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第80話 ぼったくられる入学金

 リバルド学園に入学金を納めに行ったら、ミーシャと再会した。

 ミーシャがナメた態度をとるので、軽く脅してやった。

 したら返り討ちにあい、股間を潰されかける。

 単純な強さなら俺の方がはるかに上だが、ミーシャは俺に癒える事のない精神的な大ダメージを与えた。




「はあはあ。」

 ミーシャの股間攻めから解放され、俺は地面に倒れたまま、呼吸を整える。

 回復魔法で股間の肉体的ダメージは回復したが、精神的ダメージは残ったままだ。


「ふふふ、」

 俺の横にしゃがみ込んだミーシャが、無様な俺を見てニヤけてた。

「ち、」

 俺は思わず顔をそらす。

「ねえ、あんた、刺客を倒したって言ったよね。」

「ああ、倒したぞ。」

 ミーシャの問いに、吐き捨てる様に答える。

「他にもいるから、そっちもよろしくね。」

「え?」

 俺はそむけた顔を、再びミーシャに向ける。


「実は私も知らないのよ。刺客が全部で何人いるのか。」

 ミーシャは笑顔で答えやがる。


 なるほど。

 確かどこぞの王子様が依頼主だっけ。

 ギルドに討伐依頼も出してるくらいだし、刺客が沢山いてもおかしくないか。


「で、あんた幻想旅団討伐したみたいだけど、」

 ミーシャはこみあげる笑いをこらえてる。


「多分一部しか討伐しきれてないから、誰にも言わない方がいいよ。命狙われたいなら、別だけど。」

「な、」

 ミーシャの態度からして、ミーシャに言ったのは失敗だったのか?

 例えばミーシャの刺客に幻想旅団がいて、ミーシャを見逃す代わりに、俺を売るとか。


「で、幾ら貰ったのかしら、討伐報酬。」

 ミーシャのその言葉に、俺の血の気が引く。

 こいつ、俺にたかる気だ!


「そ、そんなの、ここの入学金くらいだよ!」

 俺は全力で拒否するのだが、ミーシャはニヤりと右手を差し出す。

 俺はまだ持ってた幻想旅団の討伐依頼書を取り出す。

「ふーん、構成員六名以上で、24万クレカね。ここの入学金が16万クレカだから、8万クレカは最低余るのね。」

 ミーシャは依頼書を返しつつ、一緒に左手も差し出す。


「おい、差額をよこせってのか?8万も、ってちょっと待て、俺は入学金は20万クレカって聞いたぞ。」

「20万?」

 ミーシャはピクりと反応すると、真顔になる。

「それは誰が言ったの?」

「誰って、あ、アディシア先生だよ。」

「あいつか、」

 ミーシャは軽く舌打ちする。


「私の下僕からカモろうなんて、いい度胸ね。」

「はあ?」


 なんかミーシャが、突っ込み所満載な事をほざきやがった。


「あんたの入学金納めるのに、私もつきあってあげるから、感謝しなさい。」

 ミーシャは冷たい目のまま、俺に言う。

「って、誰が下僕だよ!」

 俺はその冷たい目に言い返す。

「あら、私に逆らうなら、今度こそ潰すわよ。」

 ミーシャのその言葉に、反射的に股間をおさえる。


「おまえなあ、こんな態度とってたら、いつかやり返されるぞ。」

 俺もミーシャにナメられらままでは、いられない。

 だがミーシャが俺に与えた精神的ダメージは、計り知れない。

 口では強がっているが、俺がミーシャにやり返す事は、おそらくないだろう。

 だが、これを見透かされるのは、気にくわない。


「ふふ、流石は私のナイト君。」

「な、ナイト君?」

 なんか知らんが、下僕から格上げされてないか?

 いや、ただ言い換えただけか?


「私を襲ってきたヤツなら、みんな殺したわ。生きてるのは、あんただけよ、サム。」

「え?」


 そう、襲ってくる人間なんて、ドラゴンに戻れば瞬殺できる。

 だがミーシャは呪いをかけられ、変化(へんげ)機能に枷をつけられてた。

 だから千尋峡谷に逃げこむしかなかった。


「と言っても、下心で襲ってきた連中だけだけどね。やっぱり下心の隙をつけないと、厳しいのよ。ほら、私もか弱い女の子だしさ。」

 ミーシャは少し弱気な表情を見せる。

 これまでの俺の股間を潰さんとする態度からのギャップが、俺の心を魅了する。

 だが、ここでミーシャの言いなりに屈するのは、シャクだ。


「か、か弱いって、ミーシャも十分強いだろ。」

「あら、あんたも言ったでしょ。いつかやり返されるって。私なんて対策されちゃったら、それまででしょ。」

 くそ、なんて表情しやがるんだ。守ってやりたくなる感情があき上がってくる。

 ミーシャがあの刺客に怯えてたのも、今のミーシャの言葉通りなのだろう。

 あいつは女性をなぶる事に、特化しすぎていた。

 そして、ここでひとつ疑問がわいてくる。


「なあ、ここは安全なんだろ。なんで千尋峡谷なんかに逃げこんだんだ?」


「ばかね。」

 ミーシャは静かに首をふる。

「そんなのここも安全じゃないからに、決まってるじゃない。」

 俺には、その言葉の意味が分からない。


「この学園はね、ドラゴンと人間との親善の為に作られた学園なの。将来お互いの社会の指導者になるヤツらの友好を目的としてるのよ。つまり、ここにもドラゴンは存在する。」

「なるほど。」


 俺はミーシャの説明で理解する。

 この学園には、ミーシャを狙う王子様とやらも、存在する。

 王子様本人が年齢的にいなくても、その関係者は居るはず。

 ミーシャも逃げるわけだ。


「だから私の護衛、よろしくね。」

 俺が察したのを見て、ミーシャはニコやかに微笑む。

「お、おう。」

 俺は思わず応じてしまう。


「ふふ、明日学園が開いたら、また来なさい。入学手続き、私がつきあってあげるから。」

「ああ、その方が良さそうだな。」



 ミーシャは入学金は16万クレカだと言うが、俺は20万クレカと聞かされた。

 これは、事情に詳しい人の付き添いが、必要のようだ。

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