魔王復活のリミットが近づいてきました。恋愛フラグを立てられなかったメインキャラクターに囮にされました。
3-③
魔物のいる中に置き去りにされて、どのぐらい時間が経ったのだろう。
着々と力が回復していく。
さすが聖女のチート能力。
壁の外を取り巻く魔物の数は減ったのだろうか。
ゴロンとヨガの赤ちゃんのポーズみたいに横になる。
取りあえず空が見たかった。
けれど、かなわない。
魔物が防御壁の上に乗ってこちらを睨みつけてくるからだ。
本当にハンド達はもどってきてくれるの?
疑っちゃだめだ。
今までのことを思い出して。
いつだって、みんなで頑張ってきたんだ。
きっと戻ってきてくれる。
自分ができることで人の役に立てるのは嬉しい。
損な役回りばっかりでも。
上に乗った魔物を睨みつける。
寝転がったおかげで上に乗る魔物からの視線と距離ができた。
とにかく私は寝転がったまま、そらがみたいんじゃー。
防御壁が広がって魔物が滑り落ちた。
他の魔物も防御壁におされて距離ができる。
空をぼんやり眺めていたら落ち着いてきた。
ヨウさん大丈夫だろうか。
最後の森の火を消した雨。
たぶんヨウさんだ。
ヨウさんに似た暖かい魔力を感じた。
それはまだ、水の粒になって周りに残っている。
「自分をもっと大切にしてよ」
ヨウさんには世界からの魔力の供給がない。
体の中にもともとある力と聖女である私からの力の供給で魔法を放てている。
あの時、私は力が枯渇した。
みんなを包む防御壁を張ることも、皆の力を回復することもできなくなり王国の兵士たちは退却せざる負えなかった。
せめて皆が無事に逃げられるように最低限の防御壁を張り、力が回復するまで魔物たちの注意を引き付けるためにここにとどまった。
ヨウさんが力を使ったのは私が力を与えられなくなった後で、それまでの戦いでそうとう魔力を消耗しているはずだ。
もしかしたらよくこういうファンタジーの世界であるような魔力枯渇を起こして、魔法を一生、使えなくなったり、命を燃やして魔力に変えてしまっている場合もある。
どのくらいの人が、ヨウさんが世界から力をもらえないという状況を知っているんだろう。
魔法を使えなくなるぐらいならまだいい。
今の職は失うけれど、市街に出れば仕事もあるだろう。
問題は、命を燃やしていた場合だ。
はやく、失った分の力を供給しなければ寿命が縮まってしまう。
助けたい。
彼を。
こんなところで、いつ来れるかわからない人たちを当てにして待っているだけなんてできない。
いまは、じっと我慢していればいつかはよくなるという時ではない。
考えて。
今の自分にできることを。
何のために主人公としてチート能力を持たせてもらってるの。
大切な人を守るためだ。
防御壁内。私は動くことができる。防御壁を広げることができるぐらい力も回復してきた。
ほかの兵達に力を分け与えながらじゃないから、さっきの広い規模まで防御壁を広げても問題はないはず。
回復量の方が確実に多い。
問題は、防御壁を出るほど動いてしまうと消えてしまうということだ。
どうにかしよう。
絶対に。
ヨウさんを助けるために。
 




