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第15話:相棒

2025/8/12 全改稿

2025/10/27 題名変更+加筆修正

2026/1/13 加筆修正

(恥ずかしいな・・・・・・こんな見た目でも、中身はもう30なのに。ヒカルさんに心はされるなんて・・・・・・)


決壊した涙を何度も、なんども腕や袖で拭う。涙に濡れた頬が夜の冷たい風に触れひんやりと冷めたい。


(でも、当の本人は何でもない顔してるし・・・・・・はやく、早く落ち着いてくれ。自分)


鼻をすする小さな音。目元はすっかり赤く腫れていて、ヒカルの鋭い視線がそれにじっと向けられる。


「そんなに擦ると、目、腫れるぞ」


「ははは・・・・・・うん、そうだね・・・・・・」


けいは自嘲気味に笑い、もう一度袖でそっと目元を拭う。


(切り替えろ)


胸の奥で、いつもの呪文を唱える。

魔法でも何でもない、ただの自己暗示を。


(こんな情けない姿を見せてしまった。すぐに切り替えなきゃ)


まだ涙の残滓が瞳の奥に残るまま、けいはためらいがちに口を開いた。


「本当にごめん。しっかりしなきゃいけないのに、幼少期のこと思い出していろんなことに引っ張られて泣くなんて、情けないよね。ほんと、駄目だな~僕って」


茶化すように。誤魔化すように。あははとけいは空笑いする――

いつものように、自分の心を覆い隠すために、無意識に笑ってみせる。


ヒカルは、それを見逃さなかった。


「───そうやって」


「え?」


低く落ち着いた声が、けいの隠したい心の奥に手を伸ばす。


「自分のことを、卑下するのはやめろ」


「そんな、つもりは・・・・・・」


けいは目を丸くする。まさかヒカルに、そんなことを言われるなんて思っていなかった。それも、怒りを露わにしたような表情で。


「やっぱりお前は、責任を一人で背負いこむタイプだ。だが、お前は何かを成し遂げる力だけは異常についてやがる。・・・・・・くそっ、弱音をちゃんと吐ける奴なら、もっと前から支えてやれたのに・・・・・・よし、決めた。次またお前がそこまで追い詰められることがあれば、俺が連れて逃げる」


「まっ、待って! いきなり、なに言ってるのさ!!」


ヒカルが唐突に語り出したかと思えば、片手で口元を覆いながら何かを考え、突然強い決意をぶつけてきた。


あまりにも予想外な言葉に、けいは慌てふためく。だが、そんなけいをよそに、ヒカルは言葉を重ねる。


しかも、厄介なことに、その鋭い瞳を細めて真剣そのものの声色で。


「連れて逃げる。俺と。もちろん菊香も一緒だ。決めた。拒否権はない」


「・・・・・・」


「言っとくが冗談でもなんでもねぇ。どうしても嫌だって言うなら、俺に弱音を吐け」


けいは言葉を失う。


まるで脅迫じみたセリフで、でも、優しい声色だった。それは、繋に(ケイ)に弱音を吐くように仕向けてくれている優しさだった。


不器用な優しさに、けいは胸がきゅっと締めつけられる感覚を必死に抑えこもうとする。

泣ききったはずの感情が、また溢れそうになる。


かつて異世界で、ヒョードルが差し伸べてくれた「愛情」は、壊れていた自分の心を救ってくれた。

スヴィグルが差し伸べてくれた「支え」も、希死念慮に蝕まれる自分を救い上げてくれた。


それで充分だと思っていた。それ以上は、自分ひとりでなんとかしなければならない -そう決めていた。


だから、魔王の旅路では、絶対に弱音を吐かないと決めていた。

そして今、その旅が終わった後も、同じだった。


(なんで、なんで、そんな優しい言葉をかけてくれるんだ・・・・・・)


自分の周りの人たちは優しい。

みんな、どうしてこんな自分に優しくしてくれるんだろう。


(なんで? なんで、こんな僕なんかに、みんな優しいんだ?)


