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恋愛ゲームの主人公になったのに好きがわからなくて世界が滅びそうです  作者: cococo
メインキャラクター以外に恋しちゃだめですか?
16/47

魔法復活のリミットが近づいてきました。引き続き魔物の中にいます。そしてピンチです。

 3-⑤


 疲れたら防御壁の中で休んでを繰り返してどのぐらい来ただろう。

 空に輝く星はきれいで、それでも目隠しをしたみたいにあたりは真っ暗で。

 進んでいるはずなのに、同じ場所にとどまっているような気さえしてくる。


 魔物の光る目が自分との距離を測る唯一の手掛かりで。

 張り詰めた緊張をとぎらせないように体と精神が疲弊していく。

 襲ってくるピンチは外側だけじゃない

 内側にもある。


 もうだめなんじゃないか。

 こんなことしても無駄なんじゃないのか

 なんで自分はこんなにポンコツなんだろう。

 いままで、何やってたんだろう。


 そんな後ろ向きな考えと


 もし、うまく切り抜けられたら走り込みも追加しよう。

 できること、まだあったんだから、見つけられたことが幸せ。


 かすかな希望が交差する。


 


 雲が切れて、月が姿を現した。ぼんやりと周りに揺らめく影と光る無数の目。


 魔物は執拗に追ってきている。


「まだ頑張れる。よし!いくぞ!ヨウさんに確実に近づいてる」


 何度、繰り返したかわからない作業。防御壁をいったん消して走り、防御壁をまた展開。しようとしたとき、上から気配がした。


「何?上から?」

 

 防御壁を最低限、自分の身体に張り巡らせようとした。


「え?できない?」


 なんで?

 いままで、息をするようにできていたことが急にできなくなる。


 方法がわからなくなった?

 どうして?


 焦っても状況は好転しない。

 糸が切れた。本能が叫んだ。

 力だ。


 頭が冷えてなぜか理解した。

 世界からの力の供給が止まった。残っていたはずの力もない。

 魔法が使えない。

 空っぽだ。


 黒しか見えなかった何かに二つの光がともる。

 魔物だ。


 目を閉じて、防御壁の上に潜んでいたから気が付かなかった?。


「おねがい。発動して、力」


 手にも背中にもじっとりと汗が吹き出してきた。

 今の私を形容すれば、魔法が使えない聖女。

 無力だ。


「ヨウさん!」


 頭に思い浮かんだ人。


 今更思ってしまった。

 走馬灯に浮かぶような人がいる場合。

 ぜったいそれは幸せじゃない。


 無念だ。


 せめて、恋ができない主人公の私がいなくなった後。

 世界を救ってくれるような主人公が召喚されますように。


 もう一度会いたかったな。


 目は閉じなかった。

 自分の生の最後までしっかりと見届けようと思ったからだ。


 すごいな。私。成長した。


 注射だって怖くて凝視できなかったのに。

 いま、こんな時に目を開けていられるなんて。


 何の役にも立たないけれど。


 目の前が真っ赤に染まる。


「バイバイ」


「諦めるな!」


 そうそう、物語ではこういうピンチを助けてくれるヒーローが現れて。

 でも、現実ではそんな都合の良いことは起きなくて。

 あ、ここはゲームの世界だった。

 都合よく、物語が運んでもおかしくない世界だった。


「え?え?え?」


 目の前を赤く染めたのは自分の血ではなかった。


「ヨウさん!?」


 そのまま抱えられて数センチ転がる。


「早く防御壁を」

「力がもうないの」

「それじゃあこれを」


 力がながれこんでくるのを感じた。

 ヨウさんが流してくれているのだ。

 間一髪で魔物の群れの攻撃を防ぐ。


「君が防御壁が消したタイミングで合流しようと見計らってたんだが、間に合ってよかった」

「ヨウさん、力が尽きて倒れてたんじゃないの?」


 一番聞きたかったことを聞く。


 だから私は城に急いで戻ろうとしていたのだった。


「倒れてたよ。情けないことに。仲間たちが力を分けてくれたんだ。聖女と王を助けに行くと言ったら。本当に無茶するよな目が覚めて状況を知って驚いたよ。で、王は?」

「体制を立て直すために頑張っている」

「そうか」


 大きな氷が放たれて魔物の3分の1が吹き飛んだ。

 すごい。


「なぜ、君はそんなに頑張るんだ?この世界のために。王はまたいない。君一人を置いて」

「そっか、言わなくても私が囮にされたことバレてるんだ」

「わかるよ」


 それはちゃんと自分のことを見ていてくれているということで。

 嬉しい。


「囮にされたのは事実。でも、それは信用の証で。ハンドはハンドのやるべきことを頑張っている」


 はず。


「心、綺麗すぎない?だから聖女になれたんだな」

「違うと思う。私はただ、大切な人たちに恩を返したいだけ。本当は恋愛をして世界を救えればいいんだけど、それができないから。他の方法で、誤魔化してるだけなのかも。この世界に来た時に助けてくれた孤児院の人たちは私にとっても家族同然で。居場所とできることを与えてくれたハンドも同じ。もちろん。元の世界に帰れないからこの世界で頑張るしかないっていうのもあるけれどね」

「その大切な人枠に俺も入りたいな」

「どうぞどうぞ。入ってください」


 照れる。


「ところでヨウさん?この短い間で前よりも強くなってる?」


 わたしは怖いことに気が付いた。


「ヨウさん、どうして?力が増えている。あなた、誰?」


 ヨウさんは世界から力をもらえないはずだ。

 魔物を倒すために放たれた火魔法で焼かれた森の延焼を抑えるために放った水魔法で、力が空っぽになったはず。

 でも、どこからどう見てもヨウさんにしか見えなくて。


「なんか、精霊が力を貸してくれてるらしい」

「精霊?」

「ほら」


 ヨウさんの声かけと同時に、ぽわぽわとした光が漂いだした。


「森を守ってくれたお礼だってさ」


 優しい光が私の周りにも降り注ぐ。

 力が体の中に戻ってくる。

 でも。


「やめて、あなた消えちゃう」


 精霊は世界に近い存在で、力だってたくさん供給されるはずなのにこの子にはそれが感じられない。どんどん消費するだけ。


「俺に力を貸した時点で、世界とのつながりを絶たれたらしい」

「そうなの?」


 返事をするように点滅した。


「もう大丈夫だよ、ありがとう」


 光はそっと離れていった。


「なあ、この量の魔物。力が戻ったおかげで俺一人でも殲滅できる。でもさ、もう一度聞くけど攻撃魔法やっぱり練習しない?」

「わたしも、すればよかったって後悔してたところ」

「じゃあ、この状況は好都合、実戦練習の始まりだ」


 ヨウさんは悪い顔でにやっとわらった。


主人公にとって酷い人ばっかりだからこんな世界壊しちゃえばいいというご指摘をコメントでありがたいことにいただけまして。それもそうだなと。主人公がこの世界を救いたい理由を少し足してみました。伝われば幸いです!

読んでいただいてありがとうございます。


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