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恋愛ゲームの主人公になったのに好きがわからなくて世界が滅びそうです  作者: cococo
恋愛ゲームの主人公をクビになったと思う。多分。
33/47

恋愛ゲームの主人公に代わりがいるようです。だから。

 6-③


 少し離れたところにあるという元の世界に戻る穴。道中、色々なことを話した。


「ここは魔王が復活したときに君が防御壁を張ってくれたから助かったんだ」


 ここら辺一体は、領地の中でも人が住んでおらず防御壁の対象から外された場所だった。


「君の防御壁が消える前にすぐにこの場所に来て、防御壁を張りなおしたんだ。今は精霊たちが防御壁を保ってくれている」

「え?精霊さんたちも防御壁を張れるんですか?あといつの間に集団になったんです?」


 私が知っているのは一人だけだ。


「魔法合宿したんだ。俺を助けてくれた精霊が自分の仲間たちも助けたいと頑張って、だんだん数が増えて」


 ほら、とヨウさんが声掛けすると

 無数の光が点滅している。

 すごい。

 精霊さんと合宿。ヨウ先生の授業。私も受けたかったなぁ。


「頑張ったんだね」


 たぶん少し大きいのがいつもの精霊さんだと思う。

 褒めるとふよふよと顔の周りを飛んで少しくすぐったい。


「元の世界に戻ったら何をしたい?」

「それは元の世界に戻った時にはなすよ」

「たのしみにしてるね」


 希望が不安を包み込んでくれる。ヨウさんの話を聞くためにも絶対に戻ってみせる!


「君が何をしたいのかも気になる」


 秘密です。という代わりに微笑みながら、ヨウさんの隣に並ぶ。

 道はほぼ人が通ったことがないからだと思うけれど荒れていて、草が生え放題だったけれど、魔王が支配している外側の世界の何もない状況を思ったら、これが生というものなのだと感じられた。


 ヨウさんがどこからかズボンを私のために用意してくれていたからよかったものの、聖女のあのピラピラとした防御力ゼロの服だったら足が傷だらけになっていたと思う。

 ちゃんと私のこと考えてくれているのがうれしい。

 一緒に帰りたいと思ってくれる存在に昇格しているってことだと思いたい。


「ついたよ」


 ヨウさんが茂みをかき分けると、前に突然教会に現れたような裂け目がぱっくりと開いていた。


「これ、世界に見つかっていないからこのままなのか、見つかっていても害がないから放置なのか、それは未知数だな」


 裂け目の中は暗くて何も見えなかった。光なんて一筋もない。ただ、暗闇が広がっている。


「この裂け目のおかげで私はヨウさんに出会えたんですね」


「うん。あっちの世界から無理やりこじ開けたんだ」

「え?」

「目的があるって言っただろこの世界に、そのためにある人に開けてもらったんだ」


 え?ゲームの世界に来れる穴をあけられるある人?

 向こうの世界ってそんなにファンタジックなことが起こる世界だっけ?

 ある可能性が脳内をよぎる。


「もももももしかして、ヨウさんって私と違う世界から来た人なんですか?」

「同じだよ」


 あっさりした答えが返ってきた。


「信じる信じないは自由だ。でも、君は元の世界に帰れないならチャレンジしないかい?」

「ヨウさんはいるんですよね。なら行きます」

「ああ。いる」


 ヨウさんが満面の笑みを浮かべた。

 私の返答が嬉しくてたまらないというように。

 その笑顔の意味を考えて顔が熱くなる。


「君は僕がいるならば、元の世界に戻れなくても構わないと思ってくれているのが嬉しい。君の僕への気持ちが好意的なものだといいなと想像をしたことが何度もあったけれど、実際に目の当たりにすると、すさまじい破壊力だな。君はすごいね」


 照れくさそうにロープを取り出すと精霊さんに端っこを持たせている。精霊さんはそれをもって木に結びつけたあと、ロープに次々とくっついた。ヨウさん対精霊さんで綱引きを始めるような感じ。


「あの、ふつうロープの端っこは私に結びません?離れないように」

「さっき言ったろ、なぜこの穴が残されているのかわからないって。だからとりあえず穴の先を確かめてくる。戻ってきたら今度こそ一緒に行こう」

「いやです。一緒に」


 もしもがあってからでは遅いのだ。


「危険かもしれないけれどいいの?」

「はい!」

「そう。本当ならおいていかないといけないんだろうけど。わかった。行こう」


 ヨウさんの腕に結ばれていたロープがほどかれて、私の腰にまかれた。そのままヨウさんのこしにもまかれて、電車ごっこしている人みたいになった。


「運命の糸、小指じゃなくてこういう風にがっちり結べるところにあればいいのにね」


 反対側はそのまま木に結んである。

 最後にあちら側についてロープを切って精霊さんたちに無事についたと知らせるためらしい。


「彼ら心配性でさ、短い間だったけどなんか親みたいだった」


 私には点滅する光でしか認識できないけれど、ヨウさんにはどう見えてるのだろう。


「恋人じゃなくて?」

「精霊って絶世の美女のイメージあるよな確かに」

「え?違うのどんな感じ?」

「うーん。口で説明するの難しい。帰ったら絵にかいてあげるよ」


 なんて、言いながら穴に二人で足を踏み入れた。

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