けいは、目の前に片膝をついて真っ直ぐ自分を見上げてくるヒカルを、俯いた顔のままこっそりと見上げた。


(いつもは、こんな風に話してこなかったのに・・・・・・なんで、どうして? 今まで通り、軽口を言い合える程度の距離でよかったのに・・・・・・そうすれば、必要以上に自分を出さなくて済むのに・・・・・・!)


けいは奥歯を強く噛みしめる。


(こんな弱くて情けない姿、スヴィグルにも見せたことないのに・・・・・・切り替えろ・・・・・・切り替えるんだ。頼む、切り替えてくれ、僕の心)


そして――一度緩んだ栓は、もう二度と簡単には締まらなかった。


幼い頃の傷を隠すために心を騙し続けてきた。

異世界で生き抜くためには、心を殺し、ときには誰かの命を奪うことさえあった。

すべてを押し殺し、感情を置き去りにしてきた。


完璧でいなければならない。

感情も心も制御して、自分さえ“完璧な子”でいれば、何事もうまくいく――そう信じて。


(なのに。それなのに)


閉ざした感情の蓋を、目の前の男はまるで当然のように、壊してしまう。


(くそッ・・・・・・くそっ・・・・・・クソッ!!!)


また涙がボロボロとこぼれ落ちる。

さっきのように静かになど落ちず、今度は堰を切ったように止めどなく。

制御不能な涙腺から、熱い雫が頬を伝い落ちる。


何度も、何度も袖で涙を拭う。必死に、必死に、押し寄せる感情を食い止めようとする。


だが、その防波堤にヒカルがとどめを刺した。再びけいの両手首をしっかりとつかみ、静かに言い放つ。


「泣くのを我慢すんな」


けいの胸の奥で、何かが、はじけた。


「・・・・・・ッふざけるな!!!」


けいはヒカルの手を振り払い、立ち上がり、声を荒げた。

ヒカルの視線に宿る心配の色が、さらに彼を追い詰める。


「そんな目で見るな!!」


――心配なんてしないでくれ。惨めになってしまうから。


「僕を幾つだと思ってるんだ・・・・・・! こんなことで・・・・・・こんなふうに・・・・・・感情も制御できない自分なんて・・・・・・!!!───死んで」


「やめろ!!」


死んでしまえばいい――という言葉は、ヒカルによって即座に遮られる。


けいは睨みつける。普段の自分からは考えられない、憎しみにも似た感情が、目に宿っていた。


「それだけは、それ以上は言わせねえ」


睨みつけながらも、涙は止まらない。


しばしの間、二人の視線が無言で絡み合い、静かな時間が流れる。

やがて、睨みつけていたけいの目尻が困ったように下がる。


口角が下がり、下唇を噛み、震えるまま、けいはコテージの壁に背を預けてゆっくりと腰を下ろす。


ヒカルは立ち上がり、その前までゆっくりと歩み寄った。


魔王だった頃の自分を、ヒカルは思い出す。


(俺は、お前に救われた)


バロルだった日々に、たくさんのことを教わった。愛情も、悲しみも、誰かを思う思いやりも――。

それだけじゃない。まだ覚醒しきっていなかった自分を、お前は必死に守ってくれた。


(そして今なら分かる。お前も、きっと一杯いっぱいだった。なのに、それでも手を伸ばしてくれていたんだ)


ヒカルは、けいがどんな人間か思い返す。───いや、思い出したのだ。

心は繊細なのに、「誰かを守るためなら」「誰かを救うためなら」いちばん先に強くなれる。

例えそれが幼少のトラウマから来る行動だったとしても、それを選んで実行するけいは間違いなく強いと、ヒカルは知っている。


それゆえに、なんでも一人で背負い込もうとするけいの姿が、ずっと嫌いだった。


(かつての俺は、そんなお前に救われた。だから今、俺は、お前になにかしてやりたくてたまらないんだよ)


