表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/272

第68話 解体の代償

 幻想旅団の動物変化たちの死体から、数多くの素材が採取され、その買取額を頂いた。

 しかし、幻想旅団の討伐報酬は、まだもらってなかった。




「あら、報酬ならもう貰ってるでしょ。」

 前回の俺の疑問に、ナナさんはあっけなく答える。


「えと、貰ったのは、素材の買取額だけですが?」

「サム君、本気で言ってる?」

 俺は何故か、ナナさんにあきれられる。

「私の解体作業代は、買取額の1割なのよ。」

「はあ?聞いてないっすよ。」

 ナナさんの後付け説明に、俺は驚く。


「私がただでやってあげてたと思ったの?むしろ1割より割り引いてあげたんだから、感謝してよね。」

 ナナさんはニヤりと、右手の爪を見せる。

「いやいや、だったら自分で、」

 と反論しかけて、言葉につまる。


「あら、サム君に出来るのかしらね、か、い、た、い♪」

 ナナさんは完璧すぎる鋼鉄の微笑(アイアンスマイル)を見せる。


 そう、素材の知識のない俺に、ナナさんみたいな解体は出来ない。

 それならと業者に持ち込んでも、ナナさんほどの腕前の解体士はいないだろう。

 それに、俺は素材の相場を知らないし、買い叩かれたりするだろう。


「ご、ごめんなさい。俺が無知でした。」

 俺は謝る事しか出来なかった。

「あら意外。納得出来ないって襲ってくるかと思ったのに。」

「そ、そんな事しませんよ。」

 ナナさんの返しに、俺は驚く。


 この世界は畜生道。

 人間に化けれるだけで、基本的に善意な行動は存在しない。

 とある行動の裏には、何かの利益が生じている。

 その利益を放棄する行為は、この世界の行動理念には無かった。

 それは、俺の目の前にいるナナさんも、例外ではない。


「なんか、俺を挑発してません?」

 前回辺りから、ナナさんは俺と戦いたがってるように感じる。

「ええ、あなたの強さに、興味があるのよ。」

 笑顔のナナさんの瞳の奥に、隠しきれない殺意を感じる。

「俺の強さって。ナナさんより下ですよ。」

 俺は身の危険を感じ、身構える。

「あら、やってみなくちゃ分からないわよ。」

 ナナさんも臨戦体勢にはいる。


「じょ、冗談じゃない!」

 俺は咄嗟に後方へ飛び退く。

「こちとら魔素が尽きかけてんだ。まともに戦えるわけがない!」

「へー、魔素が尽きてなければ、まともに戦えるんだー。」

 ナナさんは言葉の揚げ足を取る。


「それは、」

 俺は口ごもる。

 ナナさんの実力なら、先の解体作業にて垣間見た。

 あの繊細な爪さばき。骨までぶった斬る力強さも合わせ持つ。

 俺にはやれと言われても、マネ出来ない領域だ。

 だけど、あの爪さばきの先にある体術なら、対処出来そうな気がする。

 つまり、魔素が尽きてなければ、まともに戦える。

 それに俺も畜生道の一員。ナナさんを屈服させるのは、さぞかし気分がいいだろう。

 だけどナナさんと戦うとは、何を意味するのだろう。

 このギルド全体を敵にまわしそう。ギルドにたむろする冒険者どもなら、束になっても俺の敵ではない。

 だけど、たむろしてない冒険者はどうなのか。

 そしてルル姉とは敵対しそう。その場合、俺に勝ち目はない。


「私もね、強い男にしか興味ないのよ。」

 思い悩む俺に、ナナさんが話しをふる。

「へー、冒険者たちに言い寄られて、まんざらでもなさそうなのに?」

「冗談。こっちも商売だから相手してるだけで、ほんとはぶっ殺してやれたいわよ。」

「そりゃあ、表情も固まりますね。」

「よく分かってるじゃん。」

 ナナさんはお決まりの鋼鉄の微笑(アイアンスマイル)を披露する。


 ナナさんのかわいらしさが、最高に引き出されるその笑顔。

 だけどその笑顔の意味を知った今、なんか哀れに感じてしまい、直視する事が出来なくなった。


「もうこの話しは、やめましょうよ。」

 俺は臨戦体勢を解く。だけど、いつでも移動魔法で逃げられるよう、警戒は怠らない。

 今の俺にとって、移動魔法に使う魔素は微々たるもの。

 だけど今の俺には、その微々たる魔素しか、残されていない。


「それもそうね。今のサム君、私を楽しませてくれそうにないしね。」

 ナナさんも臨戦体勢を解き、俺に向けた殺気が抑えこまれる。

 だけど、完全には消えていない事は、容易に想像できた。


「で、これで討伐完了の手続きは、終わりですよね。」

 ここでふたりきりで居続けたら、ナナさんの気が変わって俺を襲うのは、間違いない。この状況は、早く打開したい。


「そうだけど、これからどうするの?」

 ナナさんも手続きの終了を了承する。

「ちょっと魔素を補給してきます。」

「補給ってどこへ?」

「そりゃあ、ソーマの泉ですよ。」


 このギルドの扉の向こうは、千尋峡谷(せんじんきょうこく)の果ての建物ホームにつながっている。

 その建物内にあるソーマの泉は、俺にとっての魔素の供給源だ。


「そ、ソーマの泉って、あんた正気?」

 なぜかナナさんに驚かれる。

「正気って、あれが一番効率良くないですか?」

 俺はちょっとムッとする。


「効率って、サム君はあのドラゴニックオーラの暴走に耐えられるの?原液そのままの摂取だから耐えられるドラゴンなんて、存在しないわよ。」

「現にここに居るんですが。」


 俺の答えに、ナナさんは少し思案する。

 そして、真剣なまなざしで俺をさとす。



「サム君、これ以上ソーマの泉を頼るのは、やめなさい。」

ども(・ω・)ノ

土曜日に更新セットし忘れちゃいました。てへ。

昨今のナナちゃん解体編。

この作品の設定解説をぶち込んだ説明編になっちゃいましたね。

これでも、神獣族幻獣族の詳細解説、白虎が幻想旅団に堕ちた経緯、あのうさぎの動物変化、等など、書かなかった事も多いです。

逆に、ミーシャの設定がガッツリ盛り込まれちゃいましたが。

まあ、数年前のみらせかなら、このナナちゃん解体編自体、ばっさりボツにして、普通に解体作業して終わらせてたと思います。

なんか劣化感を感じますね。

(´・ω・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=44752552&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