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恋愛ゲームの主人公になったのに好きがわからなくて世界が滅びそうです  作者: cococo
元恋愛ゲームの主人公の私にできること。
37/47

元恋愛ゲームの主人公でした。手のひら返しってこういうこと

 7-③


 こっそりと戻れるほど王宮の警備はザルじゃない。

 元聖女といえど、新しい聖女を売り込みたい王宮側があっさりと通してくれる保証はない。

 度々ヨウさんが警備を突破してたけど、あれはヨウさんがすごいのである。


「王宮にちょっと顔をだしたいんだけど」


 おそるおそる出した手紙に、意外にもすぐオッケーの返事が来た。

 ヨウさんが作ってくれた小屋をざっと掃除して、残してくれていたマジックバッグを借りて出る。


「どうしてるかなってきになってた」

「うん」


 ハンドが瞬間移動でむかえにきてくれた。

 歓迎されると思わなかったからびっくりした。

 だって、帰ってくるなって読み取れる手紙をもらってから数日しか経っていないんだもん。


「あの時、相談しないで急にごめんな」

「ううん。ノリスから事情は伝えてもらったから」

「ちょっと王宮に戻る前に話せるか?」


 上機嫌なハンドにつられて私も笑顔になる。

 片づけたばかりのお茶セットをだす。

 二人分しかないから、なんとなくヨウさんが使っていた方を自分が使う。


 なんとなくあるじゃない?自分用のものを他の人に勝手に使われると。

 今度、お客様用を買っておこう。


「この茶葉、あんまり好きじゃないって言ってたやつじゃない?」

「そうだったんだけどね、おいしく感じるようになってきた」

「好きな男に染まるタイプだったんだねゆいな」

「そうだよ」


 ヨウさんが好きだった茶葉だということがバレている。

 変なところに鋭いねハンドは。

 いつもの感じが戻ってきた気がする。


 ハンドに、私が魔王だと言われたときに一気に遠ざかった距離がまた縮まった感じ。

 あの時の痛みがまだ完全に消えたわけじゃないけど、こうやって話していると二人で国を切り盛りしていた昔に戻ったようだ。

 国が大きくなってきて、セドリック様やバーディ様が入ってきて、気が付かなかったけれど、少し遠くなっていたのかもしれない。


 人目があってすぐ話し合うべきことが後回しにされる。ちいさなことだって。

 他の業務に忙殺される。

 そんなことが積み重なって。見た目以上に二人の距離が開いてしまっていたんだ。


「とりあえず、みんな心配してるから報告会を開こうと思う」

「わかった。ノリスは元気そうだったけどみんな元気?」

「うーん。大変なことになってるだろ?」

「なに?」


 初耳だ。みんな平和にやっていると思っていた。


「聖女を魔王呼ばわりしたこと、怒ってるんだ国民が」

「でも、それはハンドに思惑があったからでしょ?」

「ゆいなが、何も知らなかったことが問題だったらしい」


 まあたしかに、びっくりしたよね。話しておいて欲しかったよね。実際。


「俺に怒ってない感じで会見に臨んでほしい」

「わかったけど、それでいいの?知ってたことにした方がいいならそういうよ?」


 嘘は嫌いだけど、大切な人を守るためなら別だ。


「嘘は少ない方がバレない。結局、こういうのはされた方が何も思ってないって表明するのが大事なんだ」

「何も言ってくれなくて悲しかったことはじゃあ黙ってたほうがいいんだ」


 少し責めるようね睨むと、ハンドが少しひるんだ。

 そこまで怖い顔してた?


「そんなことされたら、多くの人が俺を責めるだろうな。まあいいけど、責めてくる奴に罪悪感を抱かせて加害者に仕立て上げるのは得意だ」

「え。。。何それ怖いんだけど」


 今度は私がひるむ番だった。無意識に体が一歩下がる。


「信奉者って便利だよな。こっちの意図を勝手に想像して、俺の為とかを大義名分にして、攻撃をする。いざとなったら俺は別に何も言ってないから勝手にやったこととして切り捨てバイバイ。そんなやばい奴らも俺が適当にかまってやれば、上機嫌だし、何かあっても俺のことに関しては自分が悪かったと反省してくれる」

「え、何言ってるの?」

「まあ、わからないよなゆいなは女だから。異性ファンは男。男は女が何かあるとすぐに切り捨てる。女信奉者は、男には弱く女には厳しい。男でよかったよ。おれ」


 目の前にいるのは本物なのだろうか?魔王?

 ハンドにはそういう非情なところがあるとは知っていたけれど改めて本人の口から出ると衝撃がすごい。

 心配になってそっと聖属性の魔法を浴びせてみた。


 魔王が聖女にやられるのって聖属性の魔法持ちだからだよね?たぶん。そうしたら、倒せないまでも、聖属性の魔法になにか嫌悪感みたいなものあるはず?


「魔法?ゆいなが使えるのは防御と清めか。酒臭かったか?」


 自分をクンクンと嗅いでいる。

 こっそり魔王かどうかの確認を試したとは気がついていないようだ。


「昨日も夜遅くまで飲んでたの?」

「まあ、それが一番楽しい時間だからな、ゆいなが俺に同意すれば異を唱えてるやつは全員、ひっくり返るぞ。ざまあみろだ。ゆいなと笑顔で元の関係を保っていることをアピールするだけで、誹謗中傷を勝手にしていたのはあっち。悪いのはあっちになる。とにかく頼んだぞ」


 こわいな。誹謗中傷はもってのほかだけど、それを自分のファンに責めさせてハンド側を正義としてしまう手法?

 そこまではしないか。


「じゃあ、飛ぶぞ」

「はい!」


 一瞬で景色が変わる。

 目の前に人が立った。

 私が前に好んでいたような服を着ている。


「おかえりなさい、ゆいな」


 ノリスに目を奪われる。

 髪型も似てる。後ろ姿を見たらどっちかわからないかも。

 手足はすらっとしてて、出るところが出てるところが、前から見たら別人とわかっちゃうところかな。


 女の子がみんな憧れるスタイルをしている。

 髪の毛の艶もキラキラで、自分のパサついた髪の毛が恥ずかしくなった。

 お手入れ頑張ろう。


 気合がものすごく入るほどの美貌が目の前にあった。

 恋する乙女はきれいになるっていうから、そういうことかな?


「ただいま、ノリス」


 私を見つめながらノリスは目を細めた。


「これから、王宮で暮らすんですって?ゆいな。お部屋の用意もしてあるわ。物の場所がわからないときは何でも聞いてね」


 すっかり、ここの女主人みたいだ。

 私は頷いた。

 これが今の状況なのだ。ノリスが中心に回している。聖女としても、ハンドのパートナーとしても。


 ノリスに命じられて侍女たちがお茶の用意を始めている。

 私に陰で文句を言っていた侍女たちだ。

 配置が元に戻ったらしい。


 すこし、砕けた様子で話しているところをみると、関係は私の時よりも良好なようだ。

 どんな魔法を使ったんだろう。魔法って本当の魔法じゃなくて、うまい方法で立ち回ったってこと。惚れる魔法とか使ったとかそういう風にはおもってない。もちろん。

 ノリスは優雅に席に座ると私とハンドにも座るように促した。


「帰ってくるのを首をながくしてまっていたのよ」


 笑顔の中で、少し目が腫れぼったいのに私は気が付いた。

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