木造の床板がぎしりと鳴る。

一歩。さらに一歩、けいとの距離を詰める。


そのとき、けいがぽつりと呟いた。


「・・・・・あ~あ~・・・・・・ヒョードルやフリッグは兎も角、スヴィグルにはこんな姿見せたくないのに」


けいの力なく呆れるような笑い声が、夜の静けさにかすかに溶けていった。


「今まで隠せてたのになあ・・・・・・」


その言葉に、ヒカルはピンとくる。昔の記憶を思い返せば、確かにけいのすぐそばにはいつも“そいつ”がいた。


(・・・・・・スヴィグル・・・・・・? ああ、異世界でこいつの隣にいた“勇者”のことか)


脳裏に、あの異世界での光景が浮かぶ。けいのすぐ傍らに、いつもいた男の姿。


(あいつは、ケイの、今の精神状態を知ってたのか? もし知っていた、ここまで放置していたんなら)


ヒカルは口の端をゆっくり上げ、悪戯っぽい笑みを浮かべた。


(少しぐらい勝ったか)


「・・・・・・なに、その顔」


じとりと目を赤く腫らせながら見上げてくるけいが、ぶっきらぼうに呟く。


ヒカルは、その反応で彼が勘違いしたことを察し、すぐに言い訳を返す。


「いや、そのスヴィグルとやらよりも、俺が先にお前の本音を聞けたなら僥倖だなって思ってな」


ヒカルの表情があまりにも悪そうだったせいか、けいは「何それ」と困ったように笑ってから、ぽつりと呟く。


「あ~あ、ヒカルさんの前では何故か完璧でいないとって思ってたのになあ・・・・・・菊香ちゃんがいるからもだけど、なんでか僕が守らないとって・・・・・・」


その一言に、ヒカルの胸の内がざわめく。


(無意識に俺をバロルと重ねてんのか? 今はもう見た目も歳も全然違うのに)


未だにけいの中では、かつての自分が加護対象であったことにヒカルは気恥ずかしさを感じて後頭部をぽりぽり掻いた。


(本当は転生前の記憶を打ち明けられたら、こいつの心的負担を少しは軽くしてやれるかもしれない。・・・・・・だが、今のケイにそれを伝えたら余計に不安定にしてしまいそうだ)


「殺されて、実は転生してました。だから大丈夫だ」なんて、言えるはずがなかった。


(何より、殺すように仕向けたのは、俺だしな)


ヒカルは転生前の自分の行いを大きく悔いていた。

だから今は、言葉にすべき時ではないと自分に言い聞かせ、抑えきれない衝動を必死に封じ込める。


代わりに、けいの心の膿を吐き出させようとする。


「せっかくだ、とことん吐け」


「横暴」


「結構だな。だから言え。原因となるようなこと全部」


けいは眉をひそめてヒカルを睨んだが、ヒカルは真剣な顔のまま、目を逸らさずにまっすぐにけいの瞳を捉える。


「俺はお前を知りたい。どうしてそんなふうに自分を追い詰めてしまうのかを」


けいの瞳が大きく揺れる。ごまかすように小さく息を吐く。

そして少し沈黙した後、諦めるかのように目を閉じて俯いた。


「そんなつもりはないんだけどな・・・・・・いや、でも、フリッグにも言われたし・・・・・・傍からはそう見えるのか・・・・・・」


ヒカルは隣に腰を下ろし、力なく俯くけいを見つめる。


「ああ。そう見える」


ヒカルは眉間に深い皺を寄せ、さらに言葉を重ねる。


「俺はお前が自分を大事にしない姿が大嫌いだ」


その言葉に、けいは困ったように眉を下げて、苦笑いを浮かべる。


「言わないのは?」


「無しだ」


「話、長くなるよ?」


「構わない」


「まったく、もう・・・・・・」


困ったままの顔で、けいは深く息を吸い込み、どこか諦めを滲ませたような気持ちで、しょうがないと、やれやれと、言わないと終わらせてくれないと思い、心に決める。


ヒョードルとフリッグは自分の両親や過去のことを知っている。

ヒカルに説明するにあたり、スヴィグルにはきちんと話せなかったことにどこか負い目を感じながらヒカルに説明する事を決める。


(ここまで暴かれたうえに、涙まで流したんだ。もう言ってしまってもいいのかもしれない)


