第53話 返り討ち
幻想旅団という盗賊団の討伐依頼を受けた俺は、ギルドを出た所で、ふたりの男にからまれれてしまう。
ナナさんと楽しげにお仕事の話しをしてたのが、気にくわなかったらしい。
「Fラン風情が、つけあがるんじゃねーぞ。」
ふたり組のうちのひとりが、メンチきってきた。
「あん?ランクでしか判断出来ねーのか?」
俺もイラついて、にらみ返す。
こういう時は、先に手を出してはいけない。
先に手を出せば、こっちの立場が悪くなる。
なにせここは、ギルドの入り口前。扉の向こうでは、冒険者たちが聞き耳をたたてるに違いない。
「なんだと、コラァ!Cランクの実力、思い知らせてやらぁ!」
「まあ、待ちな。」
キレかけた男を、仲間の男がとめる。
「ここで実力行使はまずい。Fランのこいつにも、俺たちの実力を垣間見せれば、嫌ってほど思い知るだろうぜ。」
と言ってニヤけるが、こいつら、相手の実力も読めないのか?
「ああ、そうだな。俺の実力を、垣間見せてやるぜ!」
キレかけてた男は、両手を派手に動かして、印をむすぶ。
「大気に流れる精霊よ。我の声に応えて、その姿を現せ。はむかう敵を、焼き尽くせ!」
そいつが右の手のひらを上に向けると、バスケットボールくらいの大きさの火の玉が浮かぶ。
「ファイヤーボールか。」
それを見て、俺はつぶやく。
確か赤系の火炎魔法の初歩。
ただし、その火球の大きさは、ビー玉級から、直径数メートル級まで存在する。
「お、どうやらFランのおまえでも、こいつのヤバさは知ってるらしいな。」
火球を出してない方が、ニヤける。
火球を維持するのには、そこそこの集中力が必要になり、俺にかまける余裕はない。
「は?何がヤバいって?そいつを実力って言っちゃう、おまえらの頭か?」
俺は思わず、ふきだしてしまう。
そんな火球ひとつ出すのに、なに時間かけてんだか。
確かに火球の大きさは凄いかもだが、それは目標にぶち当ててこそ、意味がある。
つまり、出すのに時間かけていては、使いものにならない。
これくらいは、無詠唱でやってほしい。
といっても、俺には火炎魔法は使えないが。
「ふ、言葉に気をつけろよ、Fラン。頭がヤバいのは、おまえだろ!」
火球を出した男が、火球を投げつける。
俺が右手で受け止めた次の瞬間。
バシィ!
火球はもうひとりの男に、クリーンヒット。
そのまま後ろにふっ飛ばされ、仰向けに倒れる。
「な、何がおきた?」
投げたヤツは、倒れた男と俺を、交互に見る。
「へー、さすがCランク。威力はまずまずだな。」
俺は思わずニヤけてしまう。
「ま、まさか、反射魔法?」
「そんな魔法、俺は使えんぞ。」
俺が使ったのは、転移魔法の応用。
俺が手に持った物なら、手の届く範囲内に転移可能。
右手で受け止めた火球を、進行方向を逆にして、転移させただけだ。
火球を受け止める訳だから、当然俺もダメージを受ける。そこは回復魔法で回復させといた。
「Cランクの実力、垣間見せてもらったぜ。」
俺はそのまま、そいつらの横を素通りする。
これ以上こいつらに、つきあってられん。
倒れた男を見て、呆然としている。
これで俺につきまとう事も、なくなるかな。
って、今はこいつらに構ってるヒマはない。
早く幻想旅団を討伐してこないとな。
「で、あんたはいつまで俺についてくるんだ?」
街を出て、森に入ったあたりで、俺は立ち止まる。
俺の後ろには、黒いスーツに黒い帽子、サングラス姿の男がひとり、立っている。
今回の討伐依頼の契約金をたて替えてくれた、親切なおっさん。
ではなく、ミーシャを狙う刺客のひとり。
「ふ、さすがに気づくか。このままミシェリアと落ち合うまで、つけてこうと思ってたんだがな。」
木陰に身をひそめてた男が、のっそりと出てくる。
圧倒的な威圧感を、解放してくる。
なるほど。今までこれだけの気配を消してたのか。
こいつはあのCランクのヤツらとは、格段に違う。
「ミシェリア?誰だよ、それ。」
ミシェリアはミーシャの本名だが、俺にとってはミーシャだ。
「ふん、しらばっくれやがって。少し痛い目を見たら、話す気になるかな?」
と言いながら、竜化する。
スーツも破らず、絶妙な大きさを保つ。
「く、」
こいつを相手にするには、俺もドラゴンに戻らないとヤバい。
こいつは完全にドラゴンに戻っていないが、今のこいつ相手でも、俺は完全にドラゴンに戻らないとヤバい。
そしてこいつには、もうひとり仲間がいる。
ふたりでこられたら、俺に勝ち目はない。
のっしのっしと、ゆっくり近づく黒服。
「おい、もうひとりは、どうした。」
俺も服を破らないくらいの、中途半端な竜化をする。
黒服はその段階に調節した竜化だが、俺は竜化を途中でとめた状態。
つまり、同じ状態に見えても、竜化の調節が出来ていない俺は、圧倒的に不利。
さらにこの場所は、森の入り口付近。
完全竜化だと、誰かに見られる危険がある。
「さあな。」
ひと言つぶやくと、黒服は動きを加速する。
右腕をゆっくり振り上げる。
「く、」
俺は黒服の右腕に注視して、身構える。
ガコ!
「何?」
俺は首に一撃をくらう。
慌てて飛び退くが、何が起きた?
俺の把握した間合い外から、攻撃を受けた。
「ふ、おまえもやはりドラゴンか。竜化は封じさせてもらったぞ。」
「何?」
俺が首に手をやると、俺の首には首輪がはめられていた。




