第二話 再会
目的地についた。
ここは、俺が文香に告白した場所であり、プロポーズをした場所だ。
一際大きな木がある場所で、ここで告白やプロポーズをすれば、必ず実ると、ここらへんでは有名な噂のある場所だ。
俺はその噂を信じて、ここで両方やったのだ。
「結果は……まぁ、成功はしてるから嘘ではないかな」
なんてつぶやきながら、木の幹に手を触れる。
「そういえば……」
「初めて遊んだのも、ここだったね」
俺が言おうとしたことを、変わりに言う声が聞こえた。
聞こえるはずのない声。二度と聞けないはずの声。
声のした方を振り返る。
「徹、久しぶり」
そこには、彼女が……文香が立っていた。
「え……文香? 嘘だ、だって……」
理解が追いつかない。文香は確かに死んだ……はずだ。
そんな混乱を知ってか知らずか、彼女は口を開く。
「あ〜……やっぱりびっくりするよね? ごめんね? 驚かせるつもりはなかったんだけど……」
「ほら、その……私達、今日結婚式の予定だったじゃん? 私、あんまり未練とかなかったんだけど、それだけが心残りで……そしたら、いつの間にかここにいて……」
「ぷっ……ふふふ」
必死に説明してくれる彼女の姿を見て、思わず吹き出してしまう。
混乱している俺よりも混乱してそうな姿が、あまりにも文香らしい。
「あ……ねぇ、笑わないでよ。徹が混乱してるから説明してあげようとしてるのに」
「ごめん……だって凄い必死だったから」
「理由はよくわからないけど、また会えて嬉しい」
俺は、そう本心から口にした。
それに応えて「……うん。私も」と、文香も言ってくれた。
それだけで、理由なんてどうでもよくなった。
とはいえ、気にならないわけじゃない。
「所で、えっと……文香って今はどういう状態なわけ?」
生き返ったのだとしたら嬉しいが、そういう訳でもなさそうだ。
だとしたら、幽霊?
そんな風な想像を膨らませて行く。
「えっとね……きっと予想はついてると思うんだけど、今の私は魂? だけの存在で、多分徹以外には見えて無いと思う」
「やっぱり、そういう感じなんだ。じゃあ、いつまでも一緒ってわけにもいかないんだな」
「うん……残念ながら」
そうか。それは残念だ。
だけど、もう二度と会えないと思っていたから、今この瞬間だけでも会えたことが嬉しい。
それならと、一つのアイデアが浮かんだ。
「それならさ、今日一日デートしない? ほら、今度いつ出来るか分からないしさ」
「……ふふ、そうだね」
これが、都合の良い妄想だったとしても構わない。俺が見ている夢であったとしても構わない。もう一度、彼女と思い出が残せるなら、何だって良い。
そうと決まれば、後は行動するだけだ。
俺達は、二人でこの公園を散策することにした。