そう思いながら、けいはゆっくりと、淡々と――どこか他人事のように自分のことを語りはじめた。


時折、ヒカルの表情が険しくなる。けれど、顔を俯けたまま話しているせいか、そんな鬼のような顔に気づくことなく最後まで語っていった。


「贖罪のために、地球に戻ってきた・・・・・・か」


ヒカルは夜空を見上げ、けいの言葉を静かに繰り返す。


けいは虚ろな目で、暗い雑木林を見つめていた。


「だって、僕があの時怒らなければ、事故に遭わずにすんだかもしれないし、そうしたら両親は生きていた筈。だから、全部僕のせい。僕のせいで死んだ。なのに、僕は生きている。───魔法で会えないなら、せめて地球に戻って二人に謝らないと」


ヒカルは黙って聞いていた。

気づけば、拳を強く握りしめていて、怒りを押さえ込むその強さに、自分自身の心も揺さぶられていた。


(だから、育った場所である福岡の家に戻って、両親の写真を見つけて謝罪したい――そういうことか)


けいの過去の重さを知るにつれて、今の渡繋わたりけいという"人間"がどう出来上がったのか、ヒカルには痛いほど分かった。


(親しい誰かが傷つくより、自分が傷つく方がいい。誰かが悲しむ姿が、かつての自分と重なるのが嫌だから。誰かの苦しむ姿が、かつての自分の苦しみと重なるから。だから、けいは手を伸ばす。そして自分の傷よりも、人の傷に寄り添おうとする)


その事実に、ヒカルの心は激しく煮えたぎる。


(くそっ!! たとえ故人を恨んでも何にもならねえと分かってるが、お前の親がやったことは絶対に許せねえ!)


そこまでされてなお、けいが親を恨まないのなら、ヒカルはそれを受け入れたかった。だが、それでも、かつて自分を救ってくれた人間が苦しんでいる姿が目に映ると、腹の奥底から怒りが溢れそうになった。


けいはヒカルと同じ空を見上げ、ゆっくりと息を吐く。


「どこにでもある、よくある話だよ、ヒカルさん・・・・・・僕だけが不幸なわけじゃないさ」


まるで自分に言い聞かせるような声音に、ヒカルの胸中は穏やかでいられなかった。爆発しそうな感情を押しとどめ、静かに口を開く。


「他の誰かなんかどうだっていい。俺は、そんなどうでもいい奴らより、お前と菊香の方が何倍も、何十倍も、大事だ」


けいは驚いたように目を瞬かせる。


「お前が、それが原因で期待に応えようとする気持ちも分かった。俺たちのために頑張ってくれることも、ちゃんと伝わってる」


ヒカルは無意識のうちに拳を握りしめる。


(お前はお前のために生きていい。だが、今のお前はまだ、その言葉を心から受け入れられないってことも俺は知ってる)


