第1章:帰らぬ扉
はじめまして、ゼロと申します。
この作品は私の初めての日本語での投稿です。
異世界転生ものですが、ただの冒険譚ではなく、主人公の心の成長や葛藤を描いた物語です。
どうぞ最後まで楽しんで読んでいただけると嬉しいです。ご感想や応援もお待ちしています。
僕の名前はキラ。22歳、無職で、正直言って、大人としてほとんど機能していない。
大学を卒業してからの3年間、ただ流されるように過ごしてきた。努力しなかったわけじゃない。面接も受けたし、応募もしたし、バイトもやってみた。でも、内向的な性格と変な正直さのせいで、彼らが求める言葉をうまく嘘で塗り固めることができなかった。多分、道徳心というよりも…偽ることへの違和感。まるで誰か別の人の皮を被るみたいで、息苦しくて居心地が悪かった。
田舎の学校に通っていて、誰もアニメやファンタジーの話なんてしなかった。大学のために都会に出て、寮生活もしたけど、誰とも深く仲良くなれなかった。クラスメートには必要な時だけ話せる存在として認識されていたけど、自分の好きなことについて話せたことはなかった。故郷の唯一の友達とだけは違った。思い出すだけで胸が締め付けられる。
夜、ベッドに横になって異世界に転移することを想像した。自分の人生が嫌だったわけじゃない。ただ、違う何かを求めていた。偽らなくていい場所。もしかしたら、ありのままの自分で十分な世界。
ため息をついて、考えすぎのループから抜け出す。
家路を歩く通りは静かで、街灯の柔らかい光に包まれた閑静な住宅街。スリッパの下の舗装はまだ温かい。遠くで犬が吠え、スクーターが通り過ぎて、また静寂が戻った。
家のドアを開けてあくびをし、手で口を押さえ目を閉じた。
でも目を開けたら、
そこは僕の家じゃなかった。
目の前は玄関じゃなく、見知らぬ古くて背の高い木々に囲まれていた。空気は澄んでいて湿った土と露の匂いが漂う。木漏れ日が葉の間から差し込み、眩しくて目を細める。鳥のさえずりが遠くから響き、静けさの中で鮮明に聞こえる。野花と苔の香りが風に乗っていた。
何度も瞬きをしても心は妙に落ち着いていた。森だ。静寂だ。音も、怪物も、何もない。
ここはどこ?気を失ったのか?記憶喪失?
服を確かめる。いつものパジャマのズボンと長袖シャツ。黒髪は目にかかり、怪我もしていない。ただ混乱しているだけ。胸を軽く叩き、腕を見て、手を見た。すべてが現実のように感じた。あまりにリアルすぎる。
家に入った記憶ははっきりある。これって…異世界?
ゆっくりと周囲を見回す。森は本物だった。松の香り、スリッパの下の乾いた草のカサカサという音。車の音も人の声も都会の騒音も聞こえない。飛行機の音もない。ただ自然だけ。
少し歩いて大きな木を見つけ、低い草に囲まれた木陰にしゃがんで、ヘビや虫がいないか慎重に探したあと、木の幹にもたれて座った。
肌に触れるそよ風が苔と樹皮の匂いを運び、沈黙は圧迫感ではなく心地よかった。世界全体が何かを待っているようだった。
アニメや小説で見る異世界の舞台みたい。でもまだ証拠はない。だから意外と落ち着いている。
胸に手を当てた。変わらない。力の爆発もない。ただ…僕のままだ。何も変わらない。
すると、青い浮遊画面が現れた。
【未読の通知】
じっと見つめ、深呼吸してゆっくり吐いた。
やっぱり異世界だ。
画面をタップすると、
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キラさんへ、
ようこそこの世界へ。名前は「ヌーメン」。わかりやすく言うと、そう、異世界です。
どうやって来たかは気にしないでください。あなたの記憶は読みました。でも心配無用です。これは一度きりの行為で、許可がない限り今後アクセスしません。神のルールです。
この世界には騎士や魔法使い、クリーチャー、ドラゴンが存在します。
ドラゴン?!
