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恋愛ゲームの主人公になったのに好きがわからなくて世界が滅びそうです  作者: cococo
みんなの期待に応えられない恋しちゃだめですか?
24/47

恋愛ゲームの主人公。世界に見捨てられる。魔王復活させてもなんとか世界は続いてる

 4-⑤


 魔王を復活させてしまって、他の国からのクレームが入り続けているらしい。

 執務室は大わらわで対応に追われていた。


「聖女、A,国から貿易関税値上げの打診が来てます」

「B国もです」

「このままでは、我が国がおわります」


 あの時、私はこの星すべてを囲い、魔王と自分たちの棲み処を分断することに成功した。

 だけど残念なことにそれを維持する力はなく、その少しできた猶予でいままでの魔道具を利用している防御壁を強化して魔王が入れないようにするぐらいしかできなかった。


「全く好き勝手言ってくれて、あのまま他の国を見捨てた方が良かったかもしれませんね?」


 面倒くさそうにセドリック様が書類を机に叩きつけた。


「防御壁の強化を勿体ぶって駆け引きをすれば、もっとこちらにいい条件を引き出せたかもしれません」

「しょうがありませんわ。皆様のお優しさです」


 ノリスのとりなしに、セドリック様が嬉しそうに白い歯を見せた。


「さすが、新しい聖女様は清らかでお優しい」

「私なんて」

 

 ノリスがほんのり頬を染める。

 その奥ゆかしい態度に周りからほぉっと感嘆が漏れた。


「ノリス、あの時は本当にありがとう」


 防御壁を全体に張っている間、私は動けない。

 その代わりにその防御壁の強化に回ってくれたのはなんとノリスだった。

 彼女も聖属性の力を発現させていたのだ。

 ピンチの時に能力を開花させる。

 まるで主人公のようだと思ったのを覚えている。


「とりあえずの指示はここにまとめておいたから各自お願いします。それから、今後のことだけど、私に考えがあるの。ハンドに相談したいんだけど部屋に?」

「たぶん」


 セドリック様の返事と同時にバーディ様が執務室に入ってきた。


「これ、追加のクレームをまとめたものです」


 紙の束をどさっと机に置いた。


「こんなに?」

「それにしても、わがまますぎません?魔王から守ってもらってるっていうのに」

「国から出にくくなっちゃったからね。出るとしても魔王の脅威にさらされながらの移動になる。完全に私の力不足だよ」


 治安維持のお礼もかねて色々な便宜を、他国から図ってもらっていたんだよね。


「いままでも魔物がいたじゃないですか」

「魔王に出会ったらさすがに生存率ゼロ…魔物とはね桁が違うよね」

「わかってますけど」

「私を心配してくれてるんだよね。ありがとう」


 バーディ様は優しい。


「心配することないぞ、バーディ。ノリス様なんか王がお可哀そうと涙してた。それに比べて聖女は全くだ。図太すぎる」

「恐れながら申し上げます。私達も王のことが心配だと仲間内でも話しているんですよ。聖女様。きっと王は今回のことでかなり心を痛めているだけでなく重労働だったはず。そっとしておいてあげてくれませんか?」


 急な横入りは侍女だ。新しい侍女もいつの間にかハンド大好きに変わっていたらしい。


「無礼なんじゃないの?」

「よいではないか。この者の心配はもっともだ」

「わたしが聖女様ならどんなにいいか。罰を承知で申し上げます。その立場のありがたさをもっと感じてほしいです。お仕事の話ではなく。もっと王を癒すことを考えてあげてはどうでしょうか」


 ハンドはそういうの私には求めてないと思うけれど、側から見たらそう思うんだろうな。


「それは、気が効かなくてごめんね」

「いえ。こちらが無礼を申しました」


 侍女が笑顔を見せてくれてほっとした。

 好きな人を思う気持ちって本当に尊い、何もできないって歯がゆいよね。

 あぁそれが恋か。


 ふと、自分がそんな気持ちをヨウさんに対して抱いていたことを思い出す。

 やっぱり、あれは恋か。

 許されない感情をつきつけられて人知れず、ドレスの裾を固く握りしめた。


 クレーム処理をあらかた終えると夜だった。

 結局、次から次へと来る問題に対処していたら執務室からは出られなかった。


「ゆいな様、ご飯食べました?」

「あ、食べてない」

「さすがに、緊急事態ともなれば、ポンコツ聖女も役に立つようで。猫の手よりもましでしたよ」

「あ、めずらし、セドリックがデレてる。やっとゆいな様の偉大さに気が付いたんだね」


 顔をのぞくと、ほんのり照れているような気がする。

 執務室に残っているのはセドリック様とバーディ様と私だけだった。


「王に食事を持って行ってもらえますか?一緒に食べたほうが王もお喜びでしょう」


 ついでに、しっかりと今後のことについて話し合ってくださいと念を押した顔にはもう赤みはさしていなかった。

 


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