ヒカルは知っている。長く受けた心の傷は、そう簡単に癒えないことを。


セプネテスで成人を迎え、自分が覚醒前の魔王だと発覚してから、世界は俺を敵視した。あらゆる恐怖と疎外のまなざしにさらされ、ひとりぼっちだった。


きつかったし悲しかった。絶望もすれば、憎しみも増えた。すべてを壊してしまいたかった。


だけど──そんな自分の前に、光が現れた。


とても、優しくて、温かい光が。


だからこそ、ヒカルは、あの時自分に手を伸ばしてくれたように、今度は自分がけいに手を伸ばす。


「責任も期待も、お前が応えようとしなくていい」


低く、噛みしめるような声だった。でないと、自分が熱くなりそうだった。


「お前はじゅうぶん頑張ってる。たとえお前がそれを否定しても、俺は知ってる。だれよりも理解してる」


けいが何か言いかけたが、ヒカルはそれを遮った。


「俺にも、お前を助けさせてくれよ」


けいは戸惑いと困惑の色を瞳ににじませて揺れる。


「・・・・・・何を言って・・・・・・」


「お前のためにできることを、させてくれ」


けいは何とも言えない表情になる。泣きそうで、でも嬉しそうで、どこか苦しげで――そのどれも言い表せずに、しばらく言葉が出てこなかった。


「あ・・・・・・りがとう。うん、ほんとうに、うれしい。そう言ってもらえて、ほんとうに。・・・・・・でも、でも、だけど、ごめんなさい」


けいは途切れ途切れの声を何とかつなぎ合わせて答えようとする。それをヒカルは急かすことなく、じっと静かに待った。


そして、ゆっくりと、ぽつりと、独白のように吐き出されたのは――


「今まで通り、僕の過去を知っていても何もせず、ただ見ていてほしい」という言葉だった。


やっとの思いで口にした言葉は、震えていた。


ヒカルは「やはりな」と胸の奥で思った。

すぐに人の心は変わらない。とくに傷が深ければ深いほど、自分の心の支柱を守ろうとして頑なになってしまう。


(――それは、かつての俺も同じだった)


夜風が頬をなでるたび、まだどこか落ち着かないけいの心は、波紋のように揺れている。


けいは不安を隠せないように顔を伏せる。これもまた、自分の心を守るための一つの行動だった。


内心びくびくしながら待っていたけいに返ってきたのは、無情なひと言だった。


「断る」


「強情!!」


「お前もな」


思わず顔を上げてしまう。ヒカルはニヤリと笑って見せて、軽く肩をぶつけてきた。その瞬間、ふっと空気が和らいだ気がした。


「ま、お前が助けを求めなくても、勝手に俺は動くし、さっき言った通り場合によっちゃ連れて逃げるからな」


「ぼ、暴君すぎるでしょ」


「ワハハ! 言ってろ」


けいはヒカルをじろりと睨みつける――が、正直その言葉に、何度も救われる気がした。


(ずるい。本当に、ずるいなあ・・・・・・)


少しずつ、ほんの少しずつ、心の柔らかい部分をつかまれていく。

けいは呆れたように、諦めたように、眉を下げて微笑む。


「っはは・・・・・・はぁ、もう・・・・・・甘やかさないでほしいなあ・・・・・・」


「もっと素直に甘えろよ」


「・・・・・・甘え方が分からないから無理だよ」


「なら、ほら。肩に寄りかかってみろよ」


「だから、すぐには無理だってば」


けいは口をきつく結んで、子供のようにヒカルを試すような強がりを吐く。

自分でも悪い癖だと思いながら、ヒカルに自分のことで重荷になってほしくなくて、ついこの言葉がこぼれる。


「・・・・・・絶対、迷惑かけるよ」


本音では、ここで突き放してくれたら――と思うけれど、どうせヒカルはそんなことしてくれないのだろうと、どこかで期待してしまう。


「どんと来いだな」


「くそ・・・・・・」


やっぱり想像通りの返事が返ってきて、けいは嬉しいような悔しいような、複雑な気持ちになる。


ヒカルは何も言わず、けいの隣に座り続ける。

そしてそっと肩を差し出して、そのままけいがもたれかかるのを待つ。

けいは何も言わずに、ありのままに甘えてみた。


「明日には、いつも通りの自分に戻るから」


「ほんっとに、強情っぱりな奴め」


そんなやり取りに、けいは力のない声で笑った――でもその表情は、少しだけ晴れやかだった。


ヒカルはまんざらでもない顔でちらりとけいを見やってから、夜空の月を見上げる。


けいもヒカルも、この夜を、決して忘れることはないだろう。


今日は、二人が本当の意味で“相棒”になった日なのだから。




もしこの内容が良かったらブクマ・評価・リアクションしてくれますと飛び跳ねて喜んでます!

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