
[ エルフは神を信仰しません、マスター。]
僕は驚きと困惑の表情を浮かべた。
『でも神性って言ったじゃないか』と問い返す。
[ はい。しかし彼らが崇める“神性”は神々の領域には属さず、「古代より人間の間に在った」ものです。 ]
[ 最古の divinity の一つです。 ]
[ 世界樹。]
『ああ…世界樹のことを忘れていた。でも、それは神と同じじゃないと思ってた』と僕は気づく。
[ 世界樹は自然の神性です。エルフに自然や精霊、そして癒しの力との深い親和性を与えます、マスター。 ]
『でもエルフって時々ムカつくんだよな』と僕は思う。
[ 忘れましたか、マスター?あなたには「精霊との一体」の称号があります。 ]
[ それだけでエルフに信頼されるには十分です。 ]
『なるほど、セバス…次の目的地は決まりだ。エルフだ!』と僕はため息とともに小さく笑った。
—続く—
さて…僕の小説はWebnovelの契約を断られた。
でも大丈夫。これからも書き続けることにした。
もし物語を楽しんでくれているなら、ブックマークやコメントをくれたら本当に嬉しい。短い一言だけでも。いつもコメントをくれる人、本当にありがとう。その支えが僕を動かしてくれています。ずっと続けていきたい。
これからもよろしく。