第99話 美しすぎるおばさま
なぜか幻想旅団に詳しい、事務局のお姉さん。
多分幻想旅団の関係者だと、俺は思う。
これをネタに、あれこれユスってもいいのだが、なんかやぶ蛇になりそうなので、やめておこう。
「あの、俺の編入手続き、そろそろ進めません?」
前回は幻想旅団の話題で終わってしまった。
今回もそのネタで引っ張る訳にもいかない。
「そ、そうね。でもサム君がF級じゃなくてC級だとしたら、ちょっと事情が変わってくるのよね。」
「あら、何が変わるのかしら。」
俺が言おうとした事を、先にミーシャに言われてしまう。
「まさか、入学金が変わるなんて、言わないわよね。」
「それもあるけれど、待遇も変わるのよ。」
「待遇?」
「ええ、この際言っちゃうけれど、ここでは国民等級によって待遇が変わるのよ。」
「国民等級?」
これまた変な用語が出てきたな。
「国民等級は冒険者ランクと、イコールと見ていいわ。この学園は全寮制なんだけど、C級からひとり部屋になるけれど、F級は五人部屋なのよ。」
「はあ?」
お姉さんの説明に、ミーシャがキレる。
「こいつは私の従者よ。私のランクが適用されるんじゃないの?」
「し、知りませんよ、そんな事。サム君がミーシャさんの従者だなんて、今初めて聞きましたよ。」
お姉さんの反論に、ミーシャが俺をにらむ。
「もう、あんたが勝手に帰っちゃったから、ややこしくなったじゃない。」
「いや、知らんがな。それに五人部屋になるだけだろ。それくらい問題ないだろ。」
「はあ、そんなのF級待遇の一例よ。食事や授業もそれなりのになるし、私もあんたの待遇に合わせないといけなくなるのよ。」
なるほど。ミーシャの待遇も下がるのか。それはやだな。
俺に説明したミーシャは、お姉さんに向き直る。
「当然、サムはC級待遇で編入出来るよね。」
「えーと、それは、」
お姉さんは返答に困る。
そりゃ、F級待遇で進めようとしてたら、実際はC級待遇を求められるんだから、調整やら大変そうだ。
「ちょっと待っててください。私ひとりでは、決められませんので。」
お姉さんは一度、奥に引っ込んだ。
そしれ同僚のおばさんを連れてきた。
おばさんは登場するなり、ミーシャをにらむ。
「またあなたですか、ミーシャさん。ほんと、問題しか起こさない、困った人ですね。」
「大きなお世話よ。問題にしてるのは、そっちでしょ。」
ミーシャもすかさず言い返す。
「ふん。」
おばさんはそれ以上ミーシャを相手にせず、俺をにらむ。
どき。
このおばさん、今でこそおばさんだが、若い頃は相当な美人だった面影がありやがる。
「ちょっと身分証を見せてくれない?」
「は、はい。」
俺はギルドカードを渡してしまった。
「ちょ、」
ミーシャは俺の行動に驚いて、声がでる。
それを聞いて、俺も思い出す。むやみに他人に渡すなって言われた事を。
「なるほど、確かにC級ね。」
おばさんはスキャナみたいな装置に、俺のギルドカードをかける。
ギルドでナナさんが使ってたのと、同種の機械のようだ。
「どう言う事?」
おばさんは片眼鏡みたいな装置で、スキャナ上のギルドカードを覗く。
「これ、最初からC級カードよ。F級だった痕跡がないわ。」
おばさんのひと言に、お姉さんとミーシャの視線が俺にむく。
そりゃ、幻想旅団を討伐したのがF級だとマズいから、C級に擬装したんだ。
そこまで遡っての偽造じゃないとマズいよな。
流石はナナさんの技術と言うべきか。
俺に対して、何か言いたげだったミーシャ。
しかしすぐにおばさんに向き直る。
「あれー?Fランクじゃないみたいだけど?なんでF級待遇で進めようとしてたのかしらね?」
「な、何言ってるんですか、ミーシャさん。」
お姉さんはミーシャに反論する。
さっきまで一緒に、F級だったのがC級になってると、騒いでたからな。
「ふ、やるわね、あの子たち。」
何かを察したおばさんは、ニヤける。
「F級だったのは、アディシア先生の勘違いだったみたいね。」
勝手にアディシア先生のせいにされてしまった。アディシア先生に悪い気がする。
「入学金ももらってなかったから、F級待遇は無効。改めてC級待遇として、手続きをします。」
おばさんはキリっと俺をにらむ。
凛々しささえ感じさせる、このおばさん。
お姉さんやミーシャにはない、年上のおばさまの魅力がありやがる。
「手続き開始として、今すぐに入学金を納めますか?アディシア先生に知れたら、面倒な事になりそうだし、今すぐの手続きを、お勧めするわよ。」
「はい、その方がよさそうですね。」
「待って。」
俺が了承するのを、ミーシャがとめる。
「その入学金って、幾らなのかしら。サムは20万クレカって聞いたみたいだけど。」
「20万?それはF級待遇の入学金ね。C級だったら16万クレカね。」
おばさんの言葉に、アディシア先生がボッタくろうとしてなかった事が判明する。
「じゃあ、16万で編入手続きお願いします。」
俺は手続きをお願いする。
アディシア先生には悪いが、後から何か言われそうだし。
「はい。編入手続きを開始します。この身分証は、口座連結してるようですね。手続きしやすくて助かる、わ?」
編入手続きに入るおばさんの手がとまる。
「二百七十万クレカ?」
「ちょ、サム。あんた非表示にしてないの?」
俺の全財産を読み上げるおばさん。
非表示機能の存在をほのめかすミーシャ。
俺は素早くギルドカードを奪い返す。
非表示機能なんてあったのか。
ナナさんも教えてくれなかったな。
普段は他人に渡さないギルドカード。
普通なら他人に見られる事もないし、ナナさんもそこまで気が回らなかったのだろう。多分。
俺が持ってる金が多くて、俺に向けられる視線の質が変わる。
ども(・ω・)ノ
ここ数話の入学金問題。
普通にアディシア先生がちょろまかす方向で、考えてました。
ですがギルドランクのC級F級問題がややこしくて、無くなっちゃいました。
最初に20万って言った頃には、ランクアップは想定してませんでしたから。
C級と言ったりCランクと言ったり、そこも安定してませんが、気にしないでください。かっこ笑い




