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第44話 ふたりの刺客

 俺が超強力な力を手に入れた源、ソーマの泉は劇薬だった。

 それを受け入れられた事で、俺には状態異常に耐性がある事が、ミーシャにバレてしまった。




「図星のようね。」

 驚く俺を見て、ミーシャは確信する。

「だ、誰にも言うなよ!言ったら殺す!」

 俺は慌てて口止めする。


「ふ、殺されても、死ぬ前に叫ぶわよ。あんたの血は万能薬だってね。」

 ミーシャはニヤける。

「や、やめろ、」

 俺はミーシャを殺すしかないと思った。

 だけど、なぜかミーシャを殺したくないとも思った。


「ふ、」

 そんな俺を見て、ミーシャは何かを言いかけたが、その言葉をのみこむ。

 それは挑発の類いの言葉だったが、それが俺をキレさせると勘づいたらしい。



「痴話喧嘩かな、おふたりさん。」

 そんな俺たちに、誰かが声をかける。

 俺とミーシャは、同時に振り返る。


 全身黒ずくめの大男がふたり、立っている。

 黒いスーツに黒い帽子。サングラスまでかけている。


「ひ、」

 ミーシャが怯えた声を出す。

 俺は咄嗟に、ミーシャを守るように前にでる。


「おっと、お前に用はないんだよ。ミシェリアを渡しな。」

 ふたりの男は、竜化する。

 黒いスーツを着たまま、人間の大きさを保った竜化。

 黒いスーツが、ぎりぎり破れない大きさ。

 顔も、遠目にはドラゴンとは分からないくらいの竜化。


 この竜化の調節は、こいつらが相当な実力者の証。

 俺が完全にドラゴンに戻っても、ひとりを相手にするのが限度!


「ミーシャ、逃げるぞ!」

 俺はミーシャの腕をつかむ。

 そして転移魔法を使った。


「あいつらか、ミーシャの命を狙ってる刺客は。」

 俺たちは、千尋峡谷の果ての建物、ホームの入り口前に転移した。


「ええ、そうだけど。」

 と言ってミーシャは、つかんだ俺の手を振り払い、後ずさる。


「あんた、密着しなくても、転移魔法使えたのね。」

「あ、」


 そうだった。

 以前は股間を押しつけて、転移魔法を使ったんだっけ。


「い、いやー、俺も知らなかったよ、なにせ今度は咄嗟だったから。」

 俺はなんとかごまかす。


「ふーん、」

 ミーシャは納得はしていないが、反論の言葉をのみこむ。

 その言葉が俺を、怒らせると分かってるからだ。

「分かったわ。そう言う事ね。助けてくれて、ありがと。」

 ミーシャはナチュラルな笑顔を、俺に向ける。


「お、おう。」

 俺は直視できずに、顔をそむける。

 そんな俺を見て、ミーシャがニヤけるのに、俺は気づかない。


「そ、それより、ミーシャの刺客って、人間の姿のミーシャも分かるのか?」

 そう、あのふたりの男は、人間の姿のミーシャを、ミシェリアと呼んだ。


 ミーシャは首をふる。

「あんたも見たでしょ。討伐依頼書。」

 ギルドの掲示板にあった、ミーシャの討伐依頼書。

 それは、ドラゴンの姿で名前はミシェリアだった。


「おそらくあいつらは、私の傷を見て、判断したんでしょうね。」

 ミーシャの全身には、傷やアザが無数に刻まれている。


「なるほど。」

 こんな刻印があるのは、ミーシャだけだろう。


「あれ、回復魔法を使えばいいじゃん。」

 そう、俺が回復魔法を使った箇所のアザは、消えている。

 そしてミーシャも、回復魔法は使えるはず。


「ばかね。」

 ミーシャは首をふる。

「私が使えるのは、赤と青。体力の回復はできても、傷は消せない。傷を消せるのは、緑の回復魔法だけ、よ?」

 ミーシャは自分の言葉に、疑問を持つ。

 そして自分の右手を見る。

 以前、俺が回復魔法を使った箇所。

 そこの箇所は、傷もアザも消えている。


「そっか、あんたの回復魔法なら、傷も癒せるのね。」

 ミーシャは瞳を輝かせて、俺を見る。

 そう、俺の魔法は、無色。

 そして今の俺は、竜王が使えた初期魔法の全てを使える。


「しょ、しょうがねーな。」

 俺はミーシャに、回復魔法を使った。

 ミーシャの全身から、傷やアザが消える。


「わー、」

 ミーシャは傷の消えた両手を見る。

 そして両手で顔をさわる。


「ありがとう、サム。ほんとに、ありがとう。」

 ミーシャは笑顔で礼を言う。

 その瞳に、涙が浮かぶ。


「い、いいって、これくらい。」

 俺は直視できずに、視線をそむける。



 この世界の回復魔法。

 それは自分のために使うものだと、以前ミーシャは言った。

 それを他人のために使う事に、ふたりは違和感を感じなかった。

 そして、以前転移魔法を使った時、ミーシャは気を失ったのに、今回は無事だった事にも、ふたりは気づいていない。

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