恋愛ゲームの主人公。世界に見捨てられる。でも平和。
4-②
「こ、これはまさか…」
「そうです!まさかです!」
「卵焼き!」
「和食を欲してるかな?と思って」
いつもの孤児院のメニューに、私の持ってきた材料でシスターたちがお手製のサーモンパイを作ってくれた。
豪華なランチ。の横のちょっと不格好な卵焼き。だしまきは無理だから塩味だけど。
うん。オムレツとねあんまり変わらないけど切り方で雰囲気は和食よね。
「ドウデスカ?」
ヨウさんに私の作ったものを食べてもらいたかったんだ。
塩と砂糖を間違えているとか初歩的なミスはしてないはず。砂糖は貴重品だからそもそも調理場になかったような気がする。
「うめぇ」
心底美味しそうな顔をしてくれたので、安心してもう一口さしだす。
ぱくっとそのままかぶりつかれた。
とびっきりの笑顔を向けられてフォークを持ったまま動けない。
あーんしてしまった。。。
何事もなかったように、フォークを手から抜かれて他の料理も食べている。
パンをちぎってもそもそと食べながら、まわりをみまわすとみなにやにやしている。
いや、そんなつもりではないのよ。
「照れてるゆいなちゃんかわいい」
「ゆいなねえちゃんをよろしくお願いします」
「ちょっと~」
迷惑だって思われたらどうするのよ。
「よろこんで」
「え、、、よろこんで?」
「立派に護衛してみせます」
あ、そっちのことか。
「最強聖女を護衛するなんて、にいちゃん鈍感だな」
「ゆいなちゃんがっかりしてる?」
「え?がっかり?なにかへんなこといいました?」
とか言いながらヨウさんにやにやしてる。
絶対にわかってやってる。
「意外に、いいじゃんふたり」
「ほんとほんと」
「王様派から私、ヨウさん派になる」
「あ、抜け駆けずるい。私だって」
明るい子供たちの笑い声につられてこちらも自然と笑顔になる。
「ゆいなが変な服装でふらついていたときは。とっても不安げな顔しててね」
「いつも暗い顔してたよね。夜より暗かったよ」
「それがそんな風に笑えるようになって」
懐かしい思い出話に花が咲く。
「みんなのおかげだよ」
新しい居場所をくれた人たち。
「明るくなったと思ったらさ、夕方ぐらいのひでぇ顔してた時もあったな。この頃」
「そうそう、なかなか来てくれなくてやっと会えたと思ったらげっそりしちゃって」
「そういえば、俺と出会った時もひどい顔してたような?」
「え!そうでしたか?」
あの時は確かに極限の状態ではあったけれど。
「ううん。うそ。可愛かった」
「わぁ家族が目の前で口説かれてるってこんな気まずい気持ちになるんだね」
「わたし、シスターになるの早まったかね」
「院長、なにいってるんですか…私もそう思っていたところです」
「ちょっとー。先生たちがいなくなっちゃったら僕たち困っちゃうよ」
まだ甘え盛りの歳のこが声をあげる。
「大丈夫よ、ボブ。冗談だから。あと40歳ぐらい若かったら危なかったかもね。このままだと被害者が続出しそうだから、その幸せパワーまき散らしに街にでも二人で行ってもらおうかね」
皆の生暖かい視線に恥ずかしくなってそそくさと食べ終えるのだった。




