第49話 入学金調達
リバルド学園に入るには、入学テストに合格しなければならない。
担当の女性教師は、嫌な性格だが、身体つきは色っぽい、いい女だ。
首輪をつけてやったので、このままいたぶってやるぜ!
「はあ、甘いですね。」
女性教師は首輪に手を当てる。
ガゴンと音がして、首輪がはずれる。
この首輪の鍵は、女性教師の魔素だった。
「何?」
びっくりする俺の前で、女性教師は瞬時にドラゴンに戻る。
青いウロコ。ギースンドラゴンだ!
そのまま尻尾の一撃を、俺に喰らわす!
派手にふっ飛ぶ俺。
女性教師は、人間の姿に変化する。
俺も、人間の姿に変化する。
「余裕ぶっこいてる暇があったら、とっとと攻撃しなさい。」
「何?」
わざわざそんな事を言う女性教師に、俺は驚く。
これ、言う必要あるか?
「形勢逆転とかほざいてないで、攻撃すれば良かったでしょ。」
女性教師は言い直す。
「な、なんでそんな事を、わざわざ教えるんですか。」
俺には、女性教師の真意が分からない。
「教えるのが、教師の勤めです。」
「な、」
女性教師の言葉に、俺は感銘を受ける。
「せ、せんせー、ありがとうございます。アディシア先生!」
俺は思わず礼を言う。
「あら、あなたが私を先生と呼ぶのは、まだ早いですよ。」
アディシア先生は、ニヤける。
「何?俺は不合格なんですか?」
「いえ、実技、学科、どちらも文句なく合格です。」
アディシア先生は、ピンと俺のギルドカードを上方へ弾き飛ばす。
ギルドカードはコントロールよく、俺の手の上に戻る。
「あなたの編入は、四日後です。三日後までに入学金20万クレカを納めなさい。その時まで、私はあなたの先生ではありません。」
アディシア先生は、そのまま教室を去って行った。
残された俺は、途方にくれる。
20万クレカって、何だよ。
俺、お金なんて持ってないぞ。
そもそも20万クレカって、どんくらい?
日本円で言ったら、何円?
20万クレカが20万円だとしたら、大卒初任給くらい?
いや、税金差し引いた手取り額なら、ひと月分でも足りない?
これは、ミーシャに相談するべきか?
「おいおいどうしたサム。やっぱ落ちたのか?」
気がつくと、守衛小屋のおっさんが、にやにやと話しかけてきた。
俺はいつの間にか、ここまで歩いてたらしい。
「いや、受かったよ。」
俺はすぐさま反論する。
「何?受かっただと?まさか。」
「いや、本当だって。」
「そうか。ラミーロの推薦なだけは、あるって事か。」
おっさんはどうやら納得してくれた。
「合格したなら、なんで落ち込んでるんだ?」
「ああ、入学金20万クレカ払えって言われたんだけど、俺、金持ってないよ。」
「おいおい。」
俺の不安に、おっさんはあきれる。
「なあ、どうやって貯めたらいい?」
俺はおっさんに助言を乞う。
「どうって、お前は転移魔法が使えるんだろ?」
「使えるけれど、それでどうすれば?」
このおっさんは、無色の魔法を知ってるらしい。
「なら、転売だろ。」
「転売?」
「ああ、この街で安く売ってる物を買って、高く売れる所で売りさばく。転移魔法が使える、お前にしか出来ない稼ぎ方だぞ。」
「いや、俺この街にしか、転移出来ねーし、お金も持ってないぞ。」
おっさんの素晴らしい提案も、却下せざるを得ない。
「はっはっは、そりゃあ、千尋峡谷帰りだもんな。手持ちの金すらねえってか。」
「なあ、笑い事じゃねーよ。なんか手はないのか。」
「ははは、なら盗賊討伐だな。」
おっさんは、次なる提案をしてくれる。
「盗賊討伐?」
「ああ、ギルドで盗賊討伐の依頼を受けな。」
おっさんは説明してくれる。
「盗賊討伐なら、報酬もある程度見込める。それに、なんと言っても、盗賊の貯めこんだ盗品を、分捕れるのがおいしい。」
「それって、違反なんじゃないの?」
おっさんのナイスアイデアに、思わずツッコミを入れる。
「バレなきゃ、違反じゃねーよ。」
おっさんはニヤける。
「もっとも、貯めこんでるのが現金じゃない場合、換金した時点で、足がつくけどな。」
「むう、そもそも、換金方法が分からんぞ。」
何の勝手も知らない世界で、簡単に売り買い出来て、たまるか。
「とは言え、やっぱ盗賊討伐が、一番現実的か。三日以内に20万クレカ貯めるには。」
「三日だと?」
後出し情報に、おっさんは驚く。
「盗賊だって、どこに居るかも分からないんだぞ。ひと月くらいは見積もれよ。」
「まじかよ。なら、こうしてる時間がもったいないって事か。」
俺は気持ちを切り替える。
今すぐにでも、盗賊討伐の依頼を受けるべき!
「ありがとう、おっさん。助かったぜ。」
俺はおっさんに礼を言うと、ギルドへと転移魔法を使う。