ええ。あなたが気に入るだろうと思って入れました。
ドラゴンを見るのが第一歩。生き延びるのが第二歩。
読み進めると眉が上がった。
この世界には多くの神がいます。悪魔神、精霊神、獣神など様々です。彼らは選ばれし者を召喚し、力を授け、観察します。神々は自身の領域と信者を持ち、選ばれし者が世界に影響を与えるほど神力や魔力を得ます。しかし、与えれば与えるほど神々は弱くなるのです。
時には、ヌーメンの住人に直接祝福を与えることもあります。ふさわしい者、あるいは行動が面白い者に対してです。必ずしも英雄的な理由ではなく、混沌や野望、操りのために力を与えることもあります。悪魔が台頭すれば悪魔神は介入し、争いと混乱を巻き起こします。他の神々が対抗し、力の均衡は常に変化しています。
これは娯楽ではなく、政治、生存、均衡の問題なのです。
私は長い間休眠状態でした。以前の召喚では重要な役割を果たし、強力な戦士を支援し、戦争を導き、国を動かしました。それで多くの信者と膨大な神力を得ましたが、やがて飽きて止めました。見守り、眠り、時を過ごしたのです。
蓄えた神力をどう使うか迷っていた…そんな時にあなたを召喚しました。地球からのランダムな魂。
…運のいい奴だな。
神が力を与えたり召喚したりするとき、完全な記憶アクセスを得て相応しい贈り物や性格を見極めます。これは神のシステムの一部です。
あなたには何も期待していません。ただ…興味深かったから。だから好きにしろ。このシステムはカスタムメイドです。AIアシスタントのように思考を読み取り自然に対話します。性格はアニメの執事「セバスチャン」をモデルにしました。最高の執事はいつもあの名前ですから。
ちょっとかっこいいかも。
私の神名は発音できないので「カイ」と呼んでください。
わかった。
メッセージは消え、新しいボックスが現れた。
【はじめまして。私はあなたの命令を受けるシステムです。ハンズフリーアクセスのために精神接続しますか?】
「はい」とタップした。画面が変わった。
【接続完了。コマンドを思考できます。】
質問がある。このエリアはなぜこんなに平和なのか?到着以来誰も何もいない。
【神聖な防護が作動中。セットアップ完了まで保護されます。】
【外見を変えますか?】
ためらってから、落ち着いた声で言った。
「はい。シンプルに。髪は白、目は赤で黒い瞳孔と縁。体格は平均的な健康体。服は袖をまくった無地のシャツ、暗色のパンツとブーツで。」
変化が始まる前に罪悪感が波のように押し寄せた。
胸が締め付けられた。静かな期待の記憶が蘇る。遅くまで働く父の姿、家事の後の母の疲れた笑顔、夜遅くまで勉強する兄の真剣な目。彼らはできる限りのことをしてくれたけど、僕は見えない重荷を背負っていた。彼らの支えに値する証明の必要性。
子供の頃はコンピューターやゲームの世界で働くかプロゲーマーとして配信する夢を見ていた。でもそれを口にしたことはなかった。夢を見せるのは暗黙のルールへの裏切りのように感じていた。
「待って…家族は?今パニックになってない?探してくれてる?」
✦ 神のメッセージ ✦
<まだ昔の世界のことを考えているのか?そう思ったよ。>
新しいウィンドウでメッセージが来た。UIとは違い、光って強調されていた。
「カイ…君か?」
✦ 神のメッセージ ✦
<そうだ。システムがこれを処理できると思ったが、君は考えすぎだから直接聞く。昔の世界に繋がっていたいか?それともきっぱり断つか?>
「家族は…元気か?」
✦ 神のメッセージ ✦
<地球の時間とこの世界の時間は繋がっていない。複雑だがどうしたい?>
ゆっくり息を吐いた。「彼らに苦しんでほしくない。でも前に進むたびに顔を思い出すのは嫌だ。感情的なことは苦手だった。ただ…僕を消してほしい。なかったことに。」
✦ 神のメッセージ ✦
<そうか…ストレートだな。ほとんどの人は迷い、メッセージを求め、両方の世界に足を置こうとする。君はしなかった。面白い。>
僕を形作ったのは劇的な一日じゃなくて、無数の瞬間だった。アニメを見るためにスマホを隠し、興奮を抑え、誰にも気づかれないように小さくなって自分の家の影になった。
「そうだ。彼らは本当に気にしてなかった。だから期待せずに生きることに慣れた。」
✦ 神のメッセージ ✦
<そうか。判断はしない。ただ機会を無駄にするな。あのシステムにはかなりの力を込めた。今や完全な自由がある。うまく使え。>
「わかった。」
✦ 神のメッセージ ✦
<完了。地球の記録から消去。完全な区切りだ。罪悪感なし。自由へようこそ、主人公。>
静かな夜、別の人生を想像した。偽らず、ありのままの自分でいられる人生。そして今、この世界がその自由を与えてくれるのかもしれないと思った。
光る箱を見つめて、そっと頷いた。
「よし。」
劇的な言葉も、感情の高ぶりもなく、静かな一歩を踏み出した。
さあ、始めよう。
【外見変更プレビューが読み込まれました。承認しますか?】
「うん。それでいこう。」
目を閉じると、身体に奇妙な軽さが満ちた。目を開けると、望んだ通りの姿になっていた。胸が高鳴った。
【さあ、能力を選ぶ時だ。ポイントは1000。スキルか特性を選べ。】
少し遅れているらしい。みんなはもう何年も訓練を積み、強くなっている。
「早く会うと問題になるかもな。」
システム画面を見て、残りポイントを確認。
「まずはスキルを見てみよう。」
「ふむ…」
「特性はどうだ?」
微笑んだ。
「ねぇ、カイ。もっといい案がある。」
金色の画面が現れた。
✦ 神のメッセージ ✦
<???>
つづく…
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
この物語は「内向的な主人公」と「神様との奇妙な関係」をテーマに書きました。
これからも少しずつ更新していきますので、応援よろしくお願いします